4 - 賦得赤虹篇(2/2)
菅家文草(菅原道真)
「赤虹の篇を賦し得たり」
千丈綵幢穿水底
一條朱旆掛空中
初疑碧落留飛電
漸談炎洲颺暴風
遠影嬋娟猶火劍
輕形曲橈便彤弓
如今尚是樞星散
宿昔何令貫日怱
問著先爲黃玉寶
刻文當使孔丘通
千丈(せんじやう)の綵幢(さいたう) 水底(すいてい)を穿(うが)ち
一條(いつでう)の朱旆(しゆはい) 空中(くうちう)に掛(かか)る
初めは疑ふ 碧落(へきらく)に飛電(ひでん)を留むるかと
漸(やうや)くに談(かた)らふ 炎洲(えむしう)に暴風を颺(あ)ぐるかと
遠き影は嬋娟(せんけん)としてなほし火劍(くわけむ)のごとし
輕(かろ)き形は曲橈(くゐよくだう)にして便(すなは)ち彤弓(とうきゆう)なせり
如今(いま) なほし是(ここ)に樞星(すうせい)散ず
宿昔(むかし) 何ぞ日を貫きて怱(いそ)がしめけむや
問著(と)ふらくは 先づ黃玉(くわうぎよく)の寶(たから)となりて
刻文(こくもん) 孔丘(こうきう)をして通(つう)ぜしむべかりしことを
「彩りゆたかな千丈の旗が水底を照らし、ひとすじの赤い旗が空中にはためいている」(1-2)
「最初は青空に稲光がとどまっているのかと疑った。そのうち炎洲に暴風が発生したのではないかと語られるようになった」(3-4)
「遠くに見える姿はあでやかで、しかも炎の剣のようだ。かろやかな形はしなやかに曲がった赤い弓のようだ」(5-6)
「いまここで枢星がちりぢりになった。なぜむかし、太陽を貫こうと急いだのか」(7-8)
「問うべきは、まず黄玉の宝となって、文字を刻み、孔子に理解させようとしたことである」(9-10)
颺(ヨウ/あ(がる))
嬋娟(センケン):あでやかなさま
樞星(スウセイ):北斗七星のひとつ
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