一番最初の記憶

あれは5歳だったか。
実家のすぐ脇にはどぶ川とはいかないにしても小さな川が流れている。海まで1キロもない。時に大量のボラで埋め尽くされる。鯉やら亀やらカニやら。巨大なサギがたまに降り立っている。
しばらく私は東京というか埼玉暮らしをしていて、転職を機に20年振りに地元に帰ってきた。帰ってきて早々に見たこの川で遊ぶサギの巨大さに妙な生々しさを感じた。
その実家の脇の川を挟んで木が鬱蒼と茂る神社があった。そうかその隣には鉄塔があったな。子供のころは全く意識していなかったが覚えている。鉄塔の周りに柵が巡り張らされており、そのコーナーを曲がって団地へ続く坂道のはじまり。それが私の一番最初の記憶の場所である。5歳だったか。
大好きだった真っ赤なスポーツカー。子供が一人乗れて足で漕いで前に進むあれ。そのお気に入りの真っ赤なスポーツカーと何故か泣いている私。そこで何をしていたんだろう。なぜ泣いていたのだろう。それが私の一番最初の記憶。
燃え殻という作家の「すべて忘れてしまうから」という作品を読んだ。
久しぶりに本を読んで声を出して笑った。といってコメディではない。プスッとくるものがワハッと一瞬表に漏れてしまう。作品はエッセイ形式でありほとんどが過去を掘り返しているのだが、こんなにも手作業でにおい立たせて曖昧さをもたせながらすごく情景や人物が目の前に浮かばせることができる文章を書くのはすごい。というか好きだ。作者燃え殻さんは自分より少しだけ年上なのだろうか。自分のいわゆる青春時代にはまった音楽やできごとが作品中にちょくちょく登場し、しょっぱい思いがリアルに蘇る。自分の嫁にも本当は読んでもらいたいが、薦めるのは恥ずかしい。勝手に好きになってくれないかな。この好きを嫁と共有したい。気持ち悪いか...。
そういえば昨日、毎日何かを書いていこうと決めた。過去の記憶を毎日掘り返して書くだけでもペンはつながりそうだ。はじまりには終わりがあるけれど。続ければいい。死ぬまで。
いつか東京というか埼玉暮らしの記憶についても書いてみたい。
3時間前にワラーチで12キロ走った。寒いけど足にダイレクトにくる感じがたまらなく好きだ。また明日の夕方には足の裏が求めてくるだろう。俺を走らせろ。ダイレクトに感じさせてくれと。そこまでお前が求めるなら俺は行くよ。知らんけど。


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