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ジル・バレンタイン

 朝、鏡を見たらゾンビになっていた。

 …は?なんで?意味わかんない。バレンタインチョコ作るのに夜更かししたから?
 え、え、マジヤバいどうしよう、こんなんじゃ学校行けない。
休む?いや、折角作ったから渡したいし……。

顔の青さはメイクでどうにかなる。
だるいのはきっとゾンビになったせいだから体調不良じゃないはず。

……いや、体調不良か。腐ってるんだし。


え、まって、腐ってる?
くさい?くさいかな。
 すんすん……。
 すん…………。
 すーっ……………


ダメだ、ぜんぜんわかんない。
一応、香水つけとこ。
よし。

あれ?意外とこれでいけんじゃない?
ちょっと白いけど見た目はごまかせてるし、
ニオイは大丈夫、だと思うし、
自我あるし、
ニンゲンとしていけるっぽくない?

もっとゾンビって「あー」とか「うー」とかなるもんだと思ってたけどなんないし。
このまま学校いける?

いけるっしょ。

うぅ、めまいはするけど……。
元々一昨日から血が足りてなかったし、しゃーなし。


「いってきまーす」
 靴紐を結んでいると、母がダイニングから顔を出して言った。
「ちょっと、アンタ朝ごはんくらい食べなさいよ!」
 あー、だる。
「ごめん、たべるキになんない」
「なに我儘言ってんのよ食べていきなさい」
「べつにいい。おなカすいたらかウ」
「どこで」
「コンビニ」
「お金もったいないでしょ。パン焼いたげるからそれだけでも食べなさい」
「ヤダ」
「あんたねぇ!」
「あーもう、うるさいなぁぁぁあああああああ」


 わたしは、おかあさんにきばをむいた。
 「……アまくテおイしい」

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