201X年12月 風吹ク街
電車から降り立つと乾いた風がびゅうびゅうと吹いている。どれくらいの強風かというと、駅前の放置自転車が全部倒れる程度だ。この駅で降りた数人の乗客は、迎えの車でどこかへ行ってしまった。風は冷たく、体温が持っていかれる。早朝だからか、歩いている人は一人も居ない。
珍しく街に行くためではなく、人に会うために街へやってきた。今日会うのは一体どんな人だろうと思いながら肩をすくめ約束の喫茶店へ向かう。途中、開いている店は駅前のコンビニ一軒だけ。いつ遭難してもおかしくない。そんな気分になる