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都の財政データをビジュアル化!若き職員の思い

都は、2021年1月29日に「令和3年度予算案」を発表しましたが、同日に都の財政データをダッシュボードで公開しています。

本ツールは、マイクロソフトの「Power BI」を使用し、「予算案」「普通会計決算」「普通会計財務諸表」に関するデータをビジュアル化しています。各項目をクリックすることで、知りたい情報に簡単にアクセスでき、過去データとの比較を視覚的に行うことも可能です。

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今回は、このダッシュボード作成の中心人物である若きリーダー、財務局主計部財政課主任の堤 佑城(ゆうき)さんにオンラインインタビューを敢行。デジタル化に取り組む経緯や反響などを伺いました。

コロナ禍で都財政への関心が高まる

——まずは、堤さんのキャリアと、主な業務内容を教えてください。

2013年度に東京都に入庁し主税局に配属され、その後2018年度に財務局に異動となりました。

現在は、従来の発想に捉われない新たな視点などを活用し都政の喫緊の課題解決を図る「都民・職員・大学研究者による事業提案制度」や、東京の未来を創るアイデア募集を主に担当しています。また、議会対応に向けた資料作成なども私の業務です。

堤さん

※撮影時のみマスクを外しています

——これまでの仕事の中で、特に苦労したことは何ですか。

財務局に配属されてから1年間、財政広報を担当しました。東京都の財政に関する情報を広く、わかりやすくお伝えする立場であるため、都民の方々からの電話対応も担当していました。専門的な内容の問い合わせも多くて苦労しましたが、都度、勉強しては財政の知識を深めていきました。

また、この年は、政府で東京都など大都市の税財源を地方に再配分する新たな税制度の見直しが検討されていました。都民からの関心も高く、この対応にも追われる日々でした。けれども、こうした経験が都民のニーズを知るうえで大変役に立ったと思います。

財政情報をもっとわかりやすく!

——ダッシュボードを作成の背景を教えてください

財政広報として都財政に関する様々な問い合わせに対応してきた経験から、どうしたら都民の方々に分かりやすく情報をお届けできるかという点に問題意識を持ち、解決策を模索してきました。

これまでも東京都では、財政をわかりやすく伝えるという観点から、予算の発表時には、「東京都予算案の概要」という約150ページの冊子や、「東京都予算案まるわかりブック」というポケットサイズの冊子を作成し、そのPDFデータをホームページにアップロードしています。しかしながら、都の財政は気になるけれども、冊子をダウンロードして見るほどでもないという都民は多かったはずです。

また、媒体の特性上、そこにある図表やグラフのデータは画像として掲載されているだけです。興味を持ってもらえる人を増やすには、データを動的にするなど、財政情報をもっとわかりやすく、利便性の高い形で公開する必要があると感じていました。

そんな中、コロナ禍において、東京都の財政に注目が集まってきていました。都全体としてデジタルを活用した都政の構造改革の推進といった動きもあり、局内で「都財政のダッシュボード」をつくってみよう、という機運が高まりました。

予算編成業務が本格化する昨年10月初頭、ビジネス現場でもよく利用されているBIツールの1つであるPower BIを導入し、1カ月ほどでプロトタイプを作りました。幹部に見せたところ、いい取り組みだと好評だったため、中身をブラッシュアップし、予算案発表の1月29日に公開しました。

慣れれば簡単

——ダッシュボードは、堤さん一人で開発したのですか?

いえ。最初にPower BIを使い始めたのは私ですが、他のメンバーにも協力してもらいました。「TOKYO予算見える化ボード」は私と課長代理の2人で作り、「普通会計決算」「普通会計財務諸表」のダッシュボードは、それぞれ財政課の別の担当者が作りました。予算見える化ボードのチームが中心となってツールの機能などを試し、それを他のチームに共有していきました。

BIツールを使うのは初めてだったため、インターネットで調べたり、市販の参考書を読んだりして、試行錯誤しながら開発を進めていきました。ツールを触り始めたころは、一つの機能を実装するのに時間がかかってしまいましたが、徐々に慣れました。グラフデータのインプットも、既存のExcelデータをうまく活用すれば、そこまで大変ではありませんでした。

——開発で工夫した点は?

基本的にシンプルな画面レイアウトとし、知りたい情報があれば、ユーザー自身の操作で動的に深掘りできる形にしました。

ダッシュボードといっても、一般の人たちには馴染みが薄いかもしれません。そこでダッシュボードの概要や機能を紹介する30秒の動画を作り、受け入れてもらえるような工夫もしました。

要望を受けてすぐに改善

——公表後の反響はいかがですか?

想像していたよりも好意的に受け止めていただき、SNSで言及されたり、他の自治体からも連絡が来たりしています。今まで財政情報にアプローチしなかった人たちに訴求することを目標にしていたため、反応を見る限り、少しは達成できたのかなと思います。

一方で、「もうちょっとこの機能がほしい」といった要望もいただいており、まだまだ改善の余地はあります。すでに着手をしていて、例えば、当初はダッシュボードに関するご意見をメールで募集していましたが、メールは心理的ハードルが高いという声もあり、ダッシュボード内からアンケートフォームに遷移できるボタンを実装しました。

今後は、スマートフォンに最適化されたページの構築など、近々にアップデートできるよう修正をかけているところです。アジャイルに開発と改善を進めていき、都民がより使いやすいサービスにしていきたいです。

——BIツールを使って、財政データを公表している自治体は珍しいのでしょうか?

新潟県柏崎市がBIツールを活用して「デジタル予算書」というものを作っていて、今年2月に公開されています。現状、財政情報をデジタル化している自治体はほとんどないと思います。

ただし、やってみればわかるのですが、それほど難しいことはありません。まずはBIツールに触れてみて、自分たちのデータとの親和性を探ることから始めてみてはどうかと、全国自治体の財務担当者にお伝えしたいです。

——都政の構造改革を図るべく、都を挙げてデジタル化を推進していますが、財務局の中でも機運は高まっていますか?

財務局としても、このデジタル化の波に乗り、できるところから進めていこうという雰囲気があります。今回のダッシュボードの取り組みもその現れです。

私自身も、他局からデジタル化に関する相談をいただく機会が増えました。自分の知識をどんどん都庁内に還元して、東京都全体のデジタル改革に貢献できればと思います。

——ありがとうございました。

今回ご紹介した「都財政の見える化プロジェクト」は、「シン・トセイ」戦略(案)における各局リーディング・プロジェクトの1つです。他にも、各局が様々な取組を展開しておりますので、ぜひそちらもご確認ください!

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