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芸術起業論 村上 隆 (著) #塚本本棚

”ギリギリのグレーゾーンを最速で”、村上さんって原体験のあるスタートアップ起業家だね、だから六本木が似合うのかな?

今日は「芸術起業論( https://amzn.to/3ieGyMH )」村上 隆 (著) #塚本本棚

今評価される芸術というのは感情の振幅を呼び起こせるかであり、美術史に足跡を残せるコンセプトがあるかどうかであり、富豪が買うに足ると考えるストーリーがあるか、”概念の創造”が大切である。

”商売とは何か、ビジネスとは何か”よりも、世の中に最速で価値を残せるかどうかの1点に絞って爆速で駆け上がるスタートアップの姿に重なるものがあり、だから五百羅漢図展は六本木ヒルズがよく似合ったのだなと思う。

アートとアニメ、そのギリギリのラインを狙って”世界はこの概念を、この文脈からなら評価するはず”と”作品を設計する”、そのアプローチは芸術家の内在する情念から偶発的に生まれ評価されるこれまでのアートとは違うので、そりゃあ嫌われるだろうなと。ただ、日本最高額の落札作品を世に出した村上氏は、アートの世界では間違いなく”IPO組”と言えるだろう。

【本を読んで考えた・メモ】
・村上氏にしても36歳までは極貧だったとあるので、日本での芸術家という職業は本当に難しいのだなと思う。多感な時期を全部ぶつけて、晩年どうかという所か…草間彌生氏も評価されたのは60代以降ではなかったか

・早期にリタイアしたいなら芸術家という職業は向かないし、村上氏のように”概念の創造”を念頭に作品を作ると、後世まで評価が残るものの、その評価は必ずしも望むままとはいかないだろう

・彼はアートを手段にしたビジネスマンなのだ。だからもちろんドラッガーは知っているし、リード顧客を得るためのタッチポイントの施策や、誰がお金を持っていてその人が何を作ればいくらで買ってくれるかというPMFも行っている

・だから猛烈に”働く”し、分業制を取る。この本はベンチャーが読んだ方が刺さる。当時の虚業と呼ばれたホリエモンに重なるところがある

・そういう文脈で見ると、彼の作品を所有したいという欲が湧くから不思議だ(高すぎて買えないが)

・当然プロダクトアウトではなく、マーケットイン。この考え方が、求道的な従来の日本美術業界となじまない

・アートはルールを知らないと理解できない

・ウォーホルもムラカミも、時価総額経営を掲げたホリエモンに重なる

・文章を読んでいると頭が締め付けられる。すごく学んでいるし、考えているし、宗教的ともいえるほど掘り下げている。社員として働く人はたまらないんじゃないか。この人はそんな地獄の中で死後に自由になるために生きている

・アニメや漫画を卑近という割に、自らはオタクであるし、世界の美術史の流れから日本人である自分がプレゼンスを発揮するにはそこしかないと作品を作っている

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