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4 - 賦得赤虹篇(1/2)

菅家文草(菅原道真)

「赤虹の篇を賦し得たり」

陰陽燮理自多功
氣象裁成望赤虹
擧眼悠悠宜雨後
迴頭眇眇在天東
炎凉有序知盈縮
表裏無私弁始終
十月取時仙雪絳
三春見處夭桃紅
雪衢暴錦星辰織
鳥路成橋造化工

陰陽 燮(やはら)ぎ理(をさま)りて 自らに功多し

氣象(きしやう) 裁(つく)り成して 赤虹(せきこう)を望む

眼(まなこ)を擧(あ)ぐれば 悠悠(いういう)として雨の後(のち)に宜(よろ)し

頭(かむべ)を迴(めぐら)せば 眇眇(べうべう)として 天(てん)の東(ひむがし)に在り

炎凉(えむりやう) 序(つきて)有り 盈縮(えいしゆく)を知る

表裏(へうり) 私(わたくし)なし 始終(しじゆう)を弁(わきま)ふ

十月(しふぐゑつ) 取る時に 仙雪(せんせつ)絳(あか)し

三春(さむしゆん) 見る處(ところ) 夭桃(えうたう)紅(くれなゐ)なり

雪衢(せつく) 錦(にしき)を暴(さら)して 星辰(せいしん)織(お)る

鳥路(てうろ) 橋を成して 造化(ざうくわ)工(たくみ)なり


「陰陽がやわらいでおちつくと、自然とよいことが多くおこる。気象がとりなし、赤い虹を望むことができる」(1-2)

「目をあげれば、雨のあと、はるかに虹がかかる姿が素晴らしい。振り返れば、はるか東の空に虹が見える」(3-4)

「暑さ寒さには秩序があるが、伸び縮みもある。天候の表裏には私心はなく、始終をわきまえている」(5-6)

「十月に虹を見るときには、赤い仙雪が降るだろう。春に虹を見るときには、桃の花はあでやかな紅色であろう」(7-8)

「雪が降る巷に錦をさらせば、星がちりばめられた織物ができる。鳥が行く空の道には、造物神が作ったような見事な橋がかかる」(9-10)

燮理(ショウリ):調和させること
眇眇(ビョウビョウ):はるかなさま

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