ふかもっこ

これから書く話はいつもの怪談ではございません。
単なる悪趣味で書いたお遊び創作怪談になりますのでご注意ください。
半分実話で半分創作・・・。
まあ、ある意味では恐ろしい怪談かもしれませんが・・・。
 
 
私はふかもっこ。
えっ?
馬鹿なんじゃないの?
こんなのハンドルネームに決まってるじゃない?
えっと本名はね・・・・うーんと・・・忘れた。
まあ、いいじゃないの・・・。
今は宮城県に住んでるわ。
生まれはもっと雪深い場所。
そうずら・・・だべな・・・とかが日常会話の限界集落。
私には実家も家族も何も無かった。
物心ついた時から1人きりで生きてきたのよ。
そう雪の下、いや氷の下から発見されたって聞いてるわ。
まあマンモスと一緒ね・・・。
でもね、マンモスは氷の下で死んでたけど私はちゃんと生きてたわ。
だって、ふかもっこなんだから・・・。
つまり私は氷のような女。
いや氷の女王様。
感情なんて必要無いの。
誰もが私にひれ伏すんだから。
誰もリスペクトなんてしない・・・。
暴言は言ったもん勝ち・・・。
他人は利用するだけのもの・・・。
用が済んだらさっさとお払い箱にしてしまえばいい・・・。
だってこの世の全てが私の為に存在してるんだから。
プロの作家でも怪談師でも利用するだけしてやるわ。
私だけが光り輝けば良いんだから。
利用しつくしたらもうそれはゴミ。
私、ゴミは嫌いなの。
私だけが美味しい物を食べ、私だけがきれいな服を着て、私だけがお金持ちになれればそれでいいのよ。
だって私は、ふかもっこなんだから。
ボコボコに凹んだ軽四に乗ってたとしても放っておいてちょうだい。
ムカついた車や歩行者には体当たりするのが趣味なの!
だって私は、ふかもっこなんだから。
そしてね、こんな私にも唯一楽しい時間があるの・・・。
それはお酒を飲む事。
お洒落に、そして優雅に・・・。
そう、その日も適当に暗く仕事をこなした後、帰宅途中に飲みに行こうと思い立ったの。
勿論、お気に入りの泥色の服と泥色の高級バッグで・・・。
あっそれとね・・・。
私が住んでるのは実は仙台市なんかじゃない。
いつも「はい。仙台に住んでます~」ってマウントを取ってるけど本当は仙台市になんか
住んでない。
もっと田舎の集落。
家に戻った私は牛と鶏に餌をあげてからすぐに仙台市へ飲みに出たの。
だって仙台市で飲んでた方が格好いいんだもの。
山を3つ超え、川を2つ泳ぎ切り、出会ったツキノワグマを片手で叩き潰してからようやく道路へと出たの。
私は常に直線距離で移動する。
何があろうと真っ直ぐにしか進まない。
だって遠回りなんて面倒くさいでしょ?
それが、ふかもっこなんだから・・・。
道路に出て最初に眼に着いたのはマクドナルドだった。
なんですって!
午後5時からは肉が2倍になるですって?
これは食べなきゃ、ふかもっこの恥だわ。
私は店内に入ると早速カウンターへ行き注文したの。
倍ビッグマック10個!それと倍フィレオフィッシュを10個、あとはナゲット10個とポテトのLを10個、あっ、それとバニラシェイクも10個・・・あっ最後に絶品チーズバーガーも10個ちょうだい!
すると店員はこう返してきたわ。
お客様、絶品チーズバーガーは当店の商品ではございませんが?
それからこれら全て、お持ち帰りでよろしいですか?
私はこう返したわ。
そんなの関係無いの。
私はもっこ、ふかもっこなのよ?
無かったらこれから頑張って作ってよ!
あっ、それとこれ全部、店内で食べるから・・・と。
そうしたら店員は驚いた顔で
いえいえ、お客様、絶品チーズバーガーは当店では作れません。
それにこれだけの量をお一人で食べきれるとは思いませんが・・・・そう返してきたわ。
その時、私は無意識にこう叫んでいたわ。
きざむぞ!って。
結局私は何も食べられないままお店を出たわ。
ムカついたその店員を15センチのピンヒールでめった刺しにし他の店員もマックフライポテトを揚げてた油の海に沈めて。
面倒くさかったけど店内のお客も全て静かにした。
めった刺しにして。
だって・・・うるさいんだもん・・・。
逃げられたら追いかけてトドメを差したくなるのが礼儀ってもんじゃないかしら?
マクドで何も食べられなかった私はそのまま居酒屋にダイナミック入店したわ。
カウンターに座った私はある作戦を敢行したの。
それはウソ泣き・・・。
私みたいな美人がカウンターで飲みながら1人で泣いていたらどんな男もイチコロよ。
私は事前に用意していた目薬を全て両目に注ぎ切ったわ。
ほらほら早速、後ろの席に座ってる3人組の男達が声を掛けてきたわ。
えっ、なんなの?
若い男じゃないじゃん!
こんなおっさん達が恐れ多くも私に声を掛けてくるなんて・・・・。
しかも生ビールを一杯おごるから元気出せ!ですって?
ふざけんじゃないわよ。
私を誰だと思ってるのよ。
ドンペリの100本くらいおごりなさいよ!
私はふかもっこ・・・・この世を統べる女なのよ。
私は振り返るとそのままピンヒールのかかとを男達の両目へと順番に突き刺したわ。
気が付いたらお店の床と壁が真っ赤に染まってて誰もピクリとも動かない。
うん、とっても綺麗だったわ。
でもね・・・。
居酒屋ではエイひれと熱燗1本しか飲めなかった私はもうお腹がペコペコ。
私はすぐに行きつけのバーへ向かったわ。
お店への道を歩いているだけで息が切れてしまう・・・。
私ももう歳なのかしら・・・。
はぁはぁ言いながら歩いていたわ。
すると後ろから誰かが追いてきてる足音が聞こえてきたわ。
もしかして誰かが私をナンパしようとして後ろを歩いてるんじゃないの?
私は少し歩く速度を落としたわ。
後ろから足音がどんどん近づいて来る。
そして私は追い越されてしまったわ。
ちょっと待って・・・若い男の子じゃないの!
しかも明らかにイケメンだわ!
どうして私をナンパしないのよ?
こんな美人がピンヒールをカツカツ言わせて1人夜道を歩いてるんだから声を掛けるのがマナーなんじゃないの?
ねぇ・・・ちょっと待ちなさいよ!
私は前方を歩きながら遠ざかっていく若い男に走り寄ると一気に地面に叩き伏したわ。
その後はお気に入りのピンヒールでザクザク踏みつけてやった。
最近の若い男は生命力が足りないわね・・・。
心臓の辺りを30回ほど踏みつけたらもうピクリともしなくなっちゃったわ。
私は既に死んでいるその男に笑顔で声を掛けたわ・・・。
ねぇ・・・少し落ち着こうか?・・・って。
仕方なく私はまたバーへの道を歩き出したの。
今日は調子がいいわ。
道すがらすれ違う男も女も全てサバイバルナイフ一振りよ!
何を思ったのか、私に向かって突っ込んでくる車がいたけど私にぶつかった瞬間、向こうの車が大破したわ。
うん、今夜は調子がいいわ。
そうしていると前方に行きつけのBARの明かりが見えてきたの。
お店に入る前に四股を踏んでリンボーダンスをするのがふかもっこ流。
だって、したいんだもの・・・。
店の前にはバリケードの様な障害物が幾重にも重なってたわ・・・。
今夜は運動会でもしてるのかしら?
店内へ入ったけどいつものようにマスターが笑顔で迎え入れてはくれなかった。
あの・・・もう出禁って言ってあると思いますが・・?
マスターはなんだか震えながらそう言ったわ。
都合の悪い言葉はそのまま聞こえないフリをする。
それも、ふかもっこ流。
店から追い出そうとするマスターを振り払い投げ飛ばして私はカウンターのいつもの席に座ったの。
何故か15センチのピンヒールのかかとが木製の床へとめり込んでいるわ。
いけない・・・また太っちゃったかしら?
まあ、気にしないけど・・・。
とりあえずジントニックでも作れよ!
私はマスターを5発ほど殴った後、ふらふらになって余計な力が抜けたマスターを脅したの。
今夜はこの店の酒を全て飲み干してやるわ。
そういえば前回来た時も同じことをやったような気がするけど気にしない気にしない。
だって、私はふかもっこなんだから。
どれだけ飲んだかしら。
もうマスターは邪魔だから殺したの・・・。
お店の客もめんどくさいから殺した。
ああ・・・これで気兼ねなく好きなだけ飲めるわ。
もうグラスでなんか飲んでいられない。
私はウイスキーやジンをボトルごと次々に飲み込んでいった。
ボトるをかみ砕いた時のガラスの質感がたまらないわ。
うん、これも確かにふかもっこ流だわ。
それにしても今夜はしばれるわね・・・・。
何か暖かくする方法は?
あっ、あったわ。
私ったらなんでこんな簡単な事に気が付かなかったの・・・・。
私のばか~
そうよ・・・手っ取り早くこの店ごと燃やしちゃえばいいじゃん!
そうしたら暖かくなると転がってる死体なんかも最高の酒の肴になるじゃない!
私はカウンターの中から96パーセントのウオッカを見つけそれを床にまんべんなく振りかけると即座にマッチで火を点けた。
あっ、そういえば私も昔はマッチ売りの少女を読んで何回も泣いたのよ。
だってあの小娘の死肉が食べられないのが悔しくて仕方なかったんだもん。
あっ、なんだかいい感じに店の中が温かくなってきたわ。
それは広がった炎の赤がとってもロマンチック・・・。
うん、やっぱり店に火を点けたのは正解だったわ。
私って天才ね!
それはそうとさっきから少し暑いわね・・・いや熱すぎるんじゃない?
誰か火の調節をしてよ!
なんか外は色んなサイレンの音がうるさいし店内は熱すぎるし、いったいどうなってるのよ?
私はふかもっこなのよ?
15センチのピンヒールの女王様なんだから!
 
それにしても、ふかもっこってどういう意味なんだろ?
みんなはそう呼ぶわ・・・。
名付けたのは私だけどいつの間にか名前が独り歩きし始めて・・・。
いや、「キレもっこ」とか「黒もっこ」とか「闇もっこ」って呼ばれる事もあるけどそれは私がつけた名前じゃない・・・。
そもそも「もっこ」って何?
いや「ふか」ってどういう意味?
いや、そんな事はどうだっていい・・・。
だって、まだ始まってすらいないんだから・・・。
ああ・・・なんか眠たくなってきた・・・。
このまま眠るのもしあわせ・・・・なの・・・・か・・・・も。
 
 
翌日のニュースにはこんな映像が流れた。
 
はい・・・こちらは現場です。
昨夜発生した火事でBARこめこは全焼しました。
焼け跡からは多数の惨殺遺体が発見され、その中には明らかに人間ではない、巨大で醜悪な鬼のような生き物がほとんど焼ける事無く発見されたとの事です。
これは世紀的な発見とのことで生物学者はその謎の生物を「ふかもっこ」と命名しました。
「ふか」つまりサメと「もっこ」いわゆる網状の運搬用の袋。
それらを合わせて「ふかもっこ」
つまり訳が分からない化け物という意味だそうです。
ちなみに私も一瞬、その生物の死体を見ましたがとても性格が悪そうな顔をしていました。
 
現場からは以上です・・・・。
 
ふかもっこは実在ずる・・・。
 
 

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