【鎌倉殿の13人】2022年12月19日

 昨日「鎌倉殿の13人」が最終回を迎えた。本当に素晴らしいドラマで、最後の1シーンまで面白かった。三谷幸喜らしい大胆な解釈がぴったりとハマったとも思える。「いだてん」を超えることはないが、大河の中でも優良作品の1つとして後世に語り継がれるドラマだと思っている。

 「鎌倉殿の13人」は、歴史が好きな人には認められるだろう。ただ、歴史を勉強している人には拒否されるのではないだろうか。「真田丸」のときもそうだったように、三谷幸喜は正確に解明されていない歴史の1シーンを面白くさせる天才だ。

 有名なシーンでは平知康が井戸に落ちるシーン。実は「吾妻鏡」にこの描写だけが存在する。理由も前後の状況も記されてはいない。ただ、平知康が井戸に落ちるとあるのだ。三谷幸喜はこれを利用し、頼家と全成の出会いにつなげ、この2人が殺されるまでのストーリーに展開している。

 このような歴史の隙間を埋めるシーンが各所にある。そもそも新垣結衣演じる八重自体が途中で消えた人と途中で急に現れた人を無理やり1人の人物に作り上げたキャラクターなのだ。そして彼女と義時の関係は、鎌倉幕府最良の執権であり、明治維新で武士政権が終わる600年間を支える法となった御成敗式目を制定した泰時へとつながっている。

 スターウォーズ的な仕掛けもある。ルーク・スカイウォーカーの衣装が白から灰色、最後は黒になったように、少しずつダークサイドに落ちていく様子を表現。同じように義時も淡い色から始まり、執権になった頃には黒の着物に。年齢は違うが見ているものが似ていると、つい共感を持ってしまう。
 歴史的には親友とされている三浦義村との最後の会話。三谷幸喜の解釈により裏切り続けながらもギリギリで義時を選び、生き延びる鎌倉幕府の有力御家人。ちなみにこのあと、義村は幕府の重鎮として泰時を支え、全盛期を迎えることになる。悪女と言われ歴史的には義時を暗殺した首謀者と言われている伊賀の方(のえ)は義時の死後に反乱を起こし、流罪。ちなみに反乱に加わったのえの父、子、三浦義村らはすべて泰時によって許されることになる。ドラマの通り、泰時はのえだけが嫌いだったのだ。

 そして衝撃のラストシーン。これを考えた人はいるだろうが、実際に作品にしてしまう人がいただろうか。それも天下のNHK、天下の大河ドラマでこれは凄すぎる。もちろん義時を間接的に殺した本人はちょうど1年後に死去。言葉通り後を追ったのである。

 主人公義時の死後を描かず、彼の意識が遠のくそのままの感じで字幕が流れ、終わる感じも良かった。その後の泰時による安定の世、そして元寇によって鎌倉の力が弱まり、新田義貞に滅ぼされる話は蛇足にしか過ぎないのだ。

 もう一度NHKが三谷幸喜に脚本を書かせるなら、ぜひ「太平記(南北朝時代)」をやってほしい。彼の描く楠木正成や佐々木道誉が見てみたいものだ。

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