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ニュージーズ備忘録:キャスト

※ニュージーズのキャストが素晴らしいというお話。長い。
※全て個人の見解です

ディズニーミュージカル「ニュージーズ」
期待をはるかに超え、ここ数年で観たミュージカルの中でも一番興奮した作品なので書かずにはいられなくなりました。

私はまずアラン・メンケン楽曲大好き。ディズニー大好き。
ミュージカル大好き。小池先生演出作品大好き。
そりゃ観るしかない。
主演はルドルフの京本大我さん。エリザベートのルドルフで突如現れたジャニーズの子。イメージ真逆ですけど彼の歌声はアラン・メンケン楽曲に合いそう!どういうジャックになるのだろう、とワクワク。
開幕までが待ち遠しかった…。

ニュージーズは映画を見たこともあり基本のストーリーは把握済み。キャサリンが新聞記者として登場することが大きな違いでしょうか。ヒロインが新聞記者としてニュージーズを助ける立場になることで物語の奥行や幅がぐっと広がった印象です。

ストーリー展開としては、ザ・ディズニー作品。勧善懲悪のハッピーエンド。身分違いのロマンス。そして誰も死なない。帝劇だったら誰か死んでいたかもしれない。冗談です。
わかりやすいストーリーなのがかえって良かったように思います。群舞やパフォーマンスがストレートに入ってきますし、台詞を歌にする場面が多くないのでミュージカルが初めての人にも苦手意識持たずに観てもらえる気がする。


特筆すべきは奇跡のようなキャスト陣ですね。
主演の京本大我さんをはじめとする若手勢、脇を固めるベテラン勢。お互いの刺激が化学変化を起こしているのか、公演期間中の成長具合がかつてないほどめざましかったです。
そもそも舞台公演というのは、スケジュールが2~3年先まで決まっているのが当たり前。昨年惜しくも中止になってしまった演目が、わずか1年5か月で、しかもキャスト変更がほぼ無い状態で再上演に至ること自体すごいこと。復活あるだろうなとは思っていましたが、まさかこんなに早いとは。全方位に感謝。

東京で数回と大阪初日を観劇しましたが、このカンパニー、本当に調和のとれた人たちだなという印象です。

というわけで備忘録としてつらつら書きたくなりました。


ジャック:京本大我さん

いや~凄かったです。2015・2016年のルドルフを見ていたので線の細い繊細な王子のイメージが強く、孤児でその日暮らしのジャックをどう演じるのだろう、大丈夫なのかなと正直思っていましたが、別人のようでした。
体つきは一回り以上大きくなっていますし、伸びやかな高音の歌声のみでなく芯のある低音もブレずに安定。しなやかでかつ力強く、指先まで神経の行き届いたダンス。光を操るかのような目の動き。あんなに儚く死を纏っていたルドルフから、生命力に溢れるリーダーに成長していました。
アイドルっぽくないんですよ、まったく。でもカリスマ性とオーラはある、立派なミュージカル俳優が舞台にいました。ジャニーズからこんな子出てくるとは…。

ジャックの一番の見せ場、一幕ラストの「サンタフェ」。プロローグの夢と希望に溢れるキラキラした歌声とは一変し、打ちひしがれ嘆き、現実から逃れようと震えながら歌い上げる姿は圧巻でした。大我さんは本番で掴んで役を落とし込むタイプですかね。東宝公式で上がっている舞台映像と全然違います。複雑な感情を歌に乗せる表現力が日に日に進化していました。

それから場に応じた存在感の違いがとても良かったです。クラッチーといる時は兄のように、ニュージーズの仲間たちといる時は頼りたくなるようなリーダー感を漂わせながらも、群舞になれば突出せず調和し、キャサリンとの関係性を確かめるペントハウスのシーンでは恋に臆病で等身大の17歳の少年になり、大人と対峙するときは一人の商人として渡り歩く。ジャックの不安や焦り、苛立ちを感じる場面ではよく貧乏ゆすりをしていたのですが、それ以外にも姿勢や肩・手の動きで心情を表していたのが印象的でした。

ルドルフの時はまだ必死に食らいついている感じや、声量や発声に不安が残ることもあったのですが、ジャックは本当に役を生きていると思えました。でもカーテンコールでは急にぽやぽやになったので可愛らしいな、と思いました。0番に立つ姿は凛々しくたくましいのですが、バク転するフリ(しかも上手い)してドヤ顔してムーンウォークでハケる座長なんて初めて見ましたよ。
夏にジェシーくんの舞台も観ているのですが、彼もゆるくおしゃべりしながらハケていったので、SixTONESさん座長のクセ強いですね。

グループ活動との両立で大変だと思いますが、俳優業一本の人と違う経験値を積める利点もありますし、今後もぜひミュージカル界でも活躍していただきたいです。彼もうミュージカル界の宝じゃないですか?小池先生いい子見つけたなぁ。
系統的に古川雄大さんと近しいので、京本大我さんのモーツァルト!ヴォルフガング、エリザベートのトートで帝劇0番に立つ姿を見たいですね。あ、その時もぜひバク転のフリでどうぞ。

追記:SixTONESさんの曲聴いたりYou Tubeのライブ動画もいくつか拝見しました。だいぶ喉が強くなっているようですし、ミュージカル歌唱との歌い分けも意識していらっしゃる。声帯の使い方のコツを掴めたらもう一段上にいけると思うので、伸び代しかないですね。


キャサリン:咲妃みゆさん

宝塚時代から見ていたゆうみちゃん。可憐で芯の強さをを持つディズニープリンセスにぴったりでした!
ゆうみちゃんは理想的な娘役というか、主役を喰わない、演者を引き立てる演技をしていた印象があったので、誰が相手でもぴったり寄り添えるだろうと思っていましたが、京本大我さんとの相性がとても良い。身長差においても歌声のバランスにしても、完璧なヒロインでした。ちぎみゆゴールデンコンビが最上と思っていましたが一気に並びましたね。

まだまだ男尊女卑が根強い時代の、しかも強大な力を持つ父に反発し自力で生きる道を選ぶヒロインの表現力が素晴らしかった。新聞記者として話す時のキリッとした声音と、ジャックと二人きりの時の慈愛に満ちた声音の違いはもうさすが。
特筆すべきはソロ曲「何が起きるのか」。鬼難しいんですよこの曲。台詞と歌が複雑に入り組んでいて音程も取りにくい。タイプライターを打ちながらよくあのリズム刻めるな…。ジャックに対してはまだ恋愛感情を抱いていないものの、ハンサムだとは思っていて、生意気な奴!(この言い方と地団駄が世界一かわいい)だけどリーダーとしては認めている、年上の女の子の可愛らしさが存分に楽しめます。

そしてジャックとのデュエット「信じられるもの」
アラン・メンケンならではの王道バラードですよもう大好き。ア・ホール・ニュー・ワールド(アラジン)、輝く未来(塔の上のラプンツェル)を彷彿とさせるデュエット。
突き抜けるような高音ですがあたたかく包み込んでくれる歌声はゆうみちゃんならでは。京本大我さんの声質とすごく合っていて、本当にディズニーの夢の世界にいるよう。FNS歌謡祭で歌ってくださいと心から願う一曲。この二人のイチャイチャずっと見ていたいですほ~んとかわいい。観劇中にやにやしてしまっていたのでマスク必須の世の中でよかったです。

ゆうみちゃんもソロの音楽活動を始めていらっしゃいますし、今後もミュージカル界で活躍してほしいです。でも千と千尋の神隠しめちゃめちゃ楽しみ。かわいらしいプリンセスも自立した凛々しい女性も任せられる人だと思います。


クラッチー:松岡広大さん

るろうに剣心で知って身体能力の高さに驚いた俳優さん。演技も歌も素晴らしかったです。
右足は本当に不自由なのではと思うくらい不自然な動きや曲がり方をするし、それでいて松葉杖は体の一部のように扱い華麗に舞い踊る。相当苦労したと思います。
松岡広大さんはキャラクターの作り込みと表現が一貫していますね。大我さんが開幕後にも演技・表現の微調整をしているのとは反対に、広大さんは最初からクラッチーを固定している感じ。冒頭の屋上のシーンですぐにクラッチーの明るくひょうきんな性格がよくわかる。サンタフェ(プロローグ)のジャックをキラキラした眼差しで見つめ、“泳いで渡る リオグランデ 立てる 走れる”のデュエット部分は希望に満ち溢れた笑顔で歌い上げ、二人の絆・関係性を表現していました。なお、私はすでに泣いていた。

底抜けに明るく人生を悲観しないムードメーカーであるクラッチーが、唯一弱さを見せるのが「感化院からの手紙」。この歌の広大さんがとにかく素晴らしい。傷だらけでボロボロになりながらも仲間を気にかけ、ジャックを心から信じているクラッチーの「もういやだ」というたった一言がガツンと胸にくるのです。毎回泣いていました。

彼の歌声も非常に安定感があり、それでいて感情をしっかり乗せているので訴えかけてくる力が強いと思いました。それに表情が豊か。表情と声の連動が素晴らしく、感情が何倍にもなって伝わってきました。
あと苦しむ・怯える演技がべらぼうにうまいね…!警察に逮捕されるシーンのクラッチー本当に目を背けたくなる…ジャックの気持ちよくわかるよ…。

ストーリーの内容的に2幕はほとんどクラッチーを見られないのが残念に思うくらい、印象に残る人でした。
年齢重ねて渋さと男らしさを身に付けたらとんでもない俳優さんに成長するのでは?私はエリザベートのルキーニに期待してしまいますね。成河さんが新しい解釈のルキーニを生み出して衝撃を受けたのですが、それくらいのことやってくれそう。小池先生、いい子見つけたなぁ(リプライズ)。


デイヴィ:加藤清史郎さん

みなさんご存知こども店長。最近だとドラゴン桜ですね。子役時代にルドルフを一度見ておりましたので、大きく成長した姿に思わずグッとくるものがありましたね。
当時から歌もうまかったのですが、低くなった声でもよく伸びる歌声は健在。台詞も聞き取りやすく、ジャックの頭脳として心強い存在になるまでの表現力も目を見張るものがありました。

初めはよそよそしく一定の距離間を保っていたデイヴィですが、ストライキを決めたあたりから口調も変わり始め、集会では動きまでもがジャックをなぞらえるようになりその存在感をどんどん大きくしていきます。「今日こそ」ではスト破りの仲間が戻ってきてくれる場面で涙をぬぐったり、メッダの劇場で言葉巧みにジャックを鼓舞したり、場面ごとの心情の表し方はピカイチでした。

キングオブニューヨークのタップダンスも軽やかで楽しくて、幅広いパフォーマンス力に驚きました。レス役の子たちとも相性ぴったり。レスからしたらちょっと臆病で心配性のお兄ちゃんなのですが、その部分もずっと消えない。
清史郎くんも目立ち過ぎず沈み過ぎず、存在感を自在に操れる俳優さんですね。多くの経験を全部生かしきっている感じがします。経験値豊富だけどまだまだ若いので、年齢によって幅広い役を演じて行ってほしいです。青年ルドルフも諦めていないぞ!

レス:健太郎くん

見事に全部健太郎くん回でした。他の子も見てみたかった。

とにかく可愛い。癒やし。しかし演技も歌もダンスもハイレベル。タップダンス特に良かったです!出番も多いのに疲れやブレが出ない集中力の高さは本当に素晴らしい。丁寧な子なのか、毎回キチッと演技していた印象です。歌もめちゃめちゃうまい。何が起きるのか(リプライズ)は音程取りにくいと思うのですが、しっかり声を伸ばして外さずに歌い上げていました。成長が楽しみですね〜。

もれなくレ・ミゼラブルのガブローシュを見たい子たちです。いっぱい食べて寝て大きくなってね。


メッダ:霧矢大夢さん

ニュージーズたちを利害関係なく見守って助けてくれる唯一の大人。みんなのママ。大夢さんハマリ役。ディズニーアニメから飛び出してきた感すごくないです??すんごいディズニー!!
「それこそがリッチ」の爆発的な歌唱力はビリビリ痺れますね。身動きこそしませんがいつもノリノリで聴いていました。
大夢さんの低めの声にはいつでも温かさがるので、メッダは信頼できる、この人はニュージーズたちを守ってくれるという安心感を常に感じられます。これはベテラン勢俳優の確かな安定感があるからこそだと思うので、大夢さんがメッダで本当に良かったです。いいなメッダ。私はメッダになってニュージーズを養いたい。

ピュリツァー:松平健さん

悪役だけどどこか憎めない絶妙なピュリツァーを演じる抜群の存在感。渋いけれど言葉の端々にちょっとした茶目っ気もあり、嫌いになれない。松平健さんが出てくると舞台の雰囲気がシュッと変わりますね。
ニュージーズがストライキを起こすきっかけを作る張本人ですが、めちゃくちゃなだけではなく経営者としての考えがあってこそなのでただ迫力があるだけでもいけない。ピュリツァーは我が強いけれど独裁者ではないとうのが、演技から読み取れました。



そしてニュージーズ!!ブラボー!!
いわゆるアンサンブルなのですが、彼らには全員名前があり、劇中でもたびたび名前を呼ばれます。そのおかげか、1幕序盤でジャックの呼びかけによりあちこちから登場するニュージーズたちは、その時点ですでに人格があります。役作りの賜物でしょう。舞台下から出てくる演出も相まって、会場は一気に19世紀末のニューヨークに。特に前方列は彼らと同じ目線でいるような感覚になります。これ今の世の中じゃなかったら客席走り回ったのかな…。

彼らはオーディションを勝ち抜いただけあって、歌もダンスもお芝居も、主要キャストと遜色ないほど磨かれているのですが、若いエネルギーと溢れんばかりの熱意でパフォーマンスしている感じがとても気持ちいい。一糸乱れぬともまた違う一体感。群舞の気迫はすごいですよ。明るい曲の時は重力を感じないような軽やかなダンス、怒りや嘆きの曲の時は全身で唸りを上げるように歌い踊る。それがまた日を追うごとにどんどん魅力が増していく。ちなみに私は「ワールドに知らしめよう」で毎回泣いていました。若者の闘志に燃える歌に弱い。

20人以上いるなかで、悪目立ちしたり浮いたりする子がいないのがとても良い。台詞やソロがない子、名前呼ばれない子ももちろんいるけれど、沈んだりせず動きやパフォーマンスで目を引き付けていました。もうね、全員主役よ。バレエにタップダンス、アクロバット、所せましと駆け回り、歌えば見事なハーモニー。

再演あるでしょ?あるに決まってますでしょ??

ミュージカル界は30代以上の役者陣の活躍が目立つので、10代後半~20代の彼らがここからさらにメキメキ成長して、新しいスターになっていってほしいです。


ニュージーズ、期待をはるかに超える素敵な作品でした。再上演を叶えてくれた全ての人々に感謝。鬱屈した気分を吹き飛ばしてくれました。
この作品は長く続いてほしい。良い作品はキャストや新たな演出を加えて脈々と受け継がれていくものだと思うので、初演キャストの集結が難しくてもぜひ続けてほしい。
それから今回で初めてミュージカルに触れた人も多いと思います。せっかくなので、これを機にぜひいろいろな作品を知ってほしいですね。

ニュージーズの欠点はチケットが取れないことだけです。

ほんとにね、音楽がとにかく素晴らしいのでね、円盤化が一番良いけれどせめてCDだけでもなんとかお願いしますという気持ちです。

とにかくキャスト、スタッフの皆さま、素晴らしい作品をありがとうございました。

いつか京本トート・咲妃シシィ・松岡ルキーニのエリザベートを観たいなぁ!!
小池先生よろしくお願いいたします。

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