素晴らしいお医者様

銀行員だった20代前半、
早朝から深夜までずっと働きづめ。
昼食時間は夕方遅くなることもよくある。、
一人でこなさなければならない仕事量が多すぎて、
責任も重く、抱えられないほどのストレスフルな毎日だった。

気がついたら胃腸がおかしくなっていた。
幼い頃から病気になると通っていた病院へ行ってみた。
初老の先生は、なんと高校の先輩だということがわかった。
そして優しく聞いてくれた。
「ご飯はちゃんと食べてるの?」と。
私は、
「仕事が忙しくて、お昼が食べられない時があったり、
夕方まで何も口にできないことがほとんどで…」
と言いながら、涙がポロポロポロポロ流れてきた。
そして、
「そうなんだね。頑張ってるんだね。そうかそうか…そうかそうか…」と
聞いてくれた。
すごく優しくて胃のあたりが少し楽になった気がした。
「少しでもいいから、途中で何か口に入れるように工夫してごらん。」
その口調がなんとも優しかった。

先生は、この時、私の胃だけを診てくれたのではなかった。
私の辛い気持ちも受け止めてくれた。
先生が診てくれたのは全体の私。

最近は病院へ行くことがほとんどないけれど、
私の記憶に残っている、一番素晴らしいお医者様の記憶となっている。

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