【教育歳時記】単純暗記からの脱却
本日もよろしくお願いします。
昨日、「池上彰のニュースそうだったのか!」という番組を視聴しました(内容自体は賛否両論ありますが)。その中で社会の学習について興味ある話がありまして、それに対しての私見を述べさせていただきます。
無料公開です。よろしくお願いいたします。
■昨日のツイートより
昨日の「ニュースそうだったのか」を見ている最中に僕が公式Twitterで発言しましたツイートです。昨日だけでもかなりの反応をいただきました。社会は暗記科目から考える教科に変わる、といわれています。
その教科書の変更は中学社会の教科書でも見られています。実際に色々と思考するための素材を揃えています。そして、2022年から高校で始まる公共の教科書でもそのような思考型の素材を揃えて自分で考える力を身に付けるような方向にしようという動きが見えています。
ということは、これまでの知識偏重型の丸暗記学習は通用しません。自分の持っている知識をどのような場面で活用すればいいのか、という思考型の学習になるといわれています。そのためには、背景知識や汎用知識として定着させなければなりません。
しかし、昨日、とある方が上記のツイートに対して引用RTされたものを見ると、現場の先生は従来通りの学習をそのまましている、という話を聞きました。虫食いプリントを使って知識偏重学習をそのまま行っている、と聞きました。
■変化に対応できない指導者もいる
この話を受けて、僕は、中学の現場でも変化に対応できていない教員がいるのは残念だと思いました。確かに土台となる知識を定着させる必要があるのはわかります。しかし、間違ってほしくないのは、土台となる知識が丸暗記になるのはナンセンス、と言っているのです。土台となる知識をどのように活用できる知識にできるか、という方が大事です。
そして、定期テストの学習で未だに行っていることがあります。
ほとんどの人はやった覚えがある人もいますが、定期テストの前に学校のワークを作業で終わらせてた生徒が多いのでは、と思います。これは本質を理解するということではなく、ただ、学習している「フリ」をしているのです。その結果、自分で学習しているのに成績が上がり切らない原因ともなっているのです。
ただ、このやり方ですが、例外も当然存在します。それは普段からの学習をしっかりとしている人です。そういう人たちは学習習慣がついているため、直前期でこのような学習をしても点数に結び付きます。が、ほとんどの人はこのような学習はお勧めしません。少し面倒かもしれませんが、日頃からコツコツと学習を積み重ねる方が成績上昇は早いです。
そのために効果があるのは、小テストとして活用できる問題集を1冊することです。塾などでは小テスト用の教材を使うのがいいでしょう。
何のために毎回小テストを行っているのか、という意味を理解しないといけません。学習の定着をするためです。
■個別指導学習で成績が伸びない原因は?
よく、塾に通っているけど成績が伸びない、という悩みを持たれている方は多いと思います。その原因としては、集団指導の場合は、個別対応をあまりしていないため、自分が分からなくても授業は先に進んでしまうため、ついていかれなくなり成績が伸びない、ということはあります。
でも、個別指導塾でも成績が伸びない事例はいくつかあります。その理由はいくつかあります。➀自分のペースで行うためテスト期間に間に合わない、②講師が成績ののばし方を知らない(個別指導の場合は講師が学生のことが多いため)、③実は演習量が少ない、など様々な要因があります。
②については、教室責任者も知らない恐れがあります。そのため、どのように成績を上げさせるのか、気になる方は面談時にしっかりと聞いておくといいでしょう。中には、小手先の手法で誤魔化している教室もあります。よって、入会する前に、しっかりと体験授業で授業を体感するといいでしょう。
個別指導で注意する場合、1対2なのか1対3以上なのかで指導のされ方が大きく変わります。なお、僕は1対4以上の授業は個別指導とは呼んでいません(自立支援型とよんでいます)。このシステムで授業をしているところは自立学習と見たほうがいいです。それが自分でできないのであれば、この形式の塾に行くのはお勧めしません。むしろ成績は下がります。
なぜ、成績が下がるか?その理由は簡単です。指導時間が少なく、演習時間が多いからです(もし、80分授業で4人同時に指導する場合、1人当たりで20分程度しか指導時間はありません)。そういう塾は月謝が安いので、講師にかける人件費も安いはずです。人件費が安いとなると、質のいい講師が揃っているとは思えません。
そのような塾は、指導時間内に授業報告書を書くことを言われていると思います(授業報告書を書く時間は本来は事務時間なのにその時の給与は出ないところが多い)。なので、まともな指導を受けられているとは思いません(そういう塾は指導が適当なことが多いため、得意科目といっていても片手間で指導している恐れがある)。中学生までならそれでもある程度のごまかしは効きますが、大学受験ではそのやり方は通用しません。
■学校現場で三つの知識を活用する
上記のツイートは本日昼頃に出したものですが、これを出して2時間くらいしか経っていませんが、たくさんの反応が出ています。
僕は中学生の指導から、周辺知識・関連知識・背景知識の3つの知識と汎用知識を意識させる指導を行っていました。新学習指導要領では、そのことを活用するような教科書構成になっているものが多かったです。
土台となる知識をもとに、どう活用するのか、がポイントです。そして、高校入試でもこのような思考型の問題が出ています。こちらについては、僕が高校入試の平均点・正答率などをもとに高校入試解析を行っています。こちらはかなり高額の有料記事となっていますが、ほとんど出回らない内容をアップしているので、一つ購読していただけたら参考になると思います。
その記事でも3つの知識の重要度を言っています。これは学校現場でも身に付けなければいけない知識です。それを使えれば、短文記述問題や論述問題が出ても対応できると思います。このような学習は大学入試の論述対策でも必要になってきます。その学習が大学では文献の研究などでも活用されます。それを意識しなければ丸暗記型の学習から脱却できないと思います。
そう、今行っている学習は、今後の研究などにも活用できる知識の土台なのです。それを丸暗記学習で済ませるという指導は暴論にも近いです。だから使える知識になっていないのです。ゆえに、自分の力で考えることができないのです。このような活用した知識を身に付けた場合、模試などで生きてきます。
■土台の知識は様々な角度で対応する
そんな中で土台の知識はどのような角度で出題されても対応できなければなりません。
例えば、聖徳太子(厩戸皇子)に関する問題として、以下の問題文があります。
例1:用明天皇の息子で、崇峻天皇暗殺後、おばの推古天皇を助けて政治を行った人物は誰。
例2:推古天皇のもとで政治を行い、蘇我馬子と協力した人物は誰?
例3:世界最古の木造建築物を建立した人物は誰?
例4:「隋書」内で「阿輩雞弥」と示されている人物は推古天皇ともう一人は誰?
この答えですが、全て聖徳太子(厩戸皇子)です。なお、例1~3は中学社会のレベルで解くことができます。例4については大学受験日本史で過去に実際に出された入試問題です。
これですが、ほとんどの人は、聖徳太子(厩戸皇子)をまずは覚え、上記の問題文を覚えることをします。しかし、例1を覚えるだけの場合、2や3、4のような問題文が出た場合、対応が難しくなります。
もし、聖徳太子について、このような問題が出たとしたらどうしますか?
例:聖徳太子が行った政策について、4つ挙げ説明しなさい。
さて、これですが、冠位十二階の制度、憲法十七条(十七条の憲法)、遣隋使の派遣、法隆寺の建立を最低でも書かないといけませんが、これだけを列挙しても点数になりません。これらの簡単な説明をすべて書かないといけません。そう、用語を知っていても使えなければこのような問題で点数を取ることは難しいです。
ここで間違いやすいのは「推古天皇の摂政となり、蘇我馬子と協力して政治を行った」、ということを書く人がいますが、この記述を書いても点数になりません。その理由として、上記太字の内容は政策ではないのです。あくまでも聖徳太子に対する説明でしかないからです。そのため、問題文に要求されていることに答えていないので点数にならないのです(採点基準にもなりません)。
昨日の番組で「大政奉還が起こらなかったら日本はどうなっていたか?」という問題が出ていましたが、大政奉還が起こる前の歴史と明治維新が起こるあとの歴史を使って答えなければなりません。これを大政奉還、戊辰戦争という語句だけを覚えていても使える知識にはなりません。
そのため、様々な角度で出題されても対応できる土台を作らなければなりません。小手先の知識では通用しません。この話は僕が公立高校入試問題解析をしているときにも指摘していることです。基本語句でありながら正答率が低い理由がここにあるのです。今後は活用できる知識をもとに問題が作られる可能性が高いため、知識偏重の問題は減ってくると思います。その流れをもとに共通テストも作られると思います(しかし、2021年の共通テストはセンター形式の知識問題が多かった)。そのため、2022年の公立高校入試は全体的に難化しそうな気がします。
そのため、一つの知識を様々な角度で活用できるような学習をしてほしいと思います。もちろん、土台となる知識を定着させることも大事です。そのバランスをうまくとってほしいと思います。
皆様のサポート、よろしくお願いいたします。