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復刻 店主のつぶやき(29)(日本てんかん協会東京都支部機関誌「ともしび」2002年8月号に掲載されたものに若干の加筆訂正をしたものです)

 (大袈裟にいうと)障害福祉図書の専門書店から見た、知られざる福祉ワールドをえぐり出すというのが本コーナーの趣旨だったのだが、ここのところ、福祉というよりはお上的体質の呆れ話しばかりになってしまっていて申し訳ないが、そのついでにもうひとつ。

 スペース96でも取り扱っている本で、福祉の関係者に必携ともいうべきもののひとつに、「○○六法」あるいは「○○関係法令通知集」という類のものがある。これらの本が2年ほど前に新聞でやり玉にあげられたのをご記憶だろうか。それまで、この類の本はたとえば「厚生省○○局監修」というような名前のもとに出されていたのであり、出版社からは、当然、その監修者に対して印税が支払われていたのであるが、この印税収入を収入申告していた者がいなかった事が問題とされたのである。

 そこで税務署は出版社に対して印税を支払っている者の名簿を提出するように求めたのであるが、出版社は「支払ったに相手に迷惑がかかるから」という、まったく理解できない理由でその名簿提出を拒否したのである。ある出版社などは、印税を受け取った者が支払うべき税金を肩代わりしてまで名簿の提出を拒否したりしたのであった(こんなことを認める税務署もおかしい)。あらまし、こんな話しであった。つまりは、印税はもらったが、それに対する税金を支払っていない者がいたということである(ふつう世間ではこれを脱税と呼ぶ)。

 こんなことがあったものだから、最近ではこの類の本は「○○法研究会」とか「○○運営検討会」などという、聞いたことのない団体名による監修とか編集という形で発行されるようになった。しかし、その本の中には、その団体の代表者も連絡先も記載されていないのである。結局は、ただ省庁の部局名を出さなくなっただけのことである。

 こういうことを後追いして記事にしない新聞のていたらくにも呆れるが、それ以上に呆れるのは、この類の本の内容は行政担当部局の者が仕事の一部として処理しているもの、仕事として集計している統計データなどそのものであるということである。これに対してはきちんと給料が支払われているのであるから、さらにそれを出版社から発売して印税をもらうということは、いってみれば給料の二度取りみたいなもので、そのこと自体がどうかしているのである。印税をきちんと収入申告しているかどうか以前にもっと大きな問題があるということである。

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