人の関係は相対的・後編 〜どうしようもない時は自分を守れ〜

前編で語ったことを受けて、私にとってのクソヤローの話をしよう。
どーーーーーしても苦手な、会社の後輩がいる。仮に彼をA田くんとしよう。

どこが苦手か。
もう、それは清々しいほどに、好きな同僚とそれ以外で態度が違いすぎるのだ。
私は当然「それ以外」の方に入れられていた。

私の向かいの席にいる、私の同期にはそれはもう笑顔で話しかける。仕事と関係なくても話しかける。
かたや、私が仕事で声をかけるとあからさまに嫌そうである。

ある日A田くんがいない時に、彼の担当の相手先から電話がかかってきた。内容を聞いて、電話を折り返すようメモを残した。

が、数日後「電話が来ないんです」と相手先から私に電話がかかってくる。
メモの置き場所が悪かったか?伝わってなかったか?などと思い、相手先に謝罪して一旦切ってA田くんに訊いてみたところ
「ああ。電話してないです」
と。

なんでやねん。

特段忙しかったとか、折り返すために何かを調べてたとか、そういうわけでは一切なかったようだった。いやほんとになんで???
私が嫌いなのはいいとして、相手先に迷惑をかけるのはダメだろ。

こんな対応をされつつも、できたら気持ちよく仕事をしたいなあと思って接してきたつもりだった。

また別のある日。
私とA田くんは同じチームで新システムの導入に向けて準備を進めていた。
ある担当業務のマニュアルを私が作り、それを配り、操作方法について人を集めて説明していたその最中。

A田くんは私の作ったマニュアルを丸めて同僚を突っつきながらしゃべっていた。

「あ、もう無理だ。」と思った。

確かにA田くんは先に目を通しているので説明を聞かなくてもわかっていたのだろう。
だとしても「マニュアルを丸めて」「他の同僚に話しかける」のはマジで意味がわからない。小学生か。いや小学生に失礼かもしれない。

「そもそも、そんなに自分を変えてまで好かれたいぐらい、私はA田くんのことが好きだったか???」と自問自答して。

うん。ないわ。と即座に切った。

そのマニュアル丸め事件については、私の先輩も「あれはちょっとないね……」と苦言を呈していた。
「じゃあなんでその先輩はA田くんを注意しないんだよ」と思われるかもしれない。

実はこのA田くん、社内結婚をしている。奥さんを仮にA子さんとしよう。
職歴としてはA子さん>私>A田くんだ。それぞれ数年離れている。

苦言を呈していた先輩は、A子さんと仲がいいのだ。そりゃあ注意なんかしたくないだろう。A子さんになんか言われても嫌だし。

そしてさらに、私はA子さんとも相性が良くなかった。それこそA田くんが入社する前からだ。

A子さんとのエピソードとして、会社の部活の回覧を私が初めて作成した際のこと。A子さんから内線がかかってきた。内容はこうだ。

①「なんでフォント変えたの?」
→そもそもテンプレートをデータでもらっていない。それでフォントと言われても。

②「キャプテンからの依頼文書コピペしたでしょ」
→「こういう回覧を作ってくれ」ともらったデータをコピペして回覧用に整えることのなにがダメなのかわからない。要するに、コピペしたからフォントが違うのだと言いたかったようだが。

③「そうやって勝手に仕事進めちゃうよね。どうせ普段もそんな仕事のやり方してるんでしょ」
→異動したばかりの身にこれは堪えた。
「すみません自分ってそういうとこありますかね……」と同じ係の先輩にこぼしてしまった。

その先輩は
「うちの係は個人仕事が多いからわからないだけかもしれないけど……少なくとも俺はコウサトさんにそう感じたことはないなあ……」
と言っていた。これもフォローかもしれないが。

この件については後からA子さんにメールで「言い過ぎました」と謝っていただいたのだが、
「『言い過ぎた』ってことは、言ったこと自体は正しいと思ってるんだな……」と思うだけだった。

後に聞いた話、私が異動する前、A子さんは同じ係にいた1年目の私のことを「かわいくない後輩だ」と言っていたそうで。まあそうじゃなきゃ説明がつかないわな。と思った。

そしてA田くんとA子さんだが、A田くんが入社1年目の時にA子さんが隣の席だったことがお付き合いするきっかけである。

と、この話をひととおり私の母親にしたら、母はこう言った。

「それって、A子さんがあんたの愚痴をA田くんに言ってたんじゃないの??」

あーーーーーなるほどねーーーーーーー。
そりゃA田くんも私に対していい態度取らないわなーーーーー。

まあこれも仮定の話ではある。
そもそもA子さんが私を嫌いになったのも、私に非があるに違いない。向こうは経験を積んでおり知識も豊富で周りからの信頼も厚い先輩だ。
なにかしら私が失礼なことをしてたんだろう。と思うより他にない。

ただし、A田くんについては「俺はあんまり彼を悪いって思ったことないなあ……」と言っていた私の同期Kが
「廊下ですれ違って、挨拶したのに無視するってことある? 先輩後輩とか関係なく会釈ぐらいは返してくれてもよくないか??」
と困惑していた。これはもう礼儀の問題だ。
もしかしたらKは私と仲がいいからA田くんに嫌われたんだろうか。だとしたら本当に申し訳ない。

A田くんが別の部署に異動すると聞いて、思わず心の中でガッツポーズを決めた。そんな自分に対し、流石に自分性格悪すぎるのでは……と悩みもした。

だが、世間話で「年度変わりはお仕事大変じゃないですか?」と訊かれる機会があった。
「それが、苦手な同僚が別の部署に異動することになって……」と伝えたところ、
「やったじゃないですか!!」と言われた。

あ、「やった!」でいいんだ。喜んでいいんだ。と許された気分がした。

さて、ここで話を戻す。
A田くんは、私にとってはクソヤローであるが、A子さんにとっては素敵なご主人だ。普通に休日に遊びに行くぐらい仲の良い同僚もいる。

だが知らねえよ。
私にとってA田くんは現在クソヤロー以外の何者でもない。
時ぐすりという言葉があるので、ずっと同じ会社にいればどこかでうまくやれることもあるかもしれないが、今のところ別に必要ない。

異動した先の部署でA田くんが先輩からお叱りを受けたと聞いて「ざまあ」と思った。
そのぐらい、普通に私は彼のことが嫌いだ。
嫌いだ、と思っていいのだとわかった。そうでなければ自分が潰れてしまう。

「あの人に嫌われるなんて私はダメな奴だ……」
なんて思う必要はないのだ。嫌いなもんは嫌いだし合わないものは合わない。

それが「人の関係は相対的」ということだと私は思う。

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