2021年教科書展示会3 地理総合編

本日もよろしくお願いいたします。昨日、三度目の教科書展示会に行ってきました。昨年は公に行われた1回のみ行き、あと2回は教育委員会に問い合わせて閲覧をさせていただきました。今回は歴史総合・公共と閲覧しましたが、いよいよ地理総合の閲覧を行いました。
採択冊数が少なかった関係で、歴史総合や公共ではできなかった少し細かい話までできると思います。
昨日、この話の一部を公式Twitterでツイートさせていただきましたが、予想以上の反響があり、引用RTでも「知らなかった」という声を頂戴しています。そして、その経緯になった話を提供してくださった方もいらっしゃりまして、勉強になりました。この場を借りて、お礼申し上げます。

■昨日のツイートより

上記のツイートは教科書展示会で閲覧中に僕も知らなかったことが掲載されていたため、発信しました。そうしたら、夜頃から反応がすごいことになっており、この記事執筆時で91いいね、35RT(引用RTも含む)をいただいています。その大半のコメントは知らなかった、というものでした。僕も勉強不足でしたが、これについてはほとんどニュースでは流れなかったので大半の方は存じなかったと思います。
そんな中、工場と桑畑の地図記号がなくなった理由を教えてくださるコメントもありました。情報提供、ありがとうございます。

前者は工場が地図記号からなくなった理由、後者は桑畑が地図記号からなくなった理由となっています。この背景から地図記号からなくなったのだ、と初めて知りました。なお、前者については規模の大きい工場は工場名を記しているそうです。
これらの地図記号の廃止は2013年に決まったものですが、気を付けないといけないのが、2013年以降の地形図だと掲載はないだけで、2012年以前の地形図だとこれらの地図記号は残っています。よって、定期テストや入試問題などで出題されたときは気を付けてください。
コメント、引用RTについては全てに返信はできませんが、目は通しています。

なお、教科書展示会においては、教科書の画像を撮ること、SNSで流すことなどは禁止されていますので、気になる方がいらっしゃいましたら、ぜひ教科書展示会に足を運んでいただき、地理総合の教科書を閲覧してください(ただし、実教の教科書だけは掲載がなかったと思います)。

■小中の教科書では?

そこで、この情報がどうしても気になり、地理総合の閲覧終了後、小中の社会の教科書を展示会に現在あったもので調べてみました。

【小学校社会(小3)の閲覧教科書】
・東京書籍
・日本文教出版
・教育出版
【中学校地理の閲覧教科書】
・東京書籍
・帝国書院
・教育出版
・日本文教出版

その結果、以下のようになりました。

【小学校社会(小3)の教科書】
・東京書籍・日本文教出版・教育出版:工場については記号の由来まで記載あり、桑畑については触れられていなかった
【中学校地理の教科書】
・東京書籍:工場・桑畑ともに記載あり
・教育出版:工場は記載あり、桑畑は記載なし
・日本文教出版・帝国書院:工場・桑畑ともに記載なし(最新の地図記号の表を用いていた)

各教科書会社で対応は様々ですが、小学校ではどの教科書も共通して工場の記号は残していました(地図記号の由来を説明するためではないのか、と思います)。もし、小学校で上記以外の教科書を使われている方で、異なる対応をされていた場合は、情報提供していただきますと助かります

そして、小中全ての教科書でスルーされていたのが、「自然災害伝承碑」の地図記号が2019年から新たに登録されたことです。そして、2020年8月からの地形図から新たに記載されることになります。特に2022年からの中学入試・高校入試で出題される可能性はあります。記号としては、記念碑とほぼ同じですが、丸の中に線を引くだけでいいです。詳しくは以下のサイトを参照ください。

ただ、この記号が正式にできたのが2019年のため、小学校・中学校の教科書が記載に間に合わなかったことも想定されます。そのため、次年度以降で何かしら改訂がされる気がします。

では、これらについて辞書型参考書ではどう対応していたか。僕は現在の手持ちには「パーフェクトコース 中学社会」(Gakken)があったので、それで確認をしました。そうしたら、桑畑は残っていましたが、工場は記載がありませんでした。が、自然災害伝承碑についてはきちんと記載されていました。また、「中学社会用語集・資料集」(旺文社)によると、工場・桑畑の地図記号はどちらも残っており、自然災害伝承碑については記載がありませんでした。
その他の参考書でご存知の方がいらっしゃいましたら、情報提供していただけると助かります。

■地理総合の教科書

では、本題です。地理総合の教科書は6教科書が採択されていました。採択教科書は以下の通りです。

【地理総合採択教科書】
・東京書籍:「地理総合」
・帝国書院:「高等学校 新地理総合」
・実教出版:「地理総合」
・第一学習社:「高等学校 地理総合」
・二宮書店:「地理総合 世界に学び地域へつなぐ」「わたしたちの地理総合 世界から日本へ」

この中で、実教出版の「地理総合」と二宮書店の「地理総合」はタイプがやや近かった気がします。系統地理が中心になっている内容でしたが、一部世界地誌の内容も盛り込んでいる構成でした。帝国書院の「新地理総合」もやや実教寄りだったかな、と思いますが、系統地理が中心の内容だった気がします。そこに付け加えるように世界地誌を入れ込んだ気がします。
ここで、世界地誌を入れているといいますが、テーマを1つに絞って取り入れているので完全な世界地誌ではないことをまずは知ってください。
また、一部の教科書では、地学の知識も少し必要となります(気候などの知識について)。

そして、実教出版の「地理総合」については全ての単元を扱うのではなく、世界地誌のテーマについては、どれか1テーマに絞って学習するように指示がされています。例えば、東アジア・東南アジアを選んだ場合は産業を、インド・イスラーム圏を選んだ場合は宗教を、EU・ロシア・アフリカを選んだ場合は国家・民族・言語を、南北アメリカ・オセアニアを選んだ場合は移民をテーマにそれぞれ学習するようになっています(もちろん、学校によっては全て扱う可能性はあると思いますが……)。そういう意味では他の教科書と比べると少しタイプが違うのでは、と思います。
そして、地理総合は全ての教科書で2ページ完結となっており、中学社会の内容をベースに知識を掘り下げていく、という形式になっています。

■今後の学習は中学時代で決まる?

これは、歴史総合・公共・地理総合すべてを閲覧したうえで僕が感じた私見を話します。

これからの学習は中学内容の知識をベースに高校の学習につなげるような意識が非常に強い気がします。ということは、今までの丸暗記学習からの早期脱却を図らなければなりません(ただし、覚えておかないといけない知識はしっかりと覚えないといけませんが……)。
これらの知識をベースにして歴史総合なら日本史探求や世界史探求に、地理総合は地理探求に、公共は倫理や政治経済につながる学習の土台と考えたほうがいいです。もし、高校内容の知識が分からなくなったら遠慮なしに中学内容にさかのぼればいいのです。それだけ中学内容の学習はこれから大事になってくると思います。これは社会だけでなく、他の科目でも同様に言えると思います
そして、2025年からの共通テストでは、これらの総合科目は試験科目にふくまれます。分類は6つに分けられます。

【2025年からの共通テスト】
➀歴史総合・日本史探求
②歴史総合・世界史探求
③地理総合・地理探求
④公共・倫理
⑤公共・政治経済
⑥地理総合・歴史総合・公共

となります。細かい選択方法については大学入試センターのサイトなどから見ていただけると幸いです。この組み合わせから1ないしは2つを選択するのですが、組合せ不可のものもあります。文系・理系の選択区分についてはまだ不確定な部分があるので、こちらでは言及を避けたいと思います。

3回にわたり、教科書展示会の報告を行いました。僕としても知らなかったことが多く、非常に勉強になりました。そして改めて教科書学習の大切さを知り、自分が今まで蓄積してきた知識に加えていきたいと思います。それを踏まえて、中学社会の教科書を先日大量に注文して、より解析に時間を作りたいと思っています。それを現在行っている高校入試問題解析、予想問題作成などで還元していき、高校内容の接続につなげられるようにしていきたいと思います。

皆様のサポート、よろしくお願いいたします。