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品確法の計算 VS 許容応力度計算

「品確法の計算」と「許容応力度計算」について
一部SNSで話題になっていたので、ここについて考えてみます

まず、計算内容について
【壁量のチェック】
品確法に比べ、許容応力度計算はかなり詳細な部分まで踏み込んで設計します
品確法で検討せず、許容応力度計算で検討する項目は以下の通り
●許容応力度計算の設計内容
①固定荷重による地震力算出
②剛性を考慮した設計
③梁上耐力壁設計
④偏心率によるねじれ補正考慮
⑤剛性比による水平力分配

①は設定が甘いと品確法より耐震性能が低下する可能性あり
②は勾配天井、桁下げなど同一階で耐力壁高さが違う場合に考慮が必要
③2階耐力壁を、2階床梁のみで支えている場合の設計
④偏心率が0.15を超える場合、壁量を割ります設計
⑤上記②の場合に、通りごとの分担水平力を剛性比で分配

勾配天井や、桁下げなどがある場合は、品確法では詳細な壁量検討ができないため、許容応力度計算がおススメです

【壁の配置のチェック】
●品確法の計算
①四分割法で検討
②偏心率で検討も可能(簡易な偏心率) 
*断面一次モーメントによる簡易法が一般的
③太陽光パネルの偏荷重設計は不可
*簡易な検証が必要

●許容応力度計算
①四分割法はNG
②偏心率で検討(詳細な偏心率)
*柱軸力により算出するため、正確な軸力が算出できる
③太陽光パネルの偏荷重設計可能
*設計者が正しく計算ソフトを入力する必要あり

【柱】
●品確法の計算
①令43条の横架材間垂直距離による柱の小径のみ

●許容応力度計算
①柱軸力による座屈の検討

【横架材、基礎】
●品確法の計算
①スパン表の使用可能
*前提条件が超重要

●許容応力度計算
①許容応力度計算による詳細検討

他、水平構面、接合部などなど検討項目の違いは多々あります

計算内容に違いも重要なのですが、
それ以上に大切なことは、間取り作成のスタンスです

どうも、大きく勘違いされているのと思うことは
・構造計画された整った間取りは、品確法の計算でOK
・自由設計の無茶な間取りは、許容応力度計算でOK
こんな感じです

そもそも、許容応力度計算は、自由設計の無茶な間取りを
力業で何とかする設計方法ではありません
許容応力度計算であっても、
構造計画された整った間取りが基本中の基本です!
そこは勘違いしないようにしてほしいところです

ここからが、
最も皆さんが答えを求めているところだと思います
そもそも、品確法の計算と、許容応力度計算、
どっちがおススメ?

忖度なしで答えます

答えは簡単、「許容応力度計算」です
ポジショントークでもなんでもなく、
計算内容の詳細を知り尽くした結果から言えば
どう考えても、許容応力度計算です

しかし、品確法の計算を否定しているわけではありません
どちらかの選択を迫られた場合の答えは
許容応力度計算ということです

しかし、
許容応力度計算でも、固定荷重の設定が不足している、
力業、その他、オペレーター作業としての計算は
まともな品確法の計算よりも、劣る結果になります

あくまでも、
正しい知識を持った構造設計者の計算の場合だと思ってください

そこで、品確法の計算を行う場合の前提条件をお伝えします
以下の条件が整うのであれば、品確法の計算でも
かなり精度の高い計算結果になります
・構造計画ルールによる整った間取り
・下屋がある場合は、屋根仕上げ、屋根勾配を2階屋根と同等にする
*壁量計算の問題ではなく、断面一次モーメントによる
 重心算出に影響が出るため
・勾配天井、桁下がりを避ける、もし同一階で耐力壁の高さが
 違う場合は、剛性を考慮した簡易検討を行う
・梁上耐力壁はなしとする
・太陽光パネルの偏荷重による偏心率の検討ができないため、
 屋根を重めで設定し、偏心率0.2以下を目指す
・横架材、基礎はスパン表を使わず、許容応力度計算する

こんな感じです

最後に、
品確法の計算と許容応力度計算の入力手間、配慮する設計などを考えると、許容応力度計算の方が設計のスピードは早くなります

許容応力度計算の方が遅く感じるのは、
計算内容が把握でいていないことによる、
感覚的な計算NG解消のように感じます

計算内容を把握してしまえば、
許容応力度計算の計算NG解消は、あっという間です
ぜひ、構造計算ソフトのオペレーターから構造設計者を
目指してください!

構造計算ソフト会社のサポートは、
構造計算を教えてくれる場所ではありません
構造計算ソフトの「操作」を教えてくれる場所です
そこを間違わないようにしてください

かなり長文になりましたが、
この内容は、
本日(5/29)の「構造塾」ライブ配信で解説します
そして、そのうちYouTubeでも動画をアップします

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