いま求められる「3つのキーワード」

いまの飲食マーケットの軸になるキーワードは何か?私は毎年、年末年始に2週間〜1ケ月ほど日本を離れ、アジアを旅しながらいろいろと考えることにしている。日本から離れて東京の飲食マーケットを冷静に見たいからた。そして、考えるのは、あまりにも業態の“尖がり競争"に走り過ぎるということ。原点に回帰し、食と飲食店の本来のあり方を追求することが必要ではないか。

業態の“尖り競争”は続かない

業態の“尖り競争”とは、「お客様をいかに驚かせるか?」というキラーコンテンツや常識外れの業態づくりに走っていること。それが長くマーケットに評価されれば問題はないが、中には奇をてらったようなメニューや業態も登場してきている。肉業態も魚業態も、様々な業態が出尽くし、これでもか、これでもかと新業態が飛び出してくる。おそらく、その多くは1~2年でマーケットから姿を消し、また新しい業態に取って変わられるに違いない。「業態のオーバーライト(上書き)現象」である。いま求めらるのは、「上書き」されない長く続く業態づくりの発想ではないか。そんなことを考えていたら、以下の三つのキーワードが浮かんできた。
1、EAT GOOD!(イートグッド)
2、DO CRAFT!(ドゥークラフト)
3、ACT GLOCAL!(アクトグローカル)
である。
1の「イートグッド」は文字通り、「いいものを食べよう!」だが、もっと深く「食を通じていいことをやろう!」という考え方。「いいこと」とは生産者のみなさんと食材の大事さを共有し、それを飲食店を通じてお客様に真面目に美味しく、楽しく提供しようということ。当たり前のことだが、それをハイレベルでやっていこう。できるだけオーガニックなものを提供する、化学調味料を使わないこと、あるいは「ファームtoテーブル」や「イートローカル(地産池消、地産都消)」は当然のこと。敢えてそれを打ち出さなくても、お客さんに伝わるようなスタンス。実は「イートグッド」を店のポリシーにしている企業がある。オーガニックカフェの「麹町カフェ」や自家製パン工房「ファクトリー」、チリビーンズ専門店「チリパーラーナイン」を経営しているエピエリ(松浦清一郎社長)だ。

つながりの中にある大切なもの

同社のホームページから引用させてもらう。
「エピエリは今、EAT GOOD(良いを食べる)を考えはじめました。EAT GOODの良いとは、有機野菜だとか無添加だとか、そういったことではありません。畑からパントリーへ、パントリーからテーブルへ、テーブルからお客さんの口へ―、そのつながりの中にある、お互いへの愛情、思いやり、リスペクト、そしてありがとうの気持ちを大切につくられたもの。それを考え、あつかい、調理し、食べてもらう。いただく。それがエピエリの考えるEAT GOOD(良いを食べる)です。」
解説は不要だろう。「麹町カフェ」にさっそく行ってきた。行ったらわかる。このカフェは2004年オープン。すでに10年以上経っているが、古さは感じない。半蔵門、麹町界隈のOLの間ではランチ一番人気のカフェである。
2つ目は、「ドゥークラフト」は、「手作りで行こう!」ということ。もちろんすべてを手作りでできるわけはない。内装やディスプレーはもちろん、食材、調理はできるだけ手作りにこだわるとか、作っているいる人の思いを大事にしていこう、作り手のマインドをお客様とシェアしていこうという発想だ。クラフトビールのトレンドや、純米酒にこだわる小さな日本酒の蔵元、手間をかけて熟成や発酵をさせる日本の古来の食材、調味料なども再評価しよう。熟成肉などもいわば“クラフト肉”である。大量生産、大量販売の考え方とは決別し、食糧や環境を大事に考えながら、食の本来のあり方に戻るということも含まれる。マスではなく、「個人」一人ひとりのマインドを重視するという考え方にも通じる。

グローバルとローカルのカルチャーミックス

3番目の「アクトグローカル」は、海外に積極的に出かけて、様々な国と都市、人種の食文化やライフスタイルに触れ、そこからインスパイアを受け、これまでになかったような新しい価値基準やカルチャーを提案していくことが大事になってきたということ。いまやインターネット、ソーシャルネットワークの普及で、国境はボーダレス、トレンドもリアルタイムで共有される時代。また、円安で今年はインバウンド元年といわれるほど海外から様々な業態が日本に入ってくるだろう。業態だけでなく、シェフや飲食関係者、生産者も世界から日本にやってくる。そうした海外のアップデートなトレンドと日本の飲食トレンドがミックスした新しい食カルチャーも生まれてくるに違いない。特に北米のブルックリンやポートランドのカルチャー、ライフスタイルは日本の飲食マーケットに大きな影響を及ぼしつつある。クラフトビールやサードウエーブコーヒーなどはすでに大きなマーケットになりつつある。また、海外のスタイルを取り入れながら、食材やサービスはローカルスタイルでというネオカルチャー的な考え方も出てくるだろう。グローバルとローカルのミックスカルチャーである。こうした3つの発想軸が飲食マーケットに新しい波をもたらすことになるだろう。

【PROFILE】
佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。

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