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特殊設定恋愛小説

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「特殊設定」を取り入れた恋愛小説。 少し不思議な恋愛小説をまとめてみました。
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2024年2月の記事一覧

【短編小説】期間限定の恋人

「それ、本気で言ってる?」 女の言葉に、男は肩をすくめる。 「嘘みたいな話だけど、本当だし、本心から言ってる。」 女は口を噤んで、考え込む仕草を見せた。 「無理に、とは言わない。」 「・・でも、このまま断ったら、私はあと3ヶ月、ずっと気になってしまうし、張元くんが嘘を言うとも思えないんだよね。」 女は、はぁっと深く息を吐く。張元と呼ばれた男は、その様子を見て、心配そうに「すまない。」と口にした。 「・・私が断ったら、他に頼めそうな人のところに行くの?」 「いや

【短編小説】Written Invitation 招待状

私達の結婚生活は、25年を迎えた。 大切に育てた子どもたちも、成人し自分たちの世界に旅立っていった。 寂しくなった2人だけの生活は、それでも穏やかに過ぎさっていく。 何も問題はない。 たぶん、これが幸せというものだろう。 私達の間には、もう情というものしかなく、恋愛のような甘ったるい空気は少しも流れていない。 お互いを見つめる目に映るのは、無関心ではないが、特別な感情は滲まない。 ただ、時々、自分たちはなぜ一緒にいるのかと、考えることがある。 仕事から帰ってきたら、ダ