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3 - 殘菊詩(2/2)

菅家文草(菅原道真)

「殘菊の詩」

低迷馮砌脚
倒亞映欄頭
霧掩紗燈點
風披匣麝浮
蝶栖猶得夜
蜂採不知秋
已謝陶家酒
將隨酈水流
愛看寒晷急
秉燭豈春遊


低(た)れ迷(まど)ひては 砌(みぎり)の脚に馮(よ)る

倒れ亞(た)れては 欄(おばしま)の頭(ほとり)に映る

霧(きり)掩(おほ)いて 紗燈(さとう)點(てむ)ず

風(かぜ)披(ひら)きて 匣麝(かふじや)浮(うか)ぶ

蝶(てふ)は栖(す)みて なほし夜を得たり

蜂は採(と)りて 秋を知らず

已(すで)に陶家(たうか)の酒を謝(しや)せり

將(まさ)に酈水(てきすい)の流れに隨(したが)はむ

愛(いつくし)みて看(み)る 寒晷(かんき)急(すみやか)なるときに

燭(しよく)を秉(と)る 豈(あ)に春の遊びのみならむや


「(菊は)垂れて迷うようにして、みぎりの石によりかかっている。倒れて垂れては、欄干のあたりに見えている」(1-2)

「霧に覆われたあんどんに灯がともっているようだ。風によって開かれた箱から、麝香(じゃこう)の香りが漂ってくるようだ」(3-4)

「蝶は菊をすみかにして、夜を過ごしている。蜂は(菊の)蜜を取って、秋が過ぎたことがわかっていない」(5-6)

「すでに陶淵明の(重陽の)酒の時期も過ぎてしまった。酈水(てきすい)の流れに従うことにしよう(=長寿の比喩)」(7-8)

「日が早く落ちてあわただしい冬の日陰でいつくしみながら菊を見る。灯をとって夜に花を見ることは、春のみの遊びであろうか」(9-10)

晷:ひかげ。音は「キ」。


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