医療事務が脳梗塞で入院した話・その7
夕食が終わるとナースから声がかかります。
「○○さん、歯磨きしましょう」
SCUには小さな洗面台が2つあって、促された患者はそれぞれのペースで順番に歯磨きします。
「わしは朝しか歯磨きせん!」とか言って拒否してたじいさんもいますがまあそれはおいといて、入院セットにはチューブの歯磨き粉と歯ブラシとうがい用のコップとマウスウォッシュが入っています。
喉をがらがらするうがいはむせること必須なので出来ませんが、毎食後がっつり歯を磨いてマウスウォッシュを使ってしっかりゆすぐように言われたので、入院中くらいは真面目に使うことにします。
あと、わたしは普通に立ち歩けるので1人でトイレ行って全然平気なんですが、トイレに行きたいときはナースに声をかけなくてはなりません。
トイレ行きたいですーと言うと、ナースが来てモニターを外し、点滴のポンプの電源を抜いてくるくるっとまとめて、SCUを出たすぐの所にあるトイレに歩いて行きます。
初日なのでナースの付き添いは必須のようです。
自分では普通に歩けるわーと思っていたのですが、実際歩くと結構ふらつきがあります。
点滴スタンドにつかまって歩くのがむしろちょうどいい感じです。
トイレは多目的用の、あの、車椅子で入れる広いタイプのところを使います。点滴スタンドなら余裕で入れます。
トイレ介助はさすがに要らないのでナースはトイレのすぐ傍で待っていて「終わったらボタン押してください、迎えに行くまで待っててね」というスタンスです。
で、トイレが済んだら手を洗うじゃないですか。
でかいボタン(?)を押すと水が出る蛇口です。
なんと、同じ蛇口から出ている水なのに、右手は普通の水だと感じていて、左手はお湯だと感じるのですよこれが!!
いやーやっぱ左手おかしいわこれーー!!
終わったら、ボタンを押してナースを呼び、一緒にベッドまで戻ります。
点滴ポンプの電源を元の場所に差し込み、モニターを元通りつけて終了です。
点滴をしているせいなのか、すぐトイレに行きたくなってまあ面倒くさいです、ナース呼ぶのが。
自分で勝手に行きたいです。でもまあ大人しくしておきます。
歯を磨いてトイレに行ってしまったら、もう何もすることがないので、また同じ書類を何度も読み返しては封筒に入れ、また封筒から出しては読み、また封筒に入れて引き出しにしまいます。
21時に消灯になると電気も消えますからもう寝るしかありませんが、通常21時って仕事終わって家に帰って来たくらいの時間なのでそんな時間に寝たことありません、ていうか、いつもはそこから活動時間ですがな。
いつもはだいたい寝るのは0時過ぎてからでした。
しかし、前日夜から殆ど寝ていないので、疲れてるし寝られるんじゃないかと思ってたんですが、全く寝られません。
頭が痛いと訴えればロキソプロフェンを1錠もらえます、これ多分病棟の常備薬でしょう。
自分、旅先でも普通に寝られるタイプだったはずなのですが、まーくーらーがーだーめーー!!
そもそも家ではカイロプラクティックで背骨を矯正してから使用する固いマットレスで寝ていたので、病院の普通の布団で寝るともう腰が痛いです。
これ多分一日寝ていたらすごくしんどいです。
そして枕が高すぎて合わない。
あまりにも首が痛いので、バスタオルで枕を作ってもらって寝ていました。
ここで「カイロプラクティック」という言葉が出ましたが、長年の腰痛のメンテナンスをわたしはカイロプラクティックに頼っていました。
そもそもわたしの腰痛は脊柱側彎症から来るもので普通の整形外科ではどうしようもなく、よくて湿布が出て終わりなのです。
そこで仕方なく、2週に1度カイロプラクティックへ行き背骨のゆがみを整えるという事をやっていたのですが、先の入院直前の外来でですね、
「首をコキコキする癖はありませんか?」と主治医に尋ねられまして。
肩こりがひどいので首コキコキやりますし、そもそもカイロプラクティックで頚(くび)入れてもらってました。
メインは腰痛でしたが腰椎胸椎頚椎が一通りずれているのでコキコキっとやってもらっていてですね、入院した日の2週間前にもやっていたのですが、
「ああ、それが原因ですね」
カイロプラクティックが原因の脳梗塞とか、そんなのありですか!?
主治医の話によると、頚椎の中を通っている椎骨動脈というのがあるのですが、首をコキコキする癖があるとそれをやった時に椎骨動脈が解離することがあって(動脈の管の壁は3層構造でその壁が層と層の間で裂けてしまった状態を解離と言う)、わたしの椎骨動脈解離はそれが原因で、血管が解離したところへ血液が流れ込んで固まってつまった場所が延髄外側だった、ということなのだそうです。
なのでカイロプラクティックはもう行かないように、と言われました。ま、そうなるよね。ていうか、この話前回書くべきだったよね。
さて、ロキソプロフェン飲んでも頭と首が痛いのは治ったりしません。
ちょっとマシになるだけです。10が最高に痛いとすると、7か8くらいの頭痛がロキソプロフェンが効いている間は2か3くらいになるだけです。
うつらうつらしてるので寝ているように見えますが、意識はずっとあります。
しかも肩くらいまでだった左上肢のしびれが首から頬にまで上がってきました。いやーん!
頭とか首とかが痛いのは右側ですがしびれは左側で、しびれというか、何か一枚ぼわっとしたものを被ってる感じというかもの凄い違和感です。わたしの感覚異常はこんな感じでした。
その上、前日夜と同じく自然に溜まる唾が飲み込めないのはなにも解決していないので唾が飲み込めなくてしんどくて眠れないという状態です。
が、ここでどうにかする方法を発見しました。
入院セットの至れり尽くせりバージョンにはティッシュもついているので、唾が溜まったらティッシュに吐き出してポイすればいいのです。
唾は割とすぐ溜まるので、吐き出しては捨て、吐き出しては捨てとなかなか忙しいですが、これやってる方が割とラクです。
ホントは寝たいけどこの際仕方がない。
あと、仰向けに寝ると喉に唾が溜まってむせるので、右を下にして寝るか左を下にして寝るか、どちらかラクな方を探します。
これがまた結構微妙です。麻痺しているのは右の舌咽神経なので、左の喉を開けて唾を流す感じになればいいみたいですがやってた時は理解出来ていないままやっていました。
ちなみにものを飲み込むときには右を向いて飲み込むように指導がありました。右の喉を閉じて左の喉を開ける感じというか、右を向いた方が確かに飲み込みやすかったです。
しかし右の頚部から側頭部にかけてが痛いので、寝るときはうまいこと折り合いをつけられる姿勢を探すのがなかなか大変です、腰も痛いし。
右の延髄がつまったので、すべて左がおかしくなるのかと思えばそういうわけではないみたいです。
普通は右脳がつまれば左半身がおかしくなると一般には思われているようですが、神経が首のどこかで左右が入れ替わるって話があって、右がつまっていれば部位が顔まで上がって来ると右側がおかしくなるらしいのですが、そこがわけわかんないんで困りました。
だって顔の皮膚感覚がおかしいのも左側だったので。
これ申告するとナースも「?」ってなってましたし。
まあ、この辺の数日の記憶は、もう何ヶ月も経ってしまったので、いろいろ前後しています。
こんな感じで腰痛と嚥下障害と頭痛と頚部痛に都合のいい体勢を探しながら、うつらうつらしている間にしらじらと夜が明けてきて、起床時間になってしまうのです。
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