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本格的「クラフト和酒」の時代が来る!〜私がポートランドから学んだことのおさらいと地方を元気にするお酒の話〜

いささか古い話を出して恐縮だが、2015年11月に飲食店オーナーたちを連れて、ポートランドに視察に行った。その同行者の中には、その後札幌でクラフトビールの店を開業した方や、昨年オープンしたコレド日本橋室町テラスの中にクラフトビール醸造所付きレストランを立ち上げた「クラフトビアマーケット」の田中社長もいた。田中さんは、外食アワード2019も受賞した。

あれからもう5年経つ。クラフトなお酒の聖地、ポートランド!私もポートランド体験が2017年11月に出版した『イートグッド』のトリガーになったような気がする。ポートランドは“クラフト”が当たり前、ビールに限らず、ワインからサイダー、コーヒーまで小さな個性あふれる造り手がたくさんいた。

私も、2011年には「クラフトビール革命の到来」をテーマに国産クラフトビールの造り手、売り手を集めて飲食店向けにセミナーを開催、2012年には「日本酒新時代の到来」をテーマにセミナーを行い、地酒純米酒の価値を飲食業界に問うた。それからじわじわと国産クラフトビールやクラフト日本酒の波が来始めた。2015年のポートランド体験は、その波が確実に大きくなることを確信させてくれた。

そして、2020年令和の時代、日本もこれから個性を競い合う「クラフト和酒」の時代が本格的に来るに違いない。この流れが地方活性化のテーマにもなるはずだと改めて思う。以下、私の嗜好も含めたこれから注目すべき和酒の動向である。

クラフトビール〜ヘイジーや生ホップ
クラフトサケ(地酒純米酒〜低アルコール原酒に期待)
クラフト焼酎〜新時代の夜明け、長寿遺伝子を活性化させる芋と黒糖、炭酸との相性
クラフトジン〜和のボタニカルの深掘り
クラフトウォッカ〜米を原料にしたり竹炭で濾過したり
クラフトウイスキー〜ロー焼酎蔵からの発信に期待
クラフトラム、クラフトテキーラ〜未知の魅力
クラフトリキュール〜国産無農薬果実やハーブに期待
クラフトワイン〜白ワインからオレンジワインへのシフト
クラフトサイダー〜青森から出でよ!
などなど…。

以下は、2015年のポートランド視察後のコラムだ。

「ポートランド」で感じ、考えたこと!
10月中旬、米国西海岸北部のポートランド、シアトル、そしてサンフランシスコに飲食マーケットの視察に行ってきました。日本の飲食店オーナー4名と現地で落ち合い、一週間で約50店舗の店を見てきた。詳しいレポートは特集記事で連載する予定だが、今回の主目的だった「ポートランドスタイル」について、現地で感じたこと、考えたことのみ、ここでまとめておきたい。

「ポートランド」がいま飲食業界のアンテナの高いオーナーの間ではキーワードとなっている。ポートランドといえば、クラフトビール業界関係者の間では“聖地”と言われている。実際、ポートランドには67のブリュワリーが存在する。一都市としては全米最多。そのほとんどがいわゆる「マイクロブリュワリー」である。今回、アテンドをお願いした「オ州(オレゴン州)酒ブログ」主宰のレッド・ギレンさんによると、「ブリュワリーはもっと増えますね。ポートランドではクラフトビールとは呼びません。なぜなら、ビールといえばクラフトのことですから…」とのこと。それだけ、クラフトビールが街中に浸透しており、パブやレストランだけでなく、スムージーやベーカリー、ドーナッツの店にもタップ(ドラフトサーバー)があった。67のブリュワリーが個性を競い、さまざまな種類のビールのテイストを発信していた。さらに「サイダリ―(サイダー醸造所)」もいま次々に増えており、日本にも入り始めている。
一方、ダウンタウン、ニュータウンを問わず、個性的なコーヒーショップも多い。やはり、ハンドドリップのクラフトスタイルの店がほとんど。ポートランドでは、コーヒーもビールもサイダーも、そしてワイン(マイクロワイナリーも増えていた)も、「クラフトが当たり前」なのだ。世界一「クラフト」という言葉が似合うのがポートランドだといえよう。改めて、「ポートランドとは?」というテーマで、キーポイントをまとめてみた。
・DIY(自家製)、クラフトというモノづくり、手づくりの文化が定着している
・都心部と郊外の自然の環境が溶け合い、自然のものを大切ににする、サスティナブルな考え方を食生活に取り入れるというライフスタイルが確立している
・当然、オーガニック、自家製調理ということが飲食店でも当たり前のコンセプトになっている
・地域、コミュニティを大事にするという人間主義が貫かれている
・ユニークな業態、他人と違うことをやることがリスペクトの対象になり、そこにおカネが集まる
・仲間、協業の相手を大事にする「コラボ」がキーワード。縦の関係ではなく、フラットな関係性を重んじる
・「おカネじゃない、やりたいことをやり抜くために仕事と人生がある」という発想で起業する人が多い
こういった「イートグッド」なカルチャーがまさにポートランドという都市全体に満ち満ちている。そのことを実感した。ポートランドビールの輸入販売を手掛け、札幌で「ビアセラーサッポロ」というビートランドビール専門店を運営している「枯れずのビール」の青木栄一さんは、昨年の5月に初めてポートランドを訪れ、「この都市は、街全体が“商店街”だ。モールの似合わない街」と感じたそうだ。そこからポートランドの魅力にハマり、「こんな美味しいビールが日本で飲めないのはおかしい」と一念発起していまの仕事に賭けたという。外食業界で世界的に限界が来ている「効率主義」「利益至上主義」という考え方を超えた未来の姿がそこにはあるような気がする。ひるがえって日本の外食産業、飲食店のあり方を考えるいい機会だ。少しずつだが、「山が動いている」と私は思う。「イートグッド」という考え方、取り組み、時代のパラダイムへシフトが一気に奔流となるタイミング、それはそんなに遠い先ではにような気がする。それを感じたかったら、いますぐにポートランドに行くべし!

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