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短編小説Only

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普段は長編小説を書いていますが、気分転換に短編も書いています。でも、この頻度は気分転換の枠を超えている。 短編小説の数が多くなってきたので、シリーズ化している(別のマガジンに入っ…
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#聖夜に起こる不思議な話

【短編小説】「お届け物です。」 ♯アドベントカレンダー ♯聖夜に起こる不思議な話

「お届け物です。」 玄関ドアを開けた私の目に飛び込んできたのは、大きな段ボール箱を抱えた宅配便の人の姿だった。 「住所、氏名、あっていますか?」 私に向けて、宅配伝票を見せて、相手は問う。 その伝票に視線を走らせると、確かに私の住所、氏名が記載されていた。 問題は、ご依頼主のところにも、『同上』と書かれていて、しかも、品名のところには、『肉』と書かれている。 段ボール箱自体は、私がよく使っている通販のものだ。クリスマスが近いせいか、張られている紙テープが赤くて、クリスマス

【短編小説】White Sweater 後編 ♯アドベントカレンダー ♯聖夜に起こる不思議な話

White Sweater 後編優子は川沿いの土手の上に、腰を下ろしていた。空には柔らかい光で地上を照らしている月や星がある。眠りに包まれた住宅街。完璧な静寂がここにある。 優子は手に持っていたセーターを抱きしめた。 もし、彼が今、このセーターを手に取って、着てくれたら、一体何と言っただろうか?案外、1年も経ったら、体が大きくなっていて、もうこのセーターが小さくなっていたりして。 サイズを調べるのに、青人のお母さんにも協力してもらったのにな。 彼を送る時に、着せかけてあげれ

【短編小説】ポインセチア ♯アドベントカレンダー ♯聖夜に起こる不思議な話

新宿南口の改札近くで、人待ちをしていた。 相変わらず人が多い。 そして、皆、進行方向か、自分の手元のスマホか、誰かと一緒であれば、その誰かの顔を、見つめている。 スマホを見ていて、よくこの人並みの中、進めるな。 私は改札近くの花屋の隣で、目の前の人波や、花屋に置かれた花を眺めていた。間もなくクリスマスを迎えるからなのか、数多くのポインセチアの鉢が床に並べられている。 クリスマスというと、ポインセチア。 きっと、その赤い部分が、クリスマスっぽいからなのか?赤と緑の取り合わせな

【短編小説】White Sweater 前編 ♯アドベントカレンダー ♯聖夜に起こる不思議な話

White Sweater 前編冷たい風が肌に突き刺すように感じられる。 今、高校1年生の二学期が終わり、周りの生徒達はこれからやって来るクリスマス、冬休み、お正月等に思いを馳せ、しばらく会うことのできない友達に、しばしの別れを告げる。そんな中、都中優子は一人浮かない顔で川沿いの道を歩いていた。 クリスマスが・・やって来る。 『優ちゃん。25日、パーティーやるけど・・もしよかったら来てね。』 友達の亜美が戸惑いながらも言った言葉。彼女は中学も一緒だったから、一年前のクリス

【短編小説】永遠の親友(再掲) ♯アドベントカレンダー ♯聖夜に起こる不思議な話

永遠の親友No.1 「クリス。クリス。遊ぼう。」 自分を呼ぶ声がして、クリス、クリストファーは皿洗いをする手を止めた。 「ファー?ちょっと待ってて、母さんから皿洗い頼まれちゃって。」 「皿洗い?」 勝手口から入ったのか、ファー、ファートリアンが台所に姿を現す。黒い髪に深緑色の瞳を持つ少年は、クリスの姿を見ると、大変そうだね。と呟いた。 「水、冷たいだろう?手伝おうか。」 「大丈夫。すぐ終わらせるから。いつものところで待ってて。」 金色の髪と青い瞳を持つクリスは、ファーを見