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「フォートナイトをゲームと考えてはいけない」3つの理由

さすがに今、エンタメ業界にいるならフォートナイト(Fortnite)」のことを知っておかないとマズいと思いました。つい最近、アカウント数が5億を超えたそうです。

人気オンラインゲーム「フォートナイト」を開発する米エピック・ゲームズは22日、アカウント数が5億を超えたと発表した。(ロイター、2021年6月23日配信)

私も少しはプレイはしてましたが、いろいろ調べてみて、あらためて「フォートナイトをゲームと考えてはいけない」と思いました。なぜ、そう思ったのか?

それを象徴する有名なエピソードは、動画配信サービスの最大手「ネットフリックス(Netflix)」 CEOのリード・ヘースティングズ氏が語った次の言葉です。

「われわれが戦っているのは、ケーブルテレビのHBOではなく「フォートナイト」である(そして負けている)」(We compete with (and lose to) Fortnite more than HBO. )(Engadget

スマートフォンの登場以降、エンタメ業界はユーザーが自由に使える「可処分時間」をめぐり、奪い合っているような状況です。ゲームをプレイする時間は他のエンタメよりも長く、習慣性がとても高い。ヘースティングズ氏が危機感を持つのはもっともです。

また、いまや巨大プラットフォームであるアップル(Apple)に対して「手数料が高すぎる」と反旗を翻したことで、世界中から注目を集めたことはあまりにも有名です。

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ネットフリックスやアップルといった巨大プラットフォームと、オンラインゲーム「フォートナイト」は、競うほどの規模となりました。このnoteでは、なぜ私が「フォートナイトをゲームと考えてはいけない」と思ったのかを3つのポイントにして解説します。

(1) どこでもプレイできる「クロスプラットフォーム」

フォートナイトをつくったのは、米国のゲーム会社「エピックゲームズ(Epic Games, Inc.)」です。同社はゲームソフトを開発するだけではありません。コンピュータゲームのソフトそのものを開発するためのゲームエンジン(game engine)「アンリアル・エンジン(Unreal Engine)」を開発しています。

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現在、多くのコンソール・スマホゲームがゲームエンジンによりつくられており、実質的に使われているゲームエンジンは、エピックゲームズの「アンリアル・エンジン」と、ユニティ・テクノロジーズ(Unity Technologies)の「ユニティ(Unity)」のほぼ2つだと言われています。

ゲーム会社が「アンリアル・エンジン」を使うとエピックゲームズに支払う手数料がかかりますが、なぜゲームエンジンを使うのでしょうか?

理由は「クロスプラットフォーム」です。iPhone、Androidなどスマートフォンから、PlayStationやXbox、さらにPCまで、あらゆるハードウェアでゲームを動かすためには、個々で開発していると手間が多すぎます。ゲームエンジンはプラットフォームの垣根を超えてユーザーが遊べることをサポートしていることから、結果的に安くすむのです。

フォートナイトが裁判で争うアップルのプラットフォームを除き、さまざまな機器でプレイすることができるのは、こうしたクロスプラットフォームの基盤となるゲームエンジンを提供しているという優位があります。

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実はフォートナイトは、アンリアル・エンジンで開発された韓国の「PUBG(PlayerUnknown's Battlegrounds)」をパクったのではないかと訴訟沙汰になっていたりしますが、いろいろな意味でゲームエンジンを提供しているので強いですね。

(2) 「基本プレイ無料」という間口の広さ

フォートナイトをプレイしたことがない人に向けて、いちおう解説すると、ゲームはTPS(サードパーソン・シューティングゲーム)と呼ばれるジャンルで、要するに銃を持って撃ちあって相手を倒したら勝ちというゲームです。

スマホゲームが登場してから当たり前となった「基本プレイ無料(Free-to-play)」モデルを採用していますので、ソフトを購入する必要はなく、ダウンロードしたら無料で楽しむことができます。

マルチプラットフォームで無料でプレイできるとなれば、「プレイしてみよう」と思ったときに妨げるものは何もありません。とにかくフォートナイトは入り口が広いのです。

さらに言えば、強い武器やアイテムを「課金で手に入れる」という要素が一切ありません。つまり、無課金だろうが上手い人が勝つゲームです。

課金しまくってガチャを引いて、強いキャラクターやアイテムを持つプレイヤーがいる。いわば「富める者が勝つゲーム」は、やはりどこかで冷めてしまいます。そう考えると、フォートナイトはとてもフェアなゲームだと言えるのではないでしょうか。

では、どこに課金しているのでしょうか? 実は、フォートナイトの課金要素はキャラクターの見た目です。スキン(コスチューム)、ツルハシ、グライダーなど自分のキャラクターを着飾るところにユーザーは課金します。

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さらにキャラクターの感情表現でもあるエモート(ダンス)にも課金されます。勝利をしたときの喜びや、仲間とボディランゲージでコミュニケーションするために、さまざまなエモートが役立ちます。

また「バトルパス」という課金システムがあり、チャレンジをクリアするごとに経験値を獲得し、一定値までたまると新たにスキンなどのアイテムがもらえる仕組みです。

(3) 実はゲームではなくコミュニケーション空間

言ってみれば、フォートナイトはゲームそのものへの課金ではなく、LINEのスタンプや着せかえと同じ他者とのコミュニケーションに課金しています。

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フォートナイトには最大100人で対戦する「バトルロイヤル」のモードがあり、1人で挑む「ソロ」だけではなく、2人組のチーム戦「デュオ」、4人組のチーム戦「スクワッド」といった協力プレイが楽しめます。

夜な夜なフォートナイトを楽しむ友人に聞くと、フォートナイトをしながら音声のボイスチャットで仕事の話をして「次のプロジェクトを始めることにした」みたいな話をしていて、びっくりすることがありました。感覚としては、大学生が友だちと徹夜でマージャンしているのに近いと思います。

私の小学5年の息子も、友人と集まるのは「フォートナイト」。休み時間に集まるノリで、すき間の時間があったら協力プレイをして、友情を育んでいます。

もしくは、ご老人たちが公園でゲートボールをたしなむのと大差ないのかもしれません。私もTwitterでツイートしましたが、実際のところ65歳以上限定の高齢者「eスポーツ」プロチームを目指す動きなどがあり、コミュニケーションを促進するスポーツとして定着する可能性すら感じます。

その意味では、フォートナイトはゲームではなくコミュニケーション空間です。新型コロナの影響でライブやイベントの中止が続く中、人気アーティストの米津玄師は2020年8月7日にフォートナイト内でスペシャルイベントを配信しました。

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その場となったのは、2020年5月から実装された、戦闘要素のない「パーティーロイヤル」モードです。仲間と自由に遊んで過ごす場として、フォートナイトが新たにつくったコミュニケーション空間です。

2020年4月にフォートナイトで開催された有名ラッパーのトラヴィス・スコットのバーチャルイベントでは、同時接続数1230万人という大記録を打ち立てました。こちらが1億6000万回再生されている、そのアーカイブ動画ですが、メタバースにおける圧巻の表現力だと思いました。

リアルな音楽のライブ会場でタオルを振ってみんなで盛り上がるのと同じように、みんなでアイテムやエモートで盛り上がれる場所ができれば、それは最高の場所になるような予感がしました。

まとめ

ここまで、私が「フォートナイトをゲームと考えてはいけない」と思った理由を、(1) どこでもプレイできる「クロスプラットフォーム」、(2) 「基本プレイ無料」という間口の広さ、(3) 実はゲームではなくコミュニケーション空間、という3つのポイントから解説しました。いかがでしたでしょうか?

フォートナイトを見るたび、私は「メタバースにはヘッドマウントディスプレイ(VRゴーグル)は必ずしも必要はない」ということを思います。

バーチャルYouTuber(Vチューバー)もそうですが、スマートフォンなど平面のディスプレイでバーチャル世界を楽しむことが当たり前になりつつあり、ここがフォートナイトを考える上でとても大事なポイントだと思いました。

そして、私の専門はデジタルメディアとNFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)ですが、フォートナイトにNFTやブロックチェーンが加われば、つくったアイテムを売り買いできる経済圏が生まれ、新たなクリエイターエコノミーになるのではないかと思いました。同じゲームを5億人がプレイする現在、そんな時代がすぐそこに来ていますね!(なお同種のサービスである「ROBLOX」については別の機会に書きます!)

そう考えると、「フォートナイト」はメタバースにおける新しいタイプのコミュニケーションを持ち込んだという意味でとても面白いですし、エンタメ業界に身を置くひとりとしても、これからの広がりに目が離せません。要注目です。

またビジネスに役立つnoteを書きますので、よろしければフォローください!!

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