糸車
糸車が焼かれた国で、私たちは痛みを求めていた。
大人たちは、糸車を探し、次々と燃やした。
燃やしても燃やしても、糸車は現れた。
運良く、糸車と遭遇した娘は眠りに落ちる。
大人たちはその不幸を嘆き悲しみ、熱心な糸車破壊者になる。
私たちは糸車を回すことができず、退屈していた。
大人たちに焼かれることの無い、強い糸車が現れるのを待っていた。
私たちは想像する。
大人たちが燃やすことができない巨大な糸車のことを。
「ああ、怖い」「本当に恐ろしい」と言う声は悦びに満ちている。
強い糸車は、指先を傷つけ眠らせるより、酷いことをするだろう。
私たちの肉が引き裂かれ、私たちの血が噴き出すだろう。
ああ、それは、何というか、驚きだね。
痛み以上のものだ。
眠りではすまないだろう。
死んでしまうよ。
死んでしまうね。
やがて、私たちは糸車を恐れるようになる。
痛みや眠りを憎むようになる。
私たちはそうして大人になった。
私たちは次々と糸車を燃やす。
私たちの暮らしは安全に満ちている。
糸車を燃やした夜は夢を見る。
キークルクルクルクル
キーカラカラカラカラ
糸車が回る、音だけの夢を見る。
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