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ヨカヨカ、幸と師匠との絆

九州産馬が北九州記念を制した日、ヨカヨカは九州産馬の伝説的存在になったのかもしれない。そこには九州の生産者や騎手・・・様々な人が絡んだヒューマンストーリーがあった。
ヨカヨカは2018年5月13日本田牧場で誕生した牝馬である。父親はスクワートルスクワート、アメリカのダートスプリンターだ。ちなみに英語でスクワートルという言葉はゼニガメを差すらしい。母親はハニーダンサーという馬で現役時代は勝つことが出来なかったものの、1200mで中央2着とそれなりに健闘している。近親馬にはジャパンカップを制したピルサドスキーや秋華賞を制したファインモーションなどがいる。でも血統的には一流とは言いがたい血統だ。
しかしながら、ヨカヨカはデビュー前からその実力を発揮しており、宮崎育成牧場で行われた公開調教育成馬展示会で、ヨカヨカは2F23秒0、11秒0の1番時計をマーク。このこともあり、早くから評判を呼んでいた。九州産馬では1,122万円というかなりの値段で取引され、関係者からの期待も高かった。ヨカヨカはその自信を表すがごとく新馬戦を九州産馬限定のレースではなく、あえてレベルが高い新馬が出る阪神のレースに出走した。そこでのちのG2を制するモントライゼに勝利し、新馬戦九州産馬3年ぶりを達成すると(限定除く)次のフェニックス賞も22年ぶりの勝利を達成し、北海道の馬にも引けを取らない強さを見せたのである。
九州産馬が北海道産に勝つのがいかに難しいか。競走馬の生産は北海道が約98%を占めており、1年に7000頭近くの馬が生産される。さらには北海道には社台ファームなどの有力大手牧場もたくさんあり、競走馬生産のメッカだ。それに比べて九州産はわずか0.9%しかない。そこからG1に出走する馬を出すのだから私は驚きである。

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実際、本田牧場も生産牧場を数十年近くやっていたがヨカヨカが初めて平地G1出走した馬であった。阪神ジュベナイルフィリーズでは一時は先頭に立ち九州産馬では初めて平地G1の掲示板に乗る快挙を達成。生産者の本田さんは嬉しそうな表情を見せ感動していた。
一躍牝馬G1で掲示板に入りクラシック戦線でも健闘を見せたヨカヨカ。彼女は取材慣れしており、人懐っこい面もあるそうだ。これがヨカヨカの人気に繋がっている部分もあるだろう。白と赤を基軸としたメンコや、牝馬のかわいい顔に額の星はかなり印象深いし好きだ。かなり属性マシマシの華麗な乙女である。
そしてフィリーズレビュー、葵ステークス、CBC賞で善戦を見せるものの、惜しくも勝てなかった。しかし2021年の北九州記念では雨の中大外一閃。見事一着に輝いた。小倉のファンに届ける。素晴らしい勝利であった。
実はこの時の鞍上幸英明も九州男児。九州女と九州男児のコンビで重賞制覇を達成したのである。

メンコヨカ


幸は鹿児島県鹿屋市出身。谷八郎厩舎所属として94年3月に騎手デビュー。当時、“九州産といえば谷”といわれるぐらい九州産馬を多く預かっていた厩舎であり、弟子には田島良保、田原成貴などがいる。谷八郎氏は所属ジョッキーを信頼する人情派であった。そんな師匠に育てられた幸。彼の性格がかなり良いことは競馬ファンの多くが知っているだろう。そんな幸が慕った師は1998年2月28日に定年引退。幸英明がデビューして4年目のことであり、フリーになる不安も当時あったらしい。だが谷八郎氏の息子で調教師でもある谷潔(たにきよし)調教師が“フリーでやってダメだったら面倒を見てあげるから”と幸の面倒を見たのである。父・八郎師から子の潔師へ-。谷家との縁は深く、長く続いた。
しかし昨年8月に谷八郎氏は亡くなった。そんな師匠の一周忌が行われたのは北九州記念のレース10日前。 そんな背景もあっただけになんとしても勝ちたかったのだろう。そして北九州記念では凱旋勝利を達成。九州男児と九州女の意地が魅せた九州産馬の大きな大金星であった。
熊本では最近では豪雨や地震など様々な災害に襲われることとなった。そんな人たちを元気づけるかのようにヨカヨカは九州の期待を背負い大きな活躍を見せていくのであろう。九州男児達に世話され背中に乗せながら。そんな後ろ姿を見て故・谷八郎氏や九州の人たちが『よか、よか』と温かく見守ってるに違いない!

動画版もぜひ!


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