「ネオ酒場」から「ハイコンセプト酒場」への流れは必然だ!
久しぶりにnoteを開いた。フードスタジアムの編集長を退いてから、公に発表するコラムは書かなくなった。しかし、ときどきアウトプット欲が出てきて、Facebook以外の書き物をしたくなる。そんな動機にかられて、新しいキーワード「ハイコンセプト酒場」について書いてみました。このコラムは某ビールメーカーに毎月提出しているマーケティングレポートからの再録です。ネオ酒場がどんどん進化してきています。
私が提唱してきた「ネオ大衆酒場」。この言葉を最初に使ったのは2012年だが、ようやく業界のトレンド用語として一般的に使われるようになった。その後、ミドル単価帯を含めた幅広い概念として提唱した「ネオ酒場」という言葉もある程度の認知度を得たと思われる。
これらの概念は、業態論ではなく、「居酒屋」「バル」と同じフィールドで論じられる、いわば“新しい飲食マーケットジャンル”だと私は考えている。
そして、最近は「ネオ大衆酒場」「ネオ酒場」がどんどん進化して、ハイクオリティ化している。業界には相変わらず、模倣店(パクリ系)がはびこり始めた。私は「大衆酒場 ビートル」や「酒場シナトラ」などの模倣店を全国のあちこちで見つけては失望している。
これからは「オリジナル店」と「模倣店」をしっかり峻別して伝えていかなければならないと肝に命じている。そうしないと、新しい価値を生み出し、未来の老舗を目指しているオリジナルの造り手がかわいそうだ。ビールメーカーなどのサポーターもしっかりとそこを踏まえて支援していくべきだろう。
そのオリジナル、新しい価値を生み出す先駆者たち、そしてこれからの酒場マーケットをさらに進化、発展させていく造り手たち。彼らが造る新しい酒場を、フードスタジアムは「ハイコンセプト酒場」と定義付けしたい。「ネオ大衆酒場」「ネオ酒場」が業種論なら、「ハイコンセプト酒場」は業態論である。模倣店とは一線を画すオリジナル、高価値、意味性のある「誰にも真似できない」「そこでしか体験できない」業態である。
「ハイコンセプト」といえば、10年以上も前に出版された『ハイ・コンセプト 「新しいこと」を考え出す人の時代』(ダニエル・ピンク 三笠書房、2006年)というベストセラー本がある。これからはドラッカーが言う知識やスキル、資格に基づく“ナレッジ・ワーカー””(左脳主導型思考)ではなく、右脳主導型思考である“ハイ・コンセプト”の時代が来ると予言した本だ。いま、AIがホワイトカラーの存在意義を脅かす時代が到来し、実業界のなかでは、この本が改めて読み直されているという。
我々、フードスタジアム・マーケティングチームも、この「ハイコンセプト」の概念を借りて、「ハイコンセプト酒場」という言葉を提唱したい。まさに、ハイコンセプト的発想による“新しい酒場”がどんどん増えている。今回レポートした事例でも、
・モツ料理を熱燗で味わうという今までの店鋪とは全く異なった酒場業態
・ジビエと鰻の蒲焼きアテに店主厳選の日本酒を楽しむ大人の酒場
・「イベリコ豚トンテキスパイスソース」「骨付鶏もも焼」「トリッパアラビアータ」などといった和洋ミックスの肉料理
・イタリアンとナチュール系和酒の融合を楽しむ町の食堂をイメージした酒場
・イタリアンベースの料理と炭焼き料理を厳選した日本酒を主としたお酒と共に楽しむ大人の酒場
・イタリアンベースのオリジナル料理と和酒を合わせた酒場
など、オリジナリティに溢れるハイコンセプト酒場が並ぶ。
ちなみに、ダニエル氏の本によると、“ハイ・コンセプト”であるためには、6つの「右脳主導の資質(感性)」を左脳主導の考え方にプラスして、全体思考を培わなければならないとしている。
6つの資質、感性とは、
1、デザイン
2、物語
3、調和
4、共感
5、遊び心
6、生きがいづくり
である。まさにいま飲食業界の店づくりをリードしているクリエイター、デザイナー、オーナーたちに共通している資質なのかもしれない。
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