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村井理子著「いらねえけどありがとう」は言葉のチョイスがドメスティック

家事子育て仕事に忙しい女性のための指南書。
村井さんの文章は、凡庸な教訓から、突如、脳を揺さぶられるほどドメスティック名詞が飛んでくるのが面白い。

挑戦を恐れるな
古い物にしがみつくな
無洗米の奇跡を忘れるな!

プロローグ、このフレーズに心を捕まれ
一気に読了。

同様に…

完璧な母、完璧な主婦なんて、もういいのだ。
私は自分自身のために、完璧に楽しい人生を送ることを目指す。

【完璧な】母というネガティブな形容詞を
【完璧に】楽しいという副詞に変身させ
かつ、普段は使わない使い方をすることで
読者の発想を転換させる!
うまい!!
言葉遊びとしても面白いけど、
全て計算ずくなテクニックは芸術的だ。

NOを言う機会が増えたからだ。
相手が家族であっても、ひどい扱いだと思ったときは、はっきりと口にすることにしている。
頭のなかに上沼恵美子が住み着いている

139ページ

上沼恵美子って!!!
バラエティ番組のMCでゲストをバッサバッサと切り倒す恵美子像が
0.5秒で想起される。
こういう言葉のチョイスはお笑い芸人みたいでウマい!

全体を通した印象は、
「時短になるものは迷わず買う」→勝間和代・あな吉
「ついで仕事」→主婦の友
「ごみ袋を持って不要なもの探し」→ブロガー筆子
のように、時短・断捨離好きな主婦なら一度は読んだことがある人達と似ている。

垣間見える家族観…というか宗教観が他の本とは違うところだ。

「私達の親世代はとにかく、挨拶代わりに容姿に言及することさえある。」これまで意識してなかったけれど、ホントそれ!
「太った?お腹でた?目の下にしわができた?」…そんなディスりから話のきっかけをつかもうとする親・兄弟・親戚たちの顔が浮かんできた。
そして、それは自分が悪いからだと思っていたけれど
人を傷つける言葉を出会ってすぐ容赦なく食らわせる彼らの方がどうかしていると思うことができた。

翻訳作業をしているとき、庭の草刈りをしているとき、いつも思う。
「隅を丁寧にきれいに処理すると、全体がきれいに見える」

150ページ

ここも納得!
我が家の芝も、芝刈り機で刈っただけでは何となく雑然としているが、エッジの処理をするとピシっとする。隅々の処理が丁寧んい作業されていないと、全体が乱雑に見える。これは、肝に銘じたい言葉だ。

村井さんの主張は、私の大好きな山口雅俊監督の映画「闇金ウシジマくん」や「おいハンサム‼」と似ている。

山のように積み上がった大量のゴミを前に、まず何をするのが大切か。
それは、まずは自分の足元のゴミを拾い、周囲に一定のスペースを確保することだという。
(中略)
私が人生最大級のピンチに見舞われたときも、無意識ではあったが同じことをしていた。とにかく、目の前に山ほど積み重なった問題を、ひとつひとつ、片っ端からクリアにしていった。

76ページ

やりたいことは迷わずやる。
会いたい人には会う。
伝えたいことは伝える。
買いたいものは、あっさり買う。
そして万が一失敗したとしても、後悔はしない。

90ページ

村井さんは、47歳で心臓病の手術をし、「死」を意識したという。山口監督も、亡くなられた竹内結子さんのことを考え「おいハンサム」を作ったという。
人間には終わりが来る。
現実として、危機感をもって死を感じる事は、
私達の世代の生き方を大きく変えるのだろう。

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