第423回数学検定(一次検定)を振り返って
みなさんこんにちは。先日、行われた「実用数学技能検定」1級の一次検定試験問題の略解と所感を書いていきたいと思います。
略解はこちら
それでは問1から順に見ていきましょう。
問1 合同式
$${123^{132}}$$ $${(\bmod 133)}$$を求めなさい、という問題でした。
うっかり$${133}$$を素数と考えてしまうと、「フェルマーの小定理より$${123^{132}\equiv 1}$$」とやってしまいますが、引っ掛かった方はいらっしゃるのでしょうか。$${10^9\equiv 1 (\bmod133)}$$ を如何に早く見付けるかがキーです(私は本番ではこれを発見出来ず、正解したもののかなり時間を使ってしまいました)が、そんなに簡単ではないと思います。別解として紹介した、$${\bmod19}$$と$${\bmod7}$$で評価して連立合同方程式を解く方法も悪くないかも知れません。
問2 極限の収束
極限が収束する変数$${x}$$の範囲を求める問題でした。
境界で等号が付くか付かないかに注意が必要ですが、
$${\displaystyle\sum_{n=1}^\infin \frac{\normalsize 1}{\normalsize n}=1 +\frac{\normalsize 1}{\normalsize 2}+\frac{\normalsize 1}{\normalsize 3}+ \dots}$$は無限大に発散する
$${\displaystyle\sum_{n=1}^\infin \frac{\normalsize (-1)^n}{\normalsize n}=-1 +\frac{\normalsize 1}{\normalsize 2}-\frac{\normalsize 1}{\normalsize 3}+ \dots}$$は収束する
ことを知ってたら問題なく解けると思います。ちなみに後者は、$${-\log 2}$$に収束します。
問3 空間内の点と平面との距離
はっきり言ってこれはサービス問題でしょう。数検準1級で出題されてもおかしくありません。短時間で解いて次に進みたいものです。
問4 偏導関数
$${Arctan \frac{\normalsize x}{\normalsize y}}$$の偏微分は多くの参考書、問題集等に載っている有名な問題で、これも合格のためには落とせない問題です。
問5 分散・共分散
分散・共分散の定義をキチンと抑えていれば単なる計算問題ですが、計算がややこしいですね(私は落としてしまいました)。自分が間違えたから言うわけではないですが、正答率はそんなに高くないのでは、と予想します。
問6 行列式
どういう手順で計算するかによって計算の手間、計算ミスのリスクが変わってきます。検算を兼ねて何通りか試してみるのが一番よいのですが、時間的制約の厳しい試験ではそうもゆかないでしょう。解答例は、色々試してみて、一番効率がよいと思った方法を紹介しています。
問7 微分方程式
ベルヌーイの微分方程式の問題でした。ベルヌーイの微分方程式は393回(2022年7月)の出題されており、まさか再び出題されるとは思いませんでした。前回は二次検定の問7(必須問題)でしたが、今回はより短時間での解答が求められる一次検定で出題されました。その時の正答率は全体で24.9%、合格者で81.9%でしたが、今回もそんなもんだと思います。
全体を通して
私の感じた各問の難易度は
問1 難
問2 標準
問3 易
問4 易
問5 標準~やや難
問6 やや難
問7 難
ぐらいでしょうか。合格のためには問2~問4は正解し、残り4問のうち2問以上取ることが求められそうです。
(2024.5.18追記)
問1 合同式の問題。
最初の解答例では、力尽くで$${10^9\equiv 1 (\bmod133)}$$を見つけて解きましたが、もう少しエレガントな方法があることに気付き、改訂版をアップしました。
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