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3 - 殘菊詩(1/2)

菅家文草(菅原道真)

「殘菊の詩」

十月玄英至 
三分歲候休 
暮陰芳草歇 
殘色菊花周 
爲是開時晚 
當因發處稠 
染紅衰葉病 
辭紫老莖惆 
露洗香難盡 
霜濃艶尚幽 

十月(しふぐゑつ) 玄英(ぐゑんえい) 至る

三分(さむぶん) 歲候(せいこう) 休(きう)す

暮陰(ぼいむ) 芳草(はうさう) 歇(つ)く

殘色(ざんしよく) 菊花(きくか) 周(あまね)し

これ開(さ)く時の晚(おそ)きがためになり

當(まさ)に發(ひら)く處(ところ)の稠(きび)きに 因(よ)るならむ

紅(くれなゐ)に染みて 衰葉(すいえふ) 病(かし)けたり

紫(むらさき)を辭(じ)して 老莖(らうけい) 惆(うれ)ふ

露(つゆ) 洗へども 香(かをり)盡(つ)きがたし

霜(しも) 濃(あつ)けれど 艶(うるはしび)なほし幽(かすか)なり


「十月、冬がやってくる。年のうち三割は静かな休みの季節である」(1-2)

「季節は暮れてかんばしい草も枯れてしまった。色あせた菊だけが多く残っている」(3-4)

「これは花が咲く時期が遅かったせいである。咲く花が多かったせいでもあろう」(5-6)

「衰えた葉は紅色に染まってしおれている。茎は紫色があせて老いたことを憂いている」(7-8)

「露によって洗われても香りは尽きがたい。霜は濃くともうるわしさがほのかに漂っている」(9-10)

玄英:冬のこと

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