中学社会教科書解析 歴史編

本日もよろしくお願いいたします。先々週末から始めていました教科書解析ですが、無事に終わりました。そして、そこから僕なりに気付いたこと、そして、2021年入試にどのように影響を及ぼしたのか、等について解説を行いたいと思います。
なお、今回は歴史用語の掲載ランクの表はまとめていませんが、今週くらいである程度まとまれば、と思っています。

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最後までお付き合い、よろしくお願いいたします。

■歴史教科書解析

まず、僕がなぜ今回の新課程から教科書解析を行うことにしたのか、という理由ですが、その大きな要因というのは、現在行っている入試解析(昨年までは紙面講義で入試解説を行っていました)をしていくうちに、教科書の範囲内でもスルーされやすい内容が出題されていることが多いことを知り、それと正答率、出題頻度にどのように影響を及ぼしているのかを知りたくて、今回教科書解析を本格的に行おうと思いました。

皆さんも紙面講義や正答率などの話をしていくうちに、正答率の低い問題がどのような問題なのか、というのは様々なところで解析をしてきています。今回はその解析と教科書解析の整合性を図りたいと思い、複数の教科書をもとに解析を行っております。

今回解析に使った教科書会社は、東京書籍、帝国書院、教育出版、日本文教出版、山川出版社の計5社です。本来なら、ここに育鵬社を入れて6社で行いたかったのですが、注文した際に育鵬社の教科書は品切れで、発行元も売り切れている状態のため入手ができませんでした。よって、今回は5社で解析を行っています。学び舎も検定教科書ですが、私立や国立中学でしか採択がないため、今回の解析からは外してます。

今回、ルーズリーフにして35枚になりました。ワークの解析よりもより深く踏み込んだ解析ができるようになると思います。

■太字になっているからといって……

そして、入試においての頻度は、最新で発売されました「中学社会用語・資料集」(旺文社)を使って星の数を書きとっていきました。そして、教科書掲載5社ですべて掲載されていればAで記載しています。そのうち3社以上で太字になっている場合はS、全教科書で太字になっているものはS+として記載しています(こちらは今後の記事でデータにまとめたときでもこの表記をしています)。
3社以上で掲載はB、2社以下の場合はCとして表記します。ただし、B評価については、3社以上で太字掲載している場合はB+としています。ただし、語句として記載がなく内容が記載されている場合、2社記載で1社記載として扱っています。そのため、たとえ4社が太字で掲載しても残り1社が内容記載になっている場合(もしくは記載なし)は、B+として記載しています。SとかAとかで忖度していません

■意外な語句がAランクに!!

では、実際に語句を見たうえで今年の入試で気になったものも含めて話したいと思います。

2021年の長野県で出題された三角貿易(アジア)ですが、片貿易については今回初めて出題されていました。気になったので、教科書で確認をしました。そうしたら、5教科書とも三角貿易のことに触れていました(但し、教育出版は三角貿易の語句はないものの、説明はありました)。そして、片貿易についても5教科書全てで記載がありました。実際は片貿易の知識がなくても問題は解くことはできます。18世紀の貿易のようすについても知っておく必要があると思います。僕もこのデータは新たに加えたいと思っています。

2021年ではないのですが、過去にラスコーを出題してきた年がありました。こちらの語句ですが、新教科書では5教科書とも記載がありました。昔だと私立レベルの問題ですが、近年ではだんだん公立入試でも出題されるようになっています。旧教科書ではほとんど記載がなかったのですが、今回全教科書で記載があったので、今後も出題してくるところがあると思います。

また、出題頻度が高い菱川師宣についてですが、僕らの感覚ではSもしくはS+のランクですが、実際に見るとAランクにとどまっています(太字にしていたのも1教科書のみ)。また、近代世界史でよく出てきていた絶対王政も語句として出していたのは2教科書にとどまり、他の教科書は内容説明に留めている関係でBランクの語句になっています(ルイ14世はAランクなのに、エリザベス一世についてはCランクに下がっています)。時事的要素なのか、渋沢栄一については全教科書で書かれていました。

これを見た限り、今までの感覚が通用しないことが分かります。僕らが以前指導していたものでは普通に重要にしていたものが重要ではなくなっている、などきちんと教科書解析をしておかないと指導の齟齬が出てきてしまう恐れがあります。気を付けてください(特にベテランの先生ほど気をつけてください)。

■山川の教科書は過信しすぎないように

これは僕ら指導者が一番気を付けないといけないのが、今回から新たに参戦してきました山川の教科書です。先入観で感じるなら、山川の教科書なら確実に掲載している、と思いがちですが、世界史に力を入れている関係で、思った以上に掲載がないものもありました。たとえば、ほとんどの教科書で朝鮮の文字であるハングル、蝦夷の首長である阿弖流為、明治時代につくられた枢密院などを記載しているのですが、山川はどれも記載がありませんでした。逆に、他の教科書が内容で記載しているものが、山川では語句で記載(しかも太字)しているものもあり、評価は分かれるところです。そのせいで、S評価しないといけないものがB評価(もしくはB+)に下がる原因になっています。

ただし、歴史総合をスムーズに学習するのであれば、山川レベルの世界史はほしいところです。もちろん、それがなくてもある程度は対応できます。が、関連知識として持っておくと有利になると思います。

そのため、山川の教科書といえども手放しで高評価することは早計です。山川の教科書を使う場合、標準のワークなどで基本知識の補完をしておく必要があります。教科書学習をベースに、ワークや参考書などで知識を補うのがりそうな気がします。それを活用するために、「くわしいシリーズ」(文英堂)、「ニューコース」(Gakken)などの辞書型参考書も確認する必要があります。うまくこのような参考書を活用してほしいと思います。

■入試問題でも

入試問題でもこの語句の教科書頻度が入試の正答率に影響しているものがあるのか、ということを確認しました。

たとえば、江戸時代の郵便制度である飛脚が2020年の広島で出題されましたが、この問題の正答率は23%程度でした。なお、飛脚の語句頻度はBランクでした(4教科書が記載しているものの、太字にしていない)。よって、頻度Bの語句が一問一答で出た場合、正答率は低いことが分かります。が、入試問題はどういう問題が出るかは想定できません。そのため、上位校を受ける場合は、Bランクでも気を付けておく必要がありますし、社会が本当に苦手な人、定期テストで取れない人は最低でもS+の問題だけでもできるようにしてほしいです(できればSランクまではできてほしいです)。

また、語句ではないのですが、2021年入試で東日本大震災絡みで震災に関するテーマを出題したところが広島県で、感染症の歴史をテーマにしたのが沖縄県でした。他にも出題していたところがあったと思いますが、どちらもこのテーマは僕が予想問題でテーマとして出していたものですが、問題も的中していました。

■リストについては

語句リストについては、もう少しお待ちください。まとまったものを今度はExcelにデータを打ち込んでいかないといけません。別名で来ている場合はそれも含めて記載しないといけません。これを使っていただくと、自分が使っている教科書と他会社の比較もしやすくなります。これを時代別にしようか考えています。なお、タイトルはシェアの多い東京書籍の教科書をベースにしています。

このデータはほとんど知らないと思います。今回初めて世に出すものとなります。これを使って、指導の効率を上げていただけると幸いです。一応無料で提供予定ですが、使用される際にサポート(投げ銭)していただけると、より精度の高いものを作成するための励みになるうえ、今後地理・公民でも同様に行うことができます。今回は歴史だけ先に仕上げたいと思っています(近年の公立入試で社会の正答率が低い原因は歴史のため)。
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中学社会・日本史講師吉野@予備校講師
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