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数検1級を受検予定の皆さんへ~1次対策編~

こんにちは。数学検定が迫ってきました。数学検定は漢検や英検と違い過去問があまり公開されていないため、特に初めて受検する方は、どんな問題がよく分からないのではないでしょうか。
そこで、最新の出題傾向を踏まえた対策を考えてみたいと思います。

本記事はその前編で、1次検定対策について考察していきます。


数学検定(1級)とは

数学検定は、正式には「実用数学技能検定」といい、公益財団法人日本数学検定協会が主催する検定試験です。

1級は大学初年度レベルの数学力が問われます。1次(計算技能検定)と2次(数理技能検定)からなり、両方合格すると、1級合格証が与えられます。

1次検定の傾向と対策

1次検定(計算技能検定)は、全部で7問からなります。そのうち2題は2つの小問から構成されているので、9つの問題を60分で解きます。配点は各1点(小問は各0.5点)で、7点満点のうち5点以上取れたら合格です。解答のみを記述し、答えが合ってたら正解ですが、計算ミスしたら部分点はありません。

最近2カ年の出題内容は


第389回(2022.4.10)
第1問 整数問題(連立合同式)
第2問 複素三角関数
第3問 空間図形・平面と直線の距離
第4問 逆三角関数の導関数
第5問 累積分布関数と期待値
第6問 行列式
第7問 微分方程式


第393回(2022.7.24)
第1問 数列
第2問 空間ベクトル(外積・平面の方程式)
第3問 2変数関数の偏微分係数
第4問 逆行列
第5問 確率統計・分散と共分散、相関係数
第6問 行列式
第7問 重積分


第397回(2022.10.30)
第1問 多項式
第2問 逆三角関数
第3問 空間ベクトル(内積・外積)
第4問 無限級数の収束半径ほか
第5問 確率統計(分散と共分散)
第6問 行列式
第7問 微分方程式


第406回(2023.04.16)
第1問 多項式の割り算(余りを求める問題)
第2問 複素関数
第3問 ベクトル(内積)
第4問 マクローリン展開
第5問 確率統計(平均・分散)
第6問 行列式
第7問 重積分


第410回(2023.07.23)
第1問 整数問題(余りを求める問題)
第2問 三角関数
第3問 確率統計(確率密度関数の期待値)
第4問 ベクトル(外積・四面体の体積)
第5問 逆三角関数の微分
第6問 行列式
第7問 重積分


第414回(2023.10.29)
第1問 整数問題(合同式)
第2問 複素関数
第3問 逆行列
第4問 ユニタリ行列に関する問題
第5問 確率統計(期待値・共分散)
第6問 極限
第7問 微分方程式


7問の内訳は、「微分積分学(微分方程式を含む)」と「線形代数学」から各2問ずつ、「確率統計学」から1問、「その他」(整数問題、逆三角関数、複素関数などなど)が2問、となっています。10年以上前からこの配分になっており、今後も踏襲されるものと思います。一つずつ見ていきましょう。

「微分積分学」の傾向と対策

微分系の問題(偏導関数、マクローリン展開、極限値など)と積分系の問題(重積分か微分方程式)から各1問出題されています。

微分系の問題は、第3~6問のどこかで出題されます。偏微分かマクローリン展開に絡んだ問題が多いですが、極限値を求める問題が出題されることもあります。

積分系の問題は最後の問題(第7問)となっており、ほぼ重積分か微分方程式の出題です。なお、微分方程式が1次検定で出題されなかったときは、2次検定(必須問題)で必ず出題されますので、微分方程式の対策は重要です。

「線形代数学」の傾向と対策

ベクトルに関する出題、行列に関する問題が各1問ずつ出題されることが多いです。

表を作成して気付きましたが、以前は行列の固有値を求める問題がよく出題されましたが、最近は減っています(その代わりに2次で出題されてますが)。行列に関する問題では、逆行列と行列式を求める問題が頻出です。最近は行列式は4×4行列、逆行列は3×3行列のそれを求める問題が多いですね。もっともそれを知ったからといって受検に有利になるわけではありませんが。

「確率統計学」の傾向と対策

期待値、分散、共分散、相関係数など確率統計学の基本的な事項が問われます。


「その他の問題」の傾向と対策

○整数問題
○逆三角関数に関する問題
○複素関数に関する問題
が三大頻出テーマでしょうか。整数問題はおそらく2回に1回程度ぐらい、後者二つは3~4回に1度ぐらい出題されていると思います。複素関数の問題はオイラーの公式($${e^{i \theta} = cos\theta + i sin\theta}$$)をきちんと理解し、使いこなせたら何とかなる問題が殆どです。

この2年間の1次検定の平均点は、


第389回 3.5点
第393回 4.2点
第397回 2.6点
第406回 1.7点
第410回 3.0点
第414回 3.2点


と、正答率が25%弱から60%まであり、当然ながら合格率の上下幅が大きいです。出題内容が多岐にわたるのは大いに結構ですが、難易度はなるべく揃えて欲しいな、とは思いますが。

一昔前は、10分足らずで解くのは到底不可能、捨て問にするしかない、と思われるような超難問も出題されていましたが、最近は良心的な問題が並んでいます。それでも、解法が分からなかったり、苦手分野だったりですぐには解けない問題もあるかと思います。

しかし、一次検定は全問正解する必要はなく、7問のうち5問正解すれば合格です。ゆえに、1問は捨てて、残り6問中5問正答するつもりで試験に臨むと良いのでは、と思います。私もまずは6問解答する、その上で時間が余ってたら残した問題に取り組む、というスタンスで問題にとりかかっています。

(2次対策編に続く)

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