『見える補聴器』に掛けた未来

㈱Spacialという空間に情報を提示するスタートアップをやっています。
その事業で『見える補聴器』というものをやっていました。ARグラスや同じようなコンセプトも見られるようになってきたのでその事業を立ち上げた理由やどういう未来になるだろうと想像したのかなどなどを一度文章に残して置きます。

0.きっかけ

私はお祖母ちゃん子です。週一で電話をしています。

祖母「お昼ご飯は食べた?」
-「もう食べたよ」
祖母「あぁ、これから食べに行くのね。美味しいものあるといいね」
-「…そうだね」

という感じで。祖母の耳は聞こえないというわけではないのですが少し遠いです。耳が遠いのと電話の通話で聞こえにくく”予想した文脈”でしか単語を拾えていない状況です。

もちろん補聴器は付けていますが、本人曰く煩わしく聞こえにも調子があって聞こえないことも多いからつけたくない、と。
これをどうにかできないかと悩んでいた所、たまたま借りていたARグラスが手元にあったので音声認識と組み合わせたら『見える補聴器』が作れるんじゃないか?!と。

1.実際試してみて

『見える補聴器』というぐらいなので耳が聞こえにくい難聴者の方に
”補聴器の補助”として使ってもらおうと考えていました。
実際にプロトタイプを持って難聴者の方が多く働く就労施設や専門の大学を訪ね、使ってコミュニケーションが出来るかなどテストをさせていただきました。
一番印象に残ったのが完全に耳が聞こえなくなってしまった方と問題なく会話が出来たことでした。『見える補聴器』がこの間家族と集まったときに使えていればなぁ…と。

何十人とテストを行った中で分かってきたことがありました。
・耳が聞こえなくなって久しい方は『見える補聴器』への順応が早くコミュニケーションがしやすい
・逆に最近まで聞こえてきた方や、まだ若干聞こえる方は『見える補聴器』が逆に使いにくい。
この結果は、聴力に長く頼ってきた方はそのまま聞こうとしているのに対して、長く聞こえてない方は聴力以外を活用しているからと分析を行いました。

2.事業化への壁

テストを行うと同時に色々な場所へ売り込みも行いました。
例えば眼鏡メーカーや眼鏡屋チェーンなどを回りましたが返ってくる言葉は「高すぎる。医療品として売れるようになったらまた来てね」でした。医療品として販売するには申請や試験などかかるコストも期間も莫大になります。逆に通りさえすれば補助などが出るので必要としている人に提供しやすくなります。

ベンチャーキャピタルなども回りました。その部分については自分の力不足と事業計画の甘さから「マネタイズが見えない。これが売れるとは思えない。爆発的に普及するようには見えない。」と。

まずは補聴器の補助として『見える補聴器』を開発する。アプリケーションは自分が作って、ハードウェアは日本のメーカーさんにお願いする。試作品は出来ていました。ですが量産には金がかかる上に、2021年9月現在でもARグラスはほとんど普及しておらずフェイスブックがレイバンと組んでスマートグラスの発表がようやく行われている段階です。当時ではARグラスの製造にお金を出してくれる会社はいませんでした。

3.実現したかった未来

『見える補聴器』は難聴者の方への”補聴器の補助”がメインですが、それだけではありません。

福祉関連だけで見ても、たとえばパラリンピックなどで専門的な通訳だけでもかなりの数が動員されています。ですが『見える補聴器』を手話が出来る選手に渡したらその人が通訳にもなれるのです。

最近は難聴者(デフ)のスポーツ選手も増え、代表にも選抜されるようになっています。指示を受ける際にもタイムを取って補聴器を付けに戻り指示を聞いて補聴器を外して戻る。このような部分にも『見える補聴器』が補助として活躍できるんじゃないかという話もありました。

難聴者の勤労支援にも使えます。職場での使用はもちろんのこと、リモートワークでの画面越しのミーティングの内容も『見える補聴器』で可視化されます。聞いたところでは文字起こし用の別のPCを横に置いてリモート会議に参加されてる例もあるそうです。

コロナ禍の現在、窓口には飛沫防止のシートが多く付いています。正直、健常者であっても聞きにくいことがちらほら。『見える補聴器』であれば文字で喋った内容が表示されるので健常者でも助けになります。

他にも、海外に行った際の通訳機能として外国語を母国語に変換して表示してくれれば、相手も同じ『見える補聴器』を付けていれば異国語でもコミュニケーションが可能となります。

異言語コミュニケーションの壁を打ち破りたかった。

4.最後に

聴覚自体は人類共通で世界規模の話です。
もしメガネ自体がARグラスに置き換わった未来では『見える補聴器』なんて機能は当たり前のものになります。その普及の一端を担ってまずは難聴者の助けとなれるように…走り回っていましたが資金の目途が立てられず
優先度を下げている状態です。

今は裸眼で見られるホログラムの様な装置を開発しています。
『見える補聴器』の様な特別な機材を被らなくても見えるものです。
情報の提示を行う事でサポートできる技術の開発を続けていきます。

※英語が出来てホログラムが好きで将来的には経営に携わりたい営業さんを探しています。一肌脱いでやっかという方は是非OculusQuest2のHorizonWorkroomsでお話ししましょう。

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