【ワールドベースボールクラシック第1〜4回の流れ】2023年3月24日
メジャーリーグの優勝チーム決定戦を「ワールドシリーズ」と呼ぶが、親善試合での日本の強さからその名称にメジャーリーグベースボール(MLB)が疑問を抱くようになった。さらに野球は、米国4大スポーツ(アメフト、アイスホッケー、バスケ、野球)の中でもっとも人気が薄くなってきており、国際野球連盟(IBAF)と協議のうえで「野球の世界一決定戦」開催が提唱された。ちなみに日本野球機構(NPB)は米国主導の取り組みに反対。ギリギリまで参加を表明せず、大会開催の1年前である2005年、正式に不参加を表明する。
開催資金不足解消のため、どうしても日本に参加してほしいMLBは日本に対して「WBCが失敗に終わったら日本に対して訴訟を起こす」と脅しをかけ、米国政府による政治的な圧力をかけ始めた。NPBではなく日本への訴訟というところがポイントで、日本政府からの要請を受けた日本プロ野球選手会(当時は古田敦也が会長)は独自に参加を表明。なしくずしに参加することになってしまった。
こんな状況のため、まったくやる気の無い日本選手、たいして宣伝もされず大会があることすら知らなかった日本国民という中、2006年3月2日、第一回WBCは始まった。当初から米国のMLBのための大会であることは明白だったため、米国のライバルとして前評判の高かったキューバ、ドミニカ、プエルトリコ、ベネズエラの4カ国は米国と別のブロックに分けられ、米国側はカナダ、南アフリカ、メキシコという最弱の4カ国との組み合わせとなり、ここを勝ち抜いても当時そんなに強く無いと思われていた東アジア4カ国(日本、中国、台湾、韓国)との準決勝となる組み合わせ。しかも米国がたとえ負けても簡単に終わりにならないように準トーナメント方式が取られたため韓国と日本は3度も戦うことになる(第2回大会では韓国と日本は5回も対戦)。
そんな米国偏重の大会であったためやる気の無い日本は韓国に敗戦。ただ、米国のためのルールで強いチームは無理やりでも勝ち残る仕組みになっているため、するすると米国の待つ第2ラウンドに進むことに。第2ラウンドの1組は米国、メキシコ、日本、韓国。2組はキューバ、ドミニカ、プエルトリコ、ベネズエラ。当時日本と韓国、メキシコは当時米国には勝てないと思われていた国であったため明らかにおかしな組み合わせ。さらに審判団が全員米国人という偏重ぶりだった。
事件は米国と日本の対戦時に起こる。意外な強さを発揮する日本に苦戦する米国。8回裏タッチアップで生還し勝ち越しになり、絶対的抑えのエース大塚を有する日本は勝利したかに思われた。しかしまさかのタッチアップ離塁違反でアウト。当時の米国解説陣ですら自国の八百長ぶりに怒り心頭だったほど。最終的に日本はこの試合に敗戦し、大会を終えるかに見えた。しかし、最終試合で米国がメキシコにまさかの敗戦。得失点差で日本が準決勝進出することになった。
「アナハイムの奇跡」と呼ばれたこの事件ではじめて日本人の多くがWBCというものを知ることになり、タッチアップの際の八百長事件に怒ったメキシコが日本を準決勝に送るため米国に勝利したエピソードなども紹介。ここにきて突然WBCは盛り上がることになる。当時出場した選手も、実は米国戦までやる気がいっさい無かったと証言。ただ、この米国の横暴にキレ、ここから団結力が高まったとのこと。そして準決勝で韓国を圧倒、決勝でキューバに勝利し、第一回大会の優勝国の栄冠を得ることになった。
そんな日本人の怒りから始まったWBC。第二回大会も米国偏重は変わらず、今度は前回大会1〜3位の日本、キューバ、韓国を同じグループに入れる。日本は優勝するまでこの大会で9試合を行うが、5試合は韓国との対戦で、決勝も韓国。東アジアが野球強豪地域であることを印象づけた大会となった。
2013年の第三回大会から国際野球連盟の世界選手権となり、参加国が一気に増えて、予備予選から開催。審判団もMLB審判だけでなくNPB審判を参加。公平性が増したことで韓国が第1ラウンドで敗退、米国とキューバが第2ラウンドで敗退するなど強豪国が簡単に勝ち上がることができなくなった。日本も準決勝でプエルトリコに敗れ、ドミニカ共和国が優勝。
WBCが国際大会として承認され、公式なものになると今まで公的な大会だったIBAFワールドカップとIBAFインターコンチネンタルカップの地位が低下。WBCほどの収益も得られずMLBからの資金援助で成り立っていたが、よりWBCに注力したいMLBは資金の引き上げを示唆。これによってプロ以外の野球大会の最高峰としてWBSCプレミア12が誕生。これもWBCの副産物と言えるものだ。
2017年の第四回大会は国際順位によってグループを形成。その結果、韓国、台湾といった強豪国が大会のためだけに強化をはかったイスラエルに敗退。日本はメジャーリーガーの参加がなく、小久保裕紀が監督という微妙な人事もあり過去最弱といわれたメンバーで戦うことに。結果的にグループリーグ全勝、準決勝で米国に敗れるものの健闘したという評価で終わった大会だった。
(続く)
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