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変化は親から始まる。次世代リーダーを育むWhole child approachに迫る | 新・エリート教育 竹村 詠美 (著) | #塚本本棚

【良書】親こそ学ぼう。変化は親から。頭がよくとも幸せになれるとは限らず、社会に必要とされるとも限らない。なぜか?次世代リーダーを育むWhole child approachに迫る本。

今日は「新・エリート教育 混沌を生き抜くためにつかみたい力とは?( https://amzn.to/3bUgWCZ )」竹村 詠美 (著) #塚本本棚

【紹介文】
世界のグローバル・エリートが子弟を通わせる最先端の学校は、何を、どのように、教えているのか。激変する21世紀の教育、その最新動向!

【書評】
「今最も興味があることは?」と言われれば、”子育て”と言わざるをえません。

僕の成長の数十倍のスピードで駆け上がる幼少期の我が子への投資パフォーマンスは、僕への自己投資のリターンの比ではありません。

そこで様々な教育機会(子供にとっては遊びのようなものであり、決して苦であってはならず、決して強制であってはならない)を与えてあげたいと日々情報を集めています。

頭でっかちで人と会話が出来なかったり、社交性を失ってたり、とがりすぎて排他的になってたり...それが教育の成功といえるのか?世界のエリート教育はその先を模索しているよ、とこの本は語り掛けています(先進的な例として日本の学校も複数取り上げられています)。

僕の周りでもバカロレアやSTEAM教育に興味を持たれている人もいる中で、この本は情報社会の先には創造性が重要視される社会が訪れると説き、その為には認知+非認知の能力、キャリア自律、主体的かつ対話的、心身頭のバランスの取れた人物になる必要があると説きます。その為に世界の様々な一流校で始まっている Whole child approach について実例をもとに著述されており、大変参考になりました。

本書に述べられているようなエリート教育は、啓蒙社会、平時治世の資本主義社会ではかなり優位に立てそうなアプローチだと思います。しかしながら、乱世や無慈悲な暴力には弱い側面もあるのではないかという懸念も浮かびます。ともあれ、今後の目指す未来の一視点として面白く読めました。事例も豊富で具体的です。


【本を読んで考えた・メモ】
・テストで100点を取ることは、認知された事象に対しての最適化能力の測定にはよいが、非認知事象に関しては応用力が弱く、歪みがある

・頭だけではバランスが足らず、心身頭(Heart Body Mind)を統合的にバランスよく育むことが大切= Whole child approach

・複雑で目まぐるしく変化する時代を生き抜くには、主体的で対話的な姿勢が大切。その姿勢を得るには豊かな人格や態度、価値観などの非認知能力の育成が重要

・主体的であるという事=自らモチベーションを生成できるという事。その為には人から与えられた外的モチベーション(テストの点数など)では難しく、内的モチベーション(深い思考や好奇心、創造力など)の形成が必要

・人生100年。大学までの学びではとても学習が足らず、自学自習・リカレントの姿勢は必須。その為には内的モチベーションによって自己啓発を生む力が必要であり、更に言うなら今後複雑多様化する社会では、その社会に対して対話的であり、対話を引き出す人格や態度が必要である

・4つの非認知能力4Cs(コミュニケーション能力、批判的思考能力、コラボレーション能力、創造力)が従来型の認知的な”学力”にまさる、次世代の読み書きそろばんとなるのではないか

・従来型の学業で優秀な成績を収めていても、チームワークが苦手で協働できないなら一緒に働きたいとは思わない by 元Googleシニア・ヴァイスプレジデント ラスズロ・ボック氏

・学業の成績は最初の2年のパフォーマンス予測には少しの役に立ったが、キャリア全体でみると全く役に立たなかった by 元Google ボック氏

・スタンフォード大学 キャロル・ドゥエック教授の研究では、成功因子としてIQより態度の方強いことが判明した。自分は努力によって成長し続けると考える事が出来るマインドセットを持てるかどうかが命運を分けるのだという。つまり失敗にどう向き合うかという能力が大切だ

・失敗にめげず物事をやり抜く力(グリット)が大切で、やり抜くには困難から回復するレジリエンス(回復力)を持たなければならない。そうでなければ燃え尽きてしまう。情熱と我慢の両立

・世の中の採用(GSやFB、スペースXなどの事例を出しながら)でも、単純学力に寄らない、またはそれらを考慮しない採用プロセスが作られつつある(IBMですら学歴不問の採用を始めている)

・学歴よりスキル自体を評価する時代へ

・モンテッソーリ教育や、イエナプラン、シュタイナー教育などもWhole child approachである

・子供は2歳から5歳までに平均4万の質問をする。4歳児は見通しを立てる力は弱いかもしれないが、関心に対して粘り強く、興味を持って積極的に取り組む力はとても高い。我々が4歳児から学ぶことは多い

・Whole childを育む学びとは、子供一人一人の成長にフォーカスした学びである(学習者中心の学び)

・中高入試では一般的なテストだけではなく、本人及び保護者の書いたエッセイや普段の成績や社会活動なども評価される流れが広がっている(やはり読解力、読書週間は必須)

・成績や進学に過度にとらわれる事によるストレスは、集中力を阻害し、社会的な孤立や睡眠や摂食障害、希望の喪失や自傷行為などを引き起こす。心の発達に深刻なダメージを与える。心理的安全性を生活の中に確保することが重要

・子供から大人への架け橋の時期である中高生時代は、大人からの自立が進む一方で学業でも精神面でも大人のサポートが欠かせない時期である。ここで親が十分に子供を支えられるかがとても大切だ。頼りになる大人であり、且つ信頼に足る親である努力を惜しんではならない

・積極的に、幸せで充実した人生を送るために必要な7つのキャラクター・ストレングス=「熱意(Zest)」、「グリット(Grit)」、「楽観性」、「自己調整力」、「感謝」、「社会性」、「好奇心」

・思考力の高次ステップ=記憶→理解→実践→分析→評価→創造。暗記偏重の学習は、思考の高次化の入り口でしかなく、そこからの発展が必須だ

・日本の先進教育の事例は都心は少なそうだが、これらは親が子供に与える事が出来る(社交性、社会体験、共感力、心理的安全性が担保された状態での自発性など)ものだと感じる。親も成長しなければならない

・本書では子供の心理的安全性担保の重要性が重ねて強調されている。恵まれている家庭では信じられないかもしれないが、親が自学の敵となる場合も非常に多いのだ

・Whole childの育成は家庭から始まる。特に自己調整力(主体的に計画を立て、立てた計画に対して様々な誘惑を振り切り責任を持って行動できる力)には家庭環境の影響が顕著である

・6歳までが脳の第一成長期、次は思春期から25歳ごろまでが第二成長期

・民主的な子育てスタイル=子供に高い基準を持ち、熱心に子供と向き合いながら、子供が独立した合理的な一人の人間であることを尊重する。その為、保護者は子供に成熟度や協力を期待しながらも、必要な感情面でのサポートを行う=最も効果的で子供の立場に立ったスタイル

・新しい時代を作るのは若者。そんな若者を育むために大人は成長し、彼らを支え応援していこう

・変化は自分から始まる

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