見出し画像

総員玉砕せよ! #塚本本棚

流れ弾にあたったり、ワニに食い殺されたり、淡々と死んでいく。”馬より下とされた人の死”があった時代と場所の描写。


今日は「総員玉砕せよ!( https://amzn.to/3kjHlMN )」水木 しげる (著) #塚本本棚


【紹介文】
昭和20年3月3日、南太平洋・ニューブリテン島のバイエンを死守する、日本軍将兵に残された道は何か。アメリカ軍の上陸を迎えて、500人の運命は玉砕しかないのか。聖ジョージ岬の悲劇を、自らの戦争体験に重ねて活写する。戦争の無意味さ、悲惨さを迫真のタッチで、生々しく訴える感動の長篇コミック。


【書評】
画風もあるんですが、顔と名前も一致せず、その人の人物背景を知ることもなく淡々と理不尽に死んでいきますし、自殺します。”人の尊厳なんていうけれど、極限ではそんなもの”とでも伝えたかったのか、そんな圧力を感じます。


戦局や日本の為なんて事は頭の中にはなく、食い物と女のこと、明日死ぬかもしれないから、今の事だけをぼんやりと飢えて疲れないように過ぎていく日々。


美化されていないそのままを書き記すことで、強烈に世相を皮肉ってるようにも見えますし、逆に”素直に(水木しげる氏の中での)真実を記したい”という思いがあるのかもと感じます。


今流行っている鬼滅の刃は、一人一人の死を背景から丁寧に描出しますが、リアルの戦場にそんなものは無いのだという強烈なメッセージにも感じられます。


人は群集心理に取り囲まれると淡々と流れに沿って死にゆくのみなのか、抗うすべを磨かなきゃなと改めて思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?