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何に使う?どう使う?「生成AI」活用に向けた“東京都の今”

シン・トセイでは、最新のデジタルツールを積極的に活用し、業務の効率化や都民サービスを向上させていくことを目指しています。現在、国や地方自治体の中でもChatGPTをはじめとした「生成AI」の活用が話題となっています。
東京都でも、生成AIの「ガイドライン策定」「全局での活用」を8月に行うことを公表したところ、「どのような内容か」「どんなツールを活用するのか」「参考にしたい」等々、様々な問い合わせをいただきました。
そこで今回は、生成AIの活用を検討されている自治体や企業の方々など、広く多くの方々に8月の全局活用開始に向けた“東京都の今”をご紹介します!


プロジェクトチームの立ち上げ

2023年4月、生成AIが日々話題になる中、デジタルサービス局内で部署横断の検討プロジェクトチーム(PT)を立ち上げました。
PTのメンバーは、AIに詳しいデジタル人材、企画部署、セキュリティ部署等、さまざまなスキルや専門分野を持つ計10名程度で構成されています。

都庁職員全員が、ChatGPTなどの生成AIをうまく業務に活用できれば、都庁の生産性はさらに大きく変わっていくはずです。都民サービスの向上に向けてどうすれば安全かつ効率的にAIを活用できるのか、検討を進めています。

PTで大切にしている「3つの視点」

このPTでは、以下の3つの視点から生成AI活用の検討を進めています。

1:業務の生産性向上
アイデアソンや先行導入によるアイデア・ノウハウの共有により、行政分野における生成AI活用の好事例を収集し、ガイドラインに反映します
2:情報漏えい等の懸念への対処
機密情報の漏洩や著作権侵害等、さまざまなリスクを踏まえ、機密性情報の取扱いなどを示した利用ルールを策定します
3:職員誰もが活用できる環境の整備
庁内の利用状況、他自治体・民間企業等の導入状況等も踏まえ、すべての職員が業務に生成AIを活用できる環境を整備します

生成AIの利用環境をどうやって整備する?

問い合わせが最も多かったのが「職員の利用環境をどのように整備するのか」という点でした。
東京都でははじめ、無償の対話型AIサービスの利用を検討しましたが、質問内容がAIの学習データとして使われるなどの懸念点があり、別の方法を検討しました。
そこで、民間事業者やITベンダー等と意見交換を重ねながら検討を行い、質問内容や回答がサーバ側に保存されない措置(optout申請)を取ったうえでChatGPT(GPT-3.5)を使用することにしました。
併せて、最小限のコストで早期に生成AIの利用環境を提供するために、職員がノーコード開発ツールを活用してユーザーインターフェースを開発し、6月中旬からデジタルサービス局の職員を対象に先行利用を開始しました。

職員が構築した入力画面

生成AI活用にあたっては、使い方や順守すべき事項をまとめたe-ラーニング(解説・動画)を職員が作成し、全員に受講を義務付けています。
デジタルサービス局内での利用状況を踏まえ、今後の全局展開に向けた準備を進めています。

"オープン&フラット"にアイデアソンを実施しました!

4月27日に実施した初回に続き、6月27日には、デジタルサービス局職員が集まり、職層を超えて実際に生成AIを利用した2回目となるアイデアソン(アイデアを出し合うイベント)を行いました。1週間の生成AI先行利用の中で200件近い活用事例が集まり、「どういう業務に使えるか?」という観点で事例やアイデアを共有しました。

アイデアソン当日の様子:多くの職員にご参加いただきました

アイデアソンではまず4つの班に分かれ、それぞれデジタルの知見を持った民間企業出身のデジタル人材がファシリテーターを務めました。各班で活発にディスカッションを行いました。

アイデアソンをやってみて気づいたこと

デジタルサービス局には民間企業でデジタル業務に携わった方も多く、生成AIに関するニュースが日々グループチャットに投稿されるなど、最新技術に関心のある職員から出た活用事例は様々でした。
この活用事例をもとに、アイデアソンで議論した職員の声を一部ご紹介します。

GOOD(^^)
「アイデア出しやベストプラクティスを調べるのに使えそう」
新規ホームページのキャッチコピー案を依頼したところ、様々な表現で複数の回答が得られ、さらに”特定の文字を使わない”等の追加条件にも対応してくれたので、対話を重ねてアイデアをブラッシュアップすることができた​
「公務員的な意見だけではなく、新しい観点がもらえる」
研修受講率を上げる取組について質問したところ、内容や開催時間、場所などの一般的な工夫に加えて、「ポイント制度の導入」など担当では思いつかないようなアイデアが出てきた​
「Excelの関数やVBAマクロ、プログラムなどを簡単に作成できる」
単純作業を自動化するExcelのマクロについて質問したところ、具体的な作業を文章として打ち込めば、機能する内容の回答が得られたほか、実際にマクロを試しながら思いついた機能の追加にも対応できた​

BAD(-_-;)
「根拠・説明が求められるような仕事にはつかえなそう」
「最終的には人間のチェックが必要」
「AIはたまに間違える。間違いを見抜ける仕組みづくりが必要」

今後も、GOODな例をさらに増やし、BADの例を共有しながら、職員のリテラシー向上につなげていきます。

また、今回のアイデアソンで特に話題になったのが「プロンプト」の重要性です。

プロンプトの重要性

「プロンプト」とは、生成AIへの質問や指示のことです。

たとえば、「リンゴはどんな果物か教えてください」というプロンプトを入力すると、以下のような回答がありました。

"リンゴは、丸くて赤や緑色をした果物で、甘くて酸味があります。皮は薄く、果肉はジューシーで食べやすいです。"

ここで、プロンプトを「私はパティシエです。リンゴはどんな果物か教えてください」とすると、以下のように回答が変わりました。

"リンゴは、パイやタルト、ケーキなどのスイーツに欠かせない果物で、甘くて酸味があり、風味豊かです。"

このように、尋ね方を変えることで様々な回答を引き出すことができますが、反対に言うと、正しい聞き方をしなければ求めている回答が得られない可能性があります。質問者に役割を設定したり、シチュエーションを限定したりするなど、プロンプトを工夫することも重要なスキルとなります。

実際、アイデアソンの中でも、「プロンプトの書き方によって返ってくる回答が大きく異なる」「プロンプトの都庁版テンプレがあるといい」というような意見がありました。​

このプロンプトの書き方や事例も、今後ガイドラインを策定するにあたって大きな観点となりそうです。
今回のアイデアソンで生まれた「気づき」も、今後のガイドライン策定に生かしていきます。

生成AI VS 都庁採用試験

突然ですが、都庁職員採用ページで公開されている試験問題(令和5年度Ⅰ類事務A教養)40問のうち、図表やグラフを読み解く問題等を除く22問を現在使用している生成AIに入力してみました!

結果は・・・

試験結果

22問中正解は7問、正答率は32%!・・・おやおや?
あくまでも一担当としての推測ですが、この試験結果から以下のような特徴が考えられます。

・文章のつながりを類推して文章を生成するため数的推理は苦手?​
・事実関係をはっきり特定する検索的な使用には向かないので、それ以外の用途の模索が必要?​
・プロンプトを工夫すれば、正答率は向上の余地あり?

ちなみに、今回使用している生成AIの学習データは2021年までと言われていましたが、直近の時事問題も一部正解していました。
今後さらに検証を進め、生成AIについて理解を深めていきたいと思います!

ガイドラインを策定中です

こうした試行錯誤を重ねながら、その成果をまとめたガイドラインを8月までに策定します。職員が安全かつ効果的に生成AIを活用できるよう、利用上のルールに加え、業務で活用できるプロンプト事例なども盛り込み、有識者からのヒアリングなどを通じて充実を図っていきます。

最後にこの記事をAIで要約してみました

ここまでの内容を生成AIに以下のプロンプトで要約してもらいました。
「私は東京都の職員です。都民の方に向けて伝わるように文章を100字以内で要約してください」
その結果・・・

東京都では、最新のデジタルツールを活用し、業務の効率化や都民サービスの向上を目指しています。生成AIの活用に向けて、8月に「ガイドライン策定」「全局での活用」を行う予定です。生成AIの利用環境を整備するため、職員がノーコード開発ツールを活用してユーザーインターフェースを開発し、e-ラーニングで利用方法を学ぶことができます。プロンプトの重要性についても言及され、今後のガイドライン策定に生かされる予定です。
(200字)

200字・・・「100字以内」という指示は完全に無視されてしまいましたが、めげずにプロンプトスキルを磨いていきます!

道半ばではありますが、今回の情報発信により、少しでも生成AI活用を考えている自治体や企業などのみなさまのご参考になれば幸いです!

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