黒い石

石には本当に沢山の種類が存在している。
それこそ1円の価値も無い石から高価な値段が付く石まで。
しかしそれはあくまで人間の、いや経済的な希少性に過ぎない。
実はもっと別の意味が含まれているのかもしれないし何も無いのかもしれない。
俺が子供の頃、石集めに夢中になった時期があった。
近くの河原で採取できる石は大きさこそ様々だったがそのどれもにツルツルとした石の表面の下に奇妙な模様が不規則的に散りばめられていた。
とてもきれいな石・・・。
ただそれだけの感想だった。
だから俺はその石を毎日持ち帰ってコレクションした。
そしてそれを一度親戚のお寺に持っていったことがある。
勿論、その綺麗さを自慢したくて・・・。
しかし俺の思惑通りにはいかず親戚の尼僧からこう言われた。
これは不吉な石だから持っていてはダメ!
絶対に良くない事が起きるからその前に帰してきなさい・・・と。
いつもは穏やかな親戚の顔がとても恐ろしく感じられた。
勿論、その親戚の言うとおりに石は元の河原に戻してきた。
それから1か月くらい経った頃に学校で奇妙な噂が広まった。
老婆が石を持ち去った者を探している・・・と。
そしてそれから数週間後に友達が1人急逝した。
こんな体験があるから俺は今でも石を集めたりはしない。
そして石に関する別の話が寄せられたから今夜はこの話を書いてみようと思う。
羽場さんは北海道に住む40代の男性会社員。
毎日30キロほどの道のりを愛車で通勤している。
彼が乗っているのは4WDのSUV車
白いボディがスタイルとマッチしてとても気に入っているのだという。
そんな彼の車に異変が起き始めたのは今から3か月前。
朝通勤の為、車に乗ろうとした時、後部座席に置かれている大きな黒い石を見つけた。
その石の大きさはバスケットボールくらいで艶が無く丸くて異様に軽かった。
見た目は明らかに石にしか見えないのに持ち上げてみると拍子外れにとても軽い。
だからと言って、たとえ石ではなかったとしても一切記憶にない物が後部座席に乗せられていたのだから彼としても少し気持ち悪く感じたという。
そもそも彼は後部座席に誰かを乗せる事も無かったし家に駐車する際にはしっかりとドアをロックし防犯装置も機能している。
それなのにどうしてこんな石が・・・?
誰も車内に持ち込めるはずがないのに・・・。
考えれば考える程気持ち悪くなっていく。
だから彼はそれ以上考えるのは止めたという。
それからしばらくの間は何も起こる事は無かった。
しかし7日目の朝、やはり同じような黒い石が後部座席に置かれているのを見つけてしまう。
そしてそれからは少しずつ間隔を短くしながら黒い石は後部座席から発見され続ける。
流石に気持ち悪くなった彼は車内を24時間監視できるように監視カメラを設置した。
そして彼は視てしまった。
深夜午前3時頃にカメラが一瞬揺れた後に白い着物らしきものを着たおじいさんがにゅぅーっと画面に現れた。
それはどう考えても天井から降りてきたようにしか見えなかった。
そしてそのおじいさんは助手席に座ると後部座席の方へ首を伸ばして何か苦しそうな動作をしていた。
するとそのおじいさんの口からゆっくりとあの黒い石が生み出され後部座席のクッションに落とされたという。
するとそのおじいさんは満足げな顔をカメラに見せた後、また天井へ消えていく様にいなくなった。
お祓いをしてもダメ。
護符を貼っても粗塩を撒いてもダメ。
彼は仕方なくその車を売りに出して新しい車を買った。
しかし、どうやら売りに出した車ではそんな黒い石など現れる事は無かった。
そして彼が買った新しい車の助手席には相変わらず黒い石が後部座席に生み出し続けられているらしい。
その後、彼は先祖の事、そして土地の事などを詳しく調べてみた。
しかし関係するような事件も何も見つかる事は無かった。
だとしたらどうして・・・?
それは誰にも分からないのかもしれない。
つまり怪異というのはそういうものなのだから・・・。

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