焼酎新時代の到来と「クラフト焼酎」

note再開の反響が大きい。私のいまのアウトプットツールはFacebookファーストだ。Facebookは人気が落ちたとはいえ、実名で実名の(リアルな)業界人たちに発信できる貴重な媒体だと思っている。私の場合は、日記とメモ帳&取材ノート代りみたいなもので、現場でリアルタイムにアップするから投稿数は半端ない。加えて、キュレーター(編集者の目)的に、これは大事だと感じたタイムラインの投稿をシェアしている。ほぼ半日はFacebookと共に呼吸しているような状態だ。

ときどき、これでは「流されてしまう」という危機意識を感じる。やはり、立ち止まって呼吸を止めて、思考を集中させ、まとまった文章(コラム)を書くべきだと心の声が叫んでいる。最近、とくに。だから、「noteでコラムを書く」ことを新たに自分に課したいと思う。おいおいオリジナルコラムをアップしていきたいが、再び過去書いたものを載せておきたい。“ネオ酒場コラムニスト”としては、これからの焼酎トレンドについての考察をきちんとnoteに残しておきたいからだ。これは昨年8月に書いたコラムだ。マーケットは私の読み通りに動いているようだ。

「ネオ大衆酒場」のドリンクの主役はもはやハイボールから「レモンサワー」に移っている。そして「ネオ酒場」はレモンサワーを取り入れつつも、バランスよく地酒純米酒やクラフトビール、クラフトジン、地ウイスキーなどもラインナップする店が多い。そして、これからは「クラフト焼酎」がジワジワと増えて来るだろう。

鹿児島芋焼酎が火を付けた本格焼酎の大ブームから15~20年経っている。2003年にピークを迎えたそのブームは波が大きかっただけに反動も大きかった。街に溢れていた焼酎専門店や焼酎バーはほとんど姿を消した。もともと芋、麦、米、黒糖を原料とした本格焼酎は南九州、奄美列島の地酒だったが、ブームで全国に広がり、そしてまた“九州地酒”へとそのポジションは戻ってしまったかのようである。もちろん、大手の「黒霧島」の霧島酒造や「富乃宝山」の西酒造、「いいちこ」の三和酒類などはシェアを広げ、海外でも広く飲まれるメジャー酒になっている。

しかし、ここにきて市場に変化の兆しが出てきた。こうしたいわば「ファクトリー系」のメジャー焼酎に対して、手づくりスタイルの小さな焼酎蔵や大手でも手づくりで少量生産する「クラフト系」の造り手の焼酎に光が当てられるようになってきた。私はこれを「クラフト焼酎」と名付けている。2010年に「クラフトビール」の波が起こり、2011年の震災を機に小さな日本酒蔵を支援する「クラフトサケ(地酒純米酒)」トレンドが始まった。いまやその「クラフトビール」「クラフトサケ」は飲食店マーケットを席巻している。クラフト系の流れから、その次に来るのは「クラフト焼酎」だと私は予測している。

クラフト系ドリンクの流れから「クラフト焼酎」が来るのは必然だと見ているが、もう一つの流れとして、“ポスト「レモンサワー」ブーム”がある。レモンサワーブームは大衆酒場、ネオ大衆酒場トレンドに乗って大きな波となった。そのレモンサワーは「キンミヤ」を代表とする甲類焼酎のソーダ割りである。そこに生レモンが主役として割り込んできた。生レモンを大胆に使い、インスタ映えを狙った提供法なども登場している。この甲類サワーに対し、私がずっと注目してきたのは「乙類サワー」「乙類ハイボール」である。つまり、本格焼酎のソーダ割りだ。この飲み方はまだ焼酎業界では異端的である。やはりロック、水割り、お湯割りがスタンダード。しかし、これまでの飲み方では市場は広がらないし、女性や若者などへ訴求できない。

そこで、私はソーダ割り「乙ハイ」について啓蒙してきた。2016年11月に出版した『イートグッド』の中でも取り上げた。それ以来、徐々にではあるが「乙ハイ」をドリンクメニューにラインナップする飲食店が増えてきた。先日、札幌をリサーチしたとき、ある店ではドリンクメニューの1ページを割いて「シュワッ酎」(シュワシュワのソーダ割り)を提供していた。話題の「泥亀」は“泥ボール”という愛称でソーダ割りを提案している。こうした流れのなかで、甲類ソーダ割りから乙類ソーダ割りへのシフトが着実に進んでいる。それを先取りした飲食店も増えている。肝心の焼酎の造り手たちもソーダ割りへの関心が高まりつつある。焼酎の蔵元たちも日本酒蔵と同様に世代交代が進み、既成概念や常識にとらわれない酒造り、飲み方の提案をし始めている。

これについては、先日開催した「フースタ繁盛ゼミ」5月度講座“焼酎新時代の到来”を参考にしてもらいたい。焼酎新時代をリードする宮崎県黒木本店の黒木信作さんの「焼酎づくりの進化とこれからの焼酎マーケットの展望」の講演は圧巻だった。焼酎新時代は確実に押し寄せてきている。そして「クラフト焼酎」というポジションが、「クラフトビール」「クラフトサケ」と同じようなボリュームで語られる日が必ず来ると信じている。
※フースタ繁盛ゼミ「焼酎づくりの進化とこれからの焼酎マーケットの展望」
https://food-stadium.com/feature/23897/

#焼酎新時代 #クラフト焼酎 #焼酎ソーダ割り #乙類ハイボール #乙ハイ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?