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はじめて借りたあの部屋

東京に来てから都内の引越しは三回したが、一番印象深いのははじめて借りたあの部屋だ。

品川区にある一軒家の二階の三部屋の中の四畳の畳部屋だ。その部屋には台所があって、トイレは三部屋共用のしかなかった。
一階は優しい大家さんのお爺さんが住んでよかったものの、いらないものを家に持ち帰って集めるのが趣味のようだった。

そのせいなのか、一階も二階もネズミとゴキブリが溢れて、彼らが見えない日はなかった。
あまりにも多かったので、大家さんへの被害がどうなってるか分からなかったが私たち二階の三部屋の住民はよく服とか食べ物とかがネズミたちにやられた。

例えば、いつの間に服の穴ができたり、変な匂いが付けられたり、食べ物が無くなったりしてた。

それでも光熱費含めて一ヶ月の家賃はただ二万五千円だったし、駅にも近いので貧乏学生の私には凄く魅力的なので、一年も住み続けた。

ネズミとゴキブリ対策さえすれば何の問題もなかったが、何回も夜中にネズミたちに起こされて気分が悪かった記憶がまだ残ってる。

対策といっても食事をコンビニと牛丼屋に任せて、お菓子などの食べ物を冷蔵庫に、服をスーツケースに、布団は使わない時に丸めてデカイカバーに、という感じだった。

私以外他の二部屋も学生だったので、休みの日にみんな一緒に何かを作って食べたりしてて、それは楽しかった。

こんな部屋に住んでて良い事もう一つがあって、ネズミとゴキブリとの今風言うとシェアハウスの感覚で一年で一緒に暮らした訳で、今どこにいてもネズミかゴキブリをみても驚かない。

その後他のところに引越したが、はじめて借りたあの部屋どうしても忘れられなくて、10ぶりにいって見たらその一軒家も消えてその大家さんもいなくなって、新しいビルに変わった。

大家さんが平穏に暮らせるようにと願ってその場所を離れた。

#はじめて借りたあの部屋





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