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2022年は「Web3」元年になる

「Web3(ウェブスリー)」という言葉をよく聞くようになりました。日本国内だけではなく、世界中のIT領域のトレンドキーワードになっています。テスラ・SpaceXのイーロン・マスクや元Twitter CEOのジャック・ドーシーが”Web3”に意見を述べたことも話題になりました。

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2021年の流行語大賞ノミネートは「NFT(Non-fungible token)」でしたが、早くも「Web3」が2022年の流行語候補に名乗りを上げたかたちでしょうか。

そもそも「Web3」とは何か?

そもそもWeb3とは何でしょうか? 次のツイート内の表にあるような整理が一般的になされています。

Web2は、15年前の流行なのでWikipediaを見ると懐かしさがこみ上げてきますが、ブログやSNSなどの送り手と受け手が双方向にあるウェブサービスが登場するなどの現象を指していました。

上記の表でもWeb2は「Read-White(読む-書く)」と整理されていますが、みなさんもTwitterやInstagramで日々発信されていると思いますので、言わずもがなのことかと思います。今では当たり前のことも、昔はweb2と呼んでいました。

Web3は、読み書きに加えて「所有(Own)」が加わっています。これはどういうことでしょうか?

最もわかりやすい事例が、実は2021年に盛り上がった「NFT」でした。デジタル資産として「所有」できるのがNFTです。

これまでのWeb2、たとえばアマゾンで購入した電子書籍はアクセス権を付与されているだけなので、電子書籍はブックオフに売るなど中古本として売買できません。しかし、Web3のNFTはデジタルデータでありながら、マーケットプレイスでメルカリのように自由に取引ができます。

NHK日本経済新聞など、主要メディアでも何度も取り上げられましたので、ここでは詳しい説明は省きます。

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では、このWeb3の「所有(Own)」がなぜインパクトを持って世界中から迎え入れられているのでしょうか?

Web3で「所有(Own)」が重要な理由は?

そもそも「Web3」はエコシステム(生態系)です。辞書には、次のように解説されています。

経営・IT分野の新語。複数の企業が商品開発や事業活動などでパートナーシップを組み、互いの技術や資本を生かしながら、開発業者・代理店・販売店・宣伝媒体、さらには消費者や社会を巻き込み、業界の枠や国境を超えて広く共存共栄していく仕組み。本来は、生物とその環境の構成要素を1つのシステムとしてとらえる「生態系」を意味する科学用語。(『知恵蔵』)

「NFT」は、そのエコシステムの1つのコンポーネント(構成要素)にすぎません。その全体像は、先日にいっしょにTwitterスペースで話した編集者のコムギさんが図解してますので引用します。

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「ID/NFTs」「Dapps」「Exchange/Tokens」「DAOs」「Layer1-2」──エコシステム(生態系)である「Web3」を形づくる数多くのコンポーネント(構成要素)たち。きっと「なんだか難しそう……」と思われたかもしれません。しかし、ご安心ください。今回は1つだけ覚えれば大丈夫です。

すべてのコンポーネント(構成要素)に共通している最も重要な要素、それが「所有(Own)」です。

なぜ「所有(Own)」が重要なのでしょうか?

なぜなら、Web3のエコシステムのすべてが「所有(Own)」から始まるからです。10月に書いたnoteに登場したBAYCを思い出してください。

Bored Ape Yacht Club(BAYC:ボアードエイプ・ヨットクラブ)は、絵のとおり"退屈なサル(Bored Ape)”をテーマにした作品群です。BAYCの保有者がコミュニティ化しており、Twitterのアイコンに使用する人が続出するなど人気が急上昇し、2021年9月にサザビーズのオークションで101点が2440万ドル(約27億円)で落札されたことが話題となりました。

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BAYCは、オーナーしか入れないコミュニティがあるだけではなく、2022年にゲームがリリースされることが発表されています。

2021年10月には、「Ape Fest NYC 2021」という初のリアルイベントを開催しました。

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こうしたBAYCに関するすべての活動は、そのNFTを所有するオーナーがいるところから始まっています。

オーナーの集合体が1つのコミュニティ=DAO(Decentralized Autonomous Organization:分散型自律組織)を形成し、あとからゲームのようなDapps(Decentralized Applications:分散型アプリ)が登場して……と、NFTを「所有(Own)」することが起点となっているのです。

その象徴的なメルクマールとなったのが、世界中を驚かせたLoot (for Adventures)」というプロジェクトです。2021年8月に、8つの装備(胸、手袋、靴、頭、腰、ネックレス、指輪、武器)テキストが並ぶNFTが8千個が配布されました。

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誰がどう見ても、何の意味があるのかがわからないNFTです。ところが、クリプトコミュニティの人たちはLootのNFTを競って入手し、それを使って周辺にエコシステムをつくり始めました。

後から「アドベンチャーゴールド:Adventure Gold (AGLD)」と呼ばれるトークン(暗号資産)が発行され、ゲームがつくられて……詳細はそれだけで1つの記事になるので、解説記事をご覧ください。

繰り返しますが、大事なことは「所有(Own)」することがスタート地点になっていることです。

「オーナーシップエコノミー」が意味するもの

Web2以前の世界では、Webページやアプリケーションが先にあるのが当たり前でしたが、Web3の世界ではNFTやトークン(暗号資産)などのデジタル資産がユーザーの手元に先に来るのです。

このWeb3現象は「株式会社」にたとえるとわかりやすくなります。「株式会社」は、自社の株を発行して、投資家に購入してもらうことで資金調達をすることができます。同じように、Web3の世界で各プロジェクトは先にNFTやトークン(暗号資産)を先に販売することで、資金調達できるのです。

NFTやトークン(暗号資産)を持つユーザーは、いってみれば株主です。DAOと呼ばれるプロジェクトの主体となる組織は、「株式会社」であり「社員持ち株会」のような存在です。

DAOは、ストックオプションが付与されるスタートアップ企業に近いでしょうか(厳密には異なりますが)。「会社の価値を上げる=NFTやトークン(暗号資産)の価値を上げる」であり、経済圏やユーザーが広がるほど価値が上がる仕組みです。

以前、NFTゲーム「Axie Infinity(アクシー・インフィニティ)」の解説記事を書いたときに、スカラー制度を提供するフィリピンが拠点の「Yield Guild Games(YGG:イールド・ギルド・ゲーム)」を紹介しました。

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YGGは、ゲームで稼ぐ(Play to Earn)プレイヤーが集まるDAOです。そのDAOが発行するYGGトークン(暗号資産)は、創業チーム(Founders)や投資家(Investors)だけではなく、プレイヤー(Community)にも活躍に応じて配布される仕組みです。

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これまで「会社で働く」という行為は、自分の労働力を提供し、その対価として賃金がもらえる、というものでした。しかし、Web3のDAOでは貢献するほど株のようなトークン(暗号資産)をもらえる仕組みなので、一人ひとりのメンバーが「オーナーシップを持って組織に貢献している」という感覚が強まり、そこに高い求心力が生まれるのです。

DAOにはゲームのギルド以外にも、DeFi(Decentralized Finance:分散型金融)の取引所、NFTコレクターや投資家の集団、アーティストが中心になる組織など、世界にはさまざまに存在します。

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では、これまでの株式会社やスタートアップと何が違うのか?

1つ目は、最初からNFTやトークン(暗号資産)を保有するところから始まる点です。それらはNFTマーケットプレイスや暗号資産取引所(CeFi、DeFi)などで売買することが可能(流動性がある)なので、ストックオプションのように上場するまで待たなければいけない、ということはありません。

2つ目は、”会社という1つの組織に縛られない”点です。これまで専業、副業など1つの組織に所属することが当たり前でした。ようやく最近になりさまざまな仕事を兼業する「複業」の人たちも登場しましたが、まだまだ一般的ではありません。Web3の世界では、さまざまなNFTやトークン(暗号資産)を保有し、オーナーとして複数のプロジェクトを横断する人も多く登場しています。そういう意味では、複業が当たり前の世界になっていくのだと思います。

このように、開発者だけではなくユーザーも「オーナーシップ」を持ち、それにより駆動されるようなエコシステムがWeb3です。これがWeb3が「オーナーシップエコノミー(Ownership economy)」と呼ばれる所以です。

世界が「NFT」から「Web3」に向かう理由

暗号資産、NFT、Web3の領域にユーザーとして流入している人たちは、多くは「儲けたい」「稼ぎたい」から始まっているのかもしれません。しかし、この「オーナーシップ(Ownership)」に駆動されるようにWeb3のエコシステム≒オーナーシップエコノミーを楽しむようになっているのも、事実だと思います。

どれだけWeb3のユーザー母数が広がっているかを定量的に示せるのは、Web3のLayer1代表格のイーサリアム(Ethereum)のユニークアドレス数かもしれません。現時点(2021年12月)で1億8000万の参加者がいます。1日あたり13万5000人ほど増えています。この勢いが止まるとは思えません。

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もう一つの定量的なデータがクリプト(暗号資産)ファンドの拡大です。今や500億ドル(約5兆7000億円)を上回り、ヘッジファンドの総資産の約1%を占めるようになりました。

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個人投資家だけではなく、機関投資家・ベンチャーキャピタルが次々と暗号資産、NFT、Web3の領域に入ってきています。マクロで見れば、この動きは止められない流れとなっていることがわかります。

さらに、Web3世界へ次々と優秀な人材が送り込まれているようです。次のニューヨーク・タイムズの記事では、Google、Meta、Amazonなどを辞めた技術系の幹部やエンジニアが次々とクリプトスタートアップに加入し、「クリプトは最大のチャンスだ」と述べていると紹介されています。

ユーザー、資金、人材。これらの事実の積み重ねが、2021年の「NFT」から、2022年に世界が「Web3」へと向かうだろう大きな証左となっているのではないでしょうか。

Web3のエコシステムは「所有(Own)」で成り立つ

あらためて「Web3」のエコシステム(生態系)全体をご覧ください。

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実は、NFTやDAOに限らず、Web3を構成する一つひとつのコンポーネント(構成要素)は、プロジェクトごとにNFTやトークン(暗号資産)が発行されています。つまり、Web3のエコシステム(生態系)そのものが「所有(Own)」によって成り立っているのです。

たとえば、次のにあるとおりLayer1の代表格であるイーサリアム(Ethereum)は、その80%が一般ユーザーに販売されるパブリックセールで成り立っています。各パブリック・ブロックチェーンによってその割合は違いますが、インフラ(基盤)となるプロトコルでさえ「所有(Own)」できるのがWeb3の世界です。

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世界最大のNFTマーケットプレイス「OpenSea(オープンシー)」や、ゲーム開発会社向けのブロックチェーン・ソリューションを提供するWeb3 SaaSの米「Forte(フォルテ)」など、一部の企業・プロジェクトは、従来型の株式(エクイティ)による資金調達です。

しかしながら、近年(特に2020年の”DeFi Summer(DeFiが盛り上がった夏)”でDEX(分散型取引所)への上場が可能になって以降)に登場したプロジェクトは、一般ユーザーへの販売割合こそ違えど、その多くがNFTや暗号資産(トークン)による資金調達しています。その意味では、開発者やユーザーを「所有(Own)」で巻き込み、爆速で成長しているのが「Web3」なのだと思います。

以前、2021年10月にnote「ウォレットファースト」こそWeb3への入り口だ、という話を書きました。その裏を返せば、誰もが自分のウォレットを接続することでNFTや暗号資産(トークン)を介してプロジェクトを「所有(Own)」できることが、Web3の入り口なのだということが今回の話でおわかりいただけたのではないかと思います。

Web3に「マルチバース(多元的な世界)」が生まれる

同じく、2021年10月のnote「バース(Verse)」という概念を紹介しました。「verse」には、「ユニバース(universe:宇宙)」や「メタバース(”meta:超越した”と”universe:世界”の合成語)」と同じような意味が込められています。

Web3の全体図から見て、「ID/NFTs」「Dapps」「Exchange/Tokens」「DAOs」「Layer1-2」などの一つひとつのコンポーネント(構成要素)を、レゴブロックのように組み合わせたものを「バース(Verse)」と呼びたいと私は思います。

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BAYC(Bored Ape Yacht Club:ボアードエイプ・ヨットクラブ)やLoot (for Adventures)は、NFTを発行して開発者やユーザーが「所有(Own)」するところからスタートし、一つひとつコンポーネント(構成要素)が組み合わさって独自の「バース(Verse)」を形成し始めています。

重要なのは、Web3は「ユニバース(一つの世界)」ではなく、「マルチバース(多元的な世界)」であることです。それぞれの「バース(Verse)」は国家にたとえられることがあります。現実の世界にも200弱の国家が存在しますので、これからもデジタルの世界に数多くの「バース(Verse)」が誕生していくのだろうと思います。

おそらく国家よりも多く、株式会社よりも少ない数の「バース(Verse)」が誕生するだろう。今、私が言えることは、それだけです。それが数千なのか、数万・数十万・数百万なのか。それは誰にもわかりません。これから10年、20年という長い年月をかけて、少しづつWeb3の全貌が見えてくるのだと思います。

2021年は「NFT」元年でした。あらためて、2022年は「Web3」元年です。世界には、インターネットの草創期が再びやってきたような、そんな期待が満ち溢れています。みなさんもいっしょに、楽しみましょう!

最後に

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

毎回のことで恐縮ですが、いちおう初めて読む方にお伝えしておきますと、このnoteを書いているKOZO Yamadaは、NFTゲーム「JobTribes(ジョブトライブス)」やNFTプラットフォームを提供するシンガポール拠点のDigital Entertainment Asset Pte.LtdのCSO(最高戦略責任者)です。

私がこれまで書いてきた代表的なnoteは以下になります。NFTゲーム、GameFi、Play-to-Earn(ゲームして稼ぐ)などの分析を得意領域としております。もし興味があれば、ご覧ください。

今回のnoteでWeb3をまとめてみて、あらためて「どんなバース(Verse)を創りたいのか?」と自分自身に問いかけることになりました。そして、すでにDEA社が取り組むPlayminingのホワイトペーパーを刷新しましたが、私たちがWeb3の世界に創りたいのは、クリエーターとファンのための「クリエーター・バース(Creators Verse)」なのだと再認識しました。

自分たちも、開発者やユーザーを「所有(Own)」で巻き込み、Web3の世界で爆速成長を目指したいと思っています。引き続き、応援いただけると大変にうれしいです!

最後になりますが、常にWeb3やNFTの最新情報は追っていますので、よろしければTwitterをフォローください。合わせまして、もしご質問や感想などあれば、同じくTwitterにお寄せいただけるとうれしいです。

相変わらずの長文となりましたが、最後の最後までお読みいただき大変にありがとうございました!

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