2020年公立入試社会を解いてみて3 広島県

広島県の公立入試も今日で終わりました。受験生の皆様、お疲れさまです。
というわけで、このシリーズも3回目となりました。いつもなら今行っているCAMEL様に今回の解説動画を出そうと考えましたが、新型コロナウィルスの関係で出すことが難しいです。そのため、今回はnoteの方で解説を行いたいと思います(今回は概観たけでなく、特別にどう回答に至るかのプロセスも公開します)。
無料公開です。よろしくお願いいたします。
なお、問題については著作権等の関係上掲載できないので、正式に公開されてから参照ください。

2020年広島県の出題形式

今年の広島県の公立入試は
1 地理総合(茶の生産・輸出入など)
2 テーマ歴史(税制度)
3 政治総合(裁判所)
4 3分野総合テーマ史(岐阜の中山道に関わる交通史)
でした。公民は一昨年くらいから1つの題材に絞って出題されることが続いてましたが、今年も継承されました。恐らく、裁判員制度が施行されて10年に当たるため、それに関わる題材になったのだと思います。
地理総合は三年前の系統地理総合に戻りました。今年はお茶の流通・交易に関するものになりました。
歴史は消費税が初めて制定されて30年なので、その関係で税制度の問題を出したと思います。CAMELの映像授業の問題演習解説では、社会経済史はテーマに則した問題が出題される、と言ってますが、ほとんど関連してた問題だったと思います。
最後の3分野総合は交通史で来ました。交通史は確かに3分野総合でも出るテーマのひとつだと思いますので、それに関する知識があればクリアーできたと思います。こちらも歴史ではテーマに則した問題が出題されてます。いかに周辺知識・関連知識・背景知識が必要かを痛感させられた問題だったと思います

肝心の難易度は…

では、難易度はどうだったかというと、昨年比でいくなら標準ですが、記述問題は取っつきやすかった問題が多かったので、昨年よりはある程度平均点は上がると予想します。そのため、上位校だと記述で落としてはいけない問題で落とすと致命傷にもなりかねません。しかし、偏差値50未満の高校だと記述の平均点はやや下がると思います。

これから解説を行いますが、落としてはいけない問題と点差がつきそうな問題などは言っていこうと思います。基本的に一問一答形式と選択肢は外してはいけないと思ってます。

大問1 系統地理総合

問1は九州南部で火山灰からシラス台地と判定できます。この一問一答は落としてはダメです。
問2(1)ですが、農業で機械を使う利点を答えるといいです。機械を使うと大量生産ができること、少ない労働力で収穫できることがわかれば解けます。似たような問題が2014年にも出ています。過去問対策をしてた方は容易に解けた問題だと思います。
(2)は地形図を見て静岡で機械があまり使えない理由を答える問題です。基本的に機械を持ち込みにくいところは斜面が急なところでは使いにくいです。このように、関連知識や周辺知識、背景知識が使える知識になっていたら解きやすくなります。
問3(1)は茶の生産分布を読み取るだけの問題です。こういう問題は落としてはいけません。ただ、静岡は東経135°よりも東にあるので、これを含むイの選択肢だけは選ばないでください。
(2)ですが、雨温図はないものの、熱帯なのに気温が低い理由を聞かれてます。これはアフリカ、南アフリカで赤道絡みの問題が出たときに要注意です。標高が高くなるほど気温は下がります。分かりやすい例でいくなら、富士山は標高が高くなれば白いものが見えると思いますが、これが雪なのです。あとは理科でも同じような問題が出ますので、これと関連知識で押さえるといいでしょう。
問4は2017年とほぼ同じような問題です。つまり、3・4年おきに同じような問題が出るという法則がここでも生かされてます。ここで必要な知識はモノカルチャー経済の知識です。ケニアは自国の生活のためにお茶を海外に輸出してるのです。2017年では原油の話でしたが、それが商品作物(茶)に変わっただけです。
ただし、中国の小麦の輸出が少ない場合(生産は世界一)は事情が変わり、莫大な人工のために食料確保をする必要があるから、輸出量が少ないのです。この違いも押さえておくと使える知識になります。

総じて難問とは思う問題は少なかった気がするのが僕の私見です。点差がつくとしても、問2(1)と問4くらいだと思います。

大問2 税制度の歴史

今年もテーマ史で来ました。社会経済史は広島では頻度が高いテーマなので問題慣れしておくのがいいと思います。

問1(1)は飛鳥時代の土地制度の問題です。こういう正誤問題は歴史名辞などで判定するのが吉です。ただし、語句がなくてと内容で判定させる問題もあるので、語句と内容の知識を定着させてください。
(2)は白村江の戦いの知識があれば楽勝です。倭国が戦った相手国がわかればそれだけで判定可能です。他府県によっては水城が出てくることもありますので、そこも関連知識で押さえましょう(理由については国内防備の面では同じです)。
問2は土倉や酒屋を襲うから土一揆と判定できます。この一問一答は外してはいけません。
問3は株仲間の奨励の利点を幕府側、株仲間側でそれぞれ答えさせる対比討論型の問題です。ポイントは株仲間を奨励すると幕府としては営業税が入ることで収入を増やせます。また、株仲間としたら、営業税を払ってでも幕府の公認がもらえるので、営業の独占ができるようになります。これらを記述すれば問題ないと思います。ここは内容がしっかりと押さえられたら問題ないと思います。
問4ですが、CAMEL様に提供してる問題(問題については吉野が自作で作ってます)からなんと的中しました!

吉野の自作問題(少し見えにくくてすみません)

実際の問題(著作権の関係上問題は映せません)

~広島県で実施された第15回(1924年)と第16回(1928年)の衆議院議員総選挙の議員一人あたりの有権者の数が表Ⅱのように変化したのは、この二つの選挙の間で選挙権が与えられる資格に変更があったからです。それはどのような変更ですか。第15回と第16回のそれぞれの衆議院議員総選挙において選挙権が与えられた資格の違いに触れて、簡潔に書きなさい。(2020年広島県公立入試より、資料は省略)

要は、1924年の時と1928年の時とで選挙権の条件がどう変更されたかを知れば判定できます。1925年の普通選挙法で、直接国税の条件が撤廃されたことがわかれば簡単です。あとは15回と16回の違いに触れながら書けば回答は簡単です。ここはベタの問題のため、落としてはいけない問題です。
問5は、本来は公民単元で聞かれる問題ですが、歴史的観点から問う問題です。類題としては秋田県に過去に出ていたものがあります。ポイントは社会保障給付費が増えていったこと、そして、65歳以上の人口割合が増えることを根拠に新たな財源として消費税が導入された、といいます。
これは時事的問題の関連としても問えます。消費税の増税は社会保障費に充てる、という背景知識が分かればこの問題は解決できます(慣れてないと解けないと思います)。

点差がつくとするなら、問5くらいです。問3と問4はできてないとディスアドバンテージを取られることになります。

大問3 公民(裁判所)

このタイプの問題形式になって、初めて政治単独で問われました。過去の傾向がわかってた方は政治分野の出題は予想できたと思います。

問1(1)ですが、条文がわかっていれば簡単です。条文問題のため漢字指定になるため、平仮名書きは×になると思います
(2)は三審制がとられてる理由ですが、これも用語説明型の問題なので、内容が分かれば簡単です。このような記述は落としてはいけません。
問2は被疑者・被告人の権利として正しいものをすべて選べばいいです。アは現行犯の時だけ例外があるため、それが誤りです。問題によっては誤りを選べ、という問題が出てもいいのですが、広島県では正しいものをすべて選べ、できてます。先入観で解かないようにしましょう。
問3(1)は裁判員裁判のまとめ問題です。このタイプは2011年の滋賀県などで出題がされてます。表を見比べるとAとBは容易に埋められます。Cは滋賀県などの問題でもよく出ている文言なので、他府県の過去問を解いてた方は簡単だったと思います(実際は裁判員裁判の因果関係型の問題になる)。
(2)は自由記述型の問題ですが、やることは①グラフや表をまずは見ること、②与えられてる条件を読むこと、これらをしてください。これができていたら部分点は最低もらえます。グラフⅡではネガティブな意見が多かったが、グラフⅢではポジティブな意見が増えたことがわかります。これらをまず書いたのち、それを踏まえてどうすればいいかを自分なりに考えていけば、正解にたどり着くと思います。

点差がつくのは問2と問3(2)です。問2はあやふやな知識で臨んだ方は引っ掛かってる可能性があると思います。しかし、問1はどちらも落としてはいけません。ここの失点は後々に響く恐れはあります。

大問4 3分野総合テーマ史(交通史)

最後は交通史の問題です。これは歴史単独でも出てきますが、3分野総合テーマ史でもうってつけの問題となります。

問1は夜間人口と昼間人口の差異を問う問題です。昼間人口が少ないのは、通学や通勤電車で市内に出る人が多いことがわかります。都心だけでなく、大都市圏でも最近は出てきてますので、間違えないようにしましょう。
問2(1)は郵便制度の前身を答えればいいので、飛脚です。一問一答といえど、ここは意外とできてなかったかたもいます。しかし、普通に取り扱う内容なので、ここも外さないようにしましょう。
(2)ですが、参勤交代で宿場町が栄える理由を問う問題です。これは資料をしっかりと読めば、中山道の宿場町が参勤交代で大名たちが宿泊することで利益が得られることがわかります。これは点差がかなりつくと思います。周辺知識・関連知識・背景知識が押さえられてたら解けたかも知れません。
問3は市の活性化に向けての話です。自由記述型の問題なので、条件をしっかり読みましょう。まずはメモを使って中津川市の魅力が何かを挙げましょう。ポイントは馬籠宿は島崎藤村の出身地であること、リニア中央新幹線の駅が設置されて東京と約1時間で結べることを書いて、観光客の集客を行うことがまず書けていたらいいでしょう。その後、特産品の収穫体験やそば打ち体験などを提案し、収入を上げる効果を説明できるといいでしょう。
この問題は2016年とタイプが近いです。このときも姉妹都市の農村部の活性化の問題でした。つまり、町おこしの知識があれば対応できると思います。これはアクティブ・ラーニングを意識した問題でもあります。入試でもこのような傾向の問題は増えると思います。今のうちに背景知識や汎用知識などを身につけておきましょう。気を付けないといけないのが、中津川市のどのような人に効果をもたらすか、の説明ができないと減点されます

点差がつくのは問2(2)と問3です。特に問3は配点が6点もあるので、最悪でも部分点はもらえなければ点差が開きます。

総評

全部で小問は22問(得点に関するものは23問)ですが、記述問題は15問です(一問一答の記述は含まない)。7割近くは文章で書く問題です。まずは文で書けるようにトレーニングする学習をしてください。資料読解も出ているので、資料の読解法を対応できるようにしましょう。
ここでいう記述問題とは、文章で書かせる問題を記述問題といい、一問一答の記述は記述問題とはいわない

広島県の公立入試では、来年度から出題形式が変わるとの話があります。もしかしたらより記述問題の比率が上がること、100字程度で書かせる論述問題が出ることも予想されます(過去には滋賀県(最近は出てない)や静岡県などで出題されてます)。そのため、要約する力も身に付けておくことを勧めます。

それでもまずは土台となる知識をしっかりと定着させるようにしてください。その後は問題の実戦力を身に付けてください。作業にならないように気を付けてください。

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