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森崎今日子という小動物のような

時として人の顔が柴犬だったりプレーリードッグだったり、カワウソだったりに見える私ですが、森崎今日子という人物はまさしく小動物のような愛らしい笑顔が似合う人です。

今日子は12月公演で岡田花梨さん(空チーム)と若松愛里さん(海チーム)の二人が演じる役の名前です。

学生チームと言われる3人だけの稽古が続く彼女。もしかしたら会ったことがない出演者も居るのではないか。そんなことはないか。。

コメディパートの中で最初から異彩を放っていた二人。経験から出てくるのか、戯曲の読みを正しく行っているからなのか、抽斗の中にあるものがどんどん出てくるし、見ていて飽きない。

愛らしい笑顔に反して誰かが言った言葉「残念なバカ」。誰が言ったんだか。しかし、的は射ている気がしている。いい意味で。別にけなしたいわけじゃない。ただただ、見ていて面白い、一瞬たりともその表情、一挙手一投足を見逃したくない。だって、その瞬間にいろんな事、色んな表情をしているから。これから観劇をされる人には是非今日子を見てほしい。いや、別に私はどっかの回し者とかじゃないんだ。

つまりここで言いたいことは、どれだけこのキャラが愛らしいのかということに尽きる。書いていて一番筆がのったかは覚えていないけれど、ああいう計算なのか天然なのかはさておき、そういうキャラを描いている時間はとても好きだ。

しかしこの今日子という人間は定めし辛い日々を送ったに違いない。なぜなら3バカトリオの一人でもある親友(照井由美)が死に、その辛さから逃げた親友(戸川瑛美)は行方知れず。一人だ。残されて。現実は、日常は、彼女の心には優しくなかったんではないだろうか。辛かったのは決して瑛美だけじゃない。

これは描かれないけれども、残された彼女は瑛美を、行方不明となった友を探しに探した。そうしてようやく見つけたと思ったら、研究所で被験者として自らの命を、体を提供し、施設の外に出ることも許されない環境に身を置いていた。会いたい、会おうよ、そんな手紙を今日子は何通も何十通も送ったことだろう。その全てに対して瑛美は目を通しただろう。そのたびに同じ言葉を返したはずだ。ごめん、ごめん、ごめん、、

ごめんじゃないよ、と今日子は思っただろうか。悔しく思っただろうか、怒りをぶちまけただろうか。それでも今日子は瑛美を嫌いにはならない。それが今日子という優しい、そして忍耐力のある女の子なのだ。

だから、彼女が微笑んでいる姿を見ると、どうしても胸が痛む、切なくなる。それがどんなに陰が一ミリもないとびっきりの笑顔だったとしても。

もしも由美が生きていたら、瑛美が傍にいたら、私の人生はもっと楽しかったよ、そう彼女の言葉が聞こえてくるようだ。

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