2022年公立高校入試 雑感1

本日もよろしくお願いいたします。いつもなら問題を解いた雑感を公式Twitterのほうでアップするのですが、ここ数日は入試問題の公開が多くなり、問題解析が追い付いていませんでした。さらに、先日、携帯電話の機種変更を行ったこともあり、多少お休みしていたところもありました。そのため、問題は解いたものの、雑感をTwitterのほうでアップできなかったのです。

今回は、3/15現在で解いた問題の雑感、新語などの問題、そして、気になる予想問題の的中情報などの第一弾をまとめたいと思います。
最後までお付き合いよろしくお願いいたします。
なお、今回、新機能として小見出しが使えるようになったみたいなので、試してみたいと思っています。


■3/15現在で問題が公開されている府県

まずは、3/15現在で問題などがWeb上で公開されているところをまとめたいと思います(この時点では兵庫県のみ未実施のため、ここでは未公開で出しています)。

➀問題・解答など全て公開されている(太字は吉野がすでに解いた問題)

北海道青森、宮城、秋田、山形、福島、栃木茨城、群馬、埼玉千葉東京神奈川、山梨、長野、新潟、静岡岐阜愛知(A・Bとも)、三重、滋賀、京都、兵庫(ファイルとしてまとまっています)、奈良、和歌山、岡山、広島、愛媛(ただし無料Web会員にならないと閲覧できない)、鹿児島、沖縄

②解答のみ公開されている

・石川、大阪(毎年4月上旬に問題も公開)、山口、福岡(問題は著作権の了承後に公開)、大分、熊本

③YouTubeで問題・解答など公開(①・②のケース以外)

・高知

④3/15現在は未公開

・富山、福井、鳥取、島根、香川、徳島、佐賀、長崎、宮崎

現在、14都道府県を解いております。このうち、神奈川県、東京都、埼玉県、千葉県、静岡県、北海道、茨城県、広島県については雑感を公式Twitterの方で紹介しています(うち、神奈川県と広島県は公式noteで解説速報を行っています)。ここでは、現在解いている5県の問題を中心に簡単な雑感を話したいと思います。

■青森県公立高校入試雑感

青森県は、大問は7題ですが、難易度はそこまで高くなかったと思います。バイオエタノールなど環境関係の問題の頻度が高かったため(解いた問題や解答の未公開しているところを見ても4・5府県の出題はありました)、大問4で広島県と同様に食生活の歴史をテーマにした問題が出ていました。そして、関東大震災も問われていたのですが、これは来年も出題が予想されるとみていいでしょう(来年で関東大震災が発生して100年になります)。よって、震災関係のテーマ史は警戒しておいた方がいいでしょう。少しだけ差がつきそうなのが、大問5の(1)のイの問題です。公共の福祉で人権制限される例を答える問題です。

注目すべき問題は大問6の(4)です。この問題は正答率が10%を切る可能性の高い難問です。なぜなら、エシカル消費に関する知識はほとんどの受験生は知らないと思います。そして、このエシカル消費は今回の新教科書から初めて出てきた新語です(現在手元には東京書籍の公民のみありますが、P171の欄外に掲載がありました。ただし、索引には掲載はないです。その他の教科書については追って調べたいと思います)。そして、「詳説用語&資料集社会3600」(受験研究社)の新版にのみ掲載がありました

エシカル消費 語句レベルC
・消費者が、環境や社会・人権などに配慮した商品やサービスを選んで消費すること。

詳説用語&資料集社会3600より

ここの学習が十分にいっていなかった受験生が多かったのでは、と思います。ですが、新課程の内容も出題があると想定していたので、この新語にも注意を払えたかどうか、です。来年度以降は青森県以外の府県でも警戒しておきましょう

全体的には標準ですが、一部の難問を捨て問題として割り切れたかどうかがポイントです。ここに気を取られすぎて失点を重ねると元も子もありません。

■栃木県公立高校入試雑感

栃木県は大問が6問ありました。短文記述問題が6題でしたが、要所要所で少し長めの記述となっているので、点差が分かれたところになると思います。
注目問題は大問1の問8のエコツーリズムに関する思考問題です。ここは自動車の乗り入れに関する知識を活用して解かないといけないので、単純知識の丸暗記を中心にしていた受験生は苦戦したと思います。
もうひとつ注目問題は大問3の問7です。外国人居住区に関する知識は資料を見たうえで、解かないといけないのです。外国人居住区に関する内容は教出・東書の教科書に掲載されています。つまり、教科書学習を大切にしてほしいと思います

その他で気を付けないといけないのが、安保闘争に関する一問一答もありました。これについては、戦後学習がしっかりとできている受験生にとっては簡単な問題ですが、追い付いていなかった方にとっては苦戦したかもしれません(教科書には太字で掲載アリ)。
だからといって、語句の太字だけを追う学習は効果的ではありません。その辺りも十分に承知したうえで学習を進めていかないといけません。そして、学校の進度が遅れているという理由で戦後学習を軽視するのはよくないと思います。正しい学習計画を立てて学校で指導していただきたく思います。

そして、今年出題頻度の非常に高いテーマであるSDGsの出題がされています。僕の予想では2030年前後まではこれらをテーマの題材として出題する都道府県が増えるとみています。たとえ三分野総合問題として出題してなくても小問での出題も予想されます

■愛知県A日程公立高校入試問題雑感

愛知県は記号問題が中心の問題で、どちらかというと満点勝負になるところが多いです。今回僕が解いてみて大変な問題だったのは、大問3の(3)です。この問題はw・x・y・zの4つの府県がどれなのか、がわからないと解けない問題です。説明文ではどの府県か判断するのは容易ですが、それを表と整合して判断するのは点差がつきやすい問題だったかもしれません。ポイントは海岸線の距離と国宝建造物の件数で京都と奈良はそこまで難しくないと思います。が、兵庫と大阪は昼夜間人口で判断か海岸線距離で判断するかになります。より多く海に面しているのは兵庫と判断できるので、そこから区別していきましょう。これらの関連知識や背景知識がない人はこういう類の問題を見て動揺したかもしれません。

大問5の(3)の条文は確実にチェックしておかないといけません。教科書の巻末に主要な条文が掲載されていますので、確認しておきましょう。労働条件に引っ張られすぎると労働組合法と間違えてしまいます。
次の(4)も単純知識問題で解こうとするとどこかで限界が来ます。基本的な知識を整理したのちに使えるレベルに引き上げる必要があります。ただし、全体的な難度としてはそこまで難しくないので、高得点勝負になったかと思います。

■沖縄県公立高校入試雑感

沖縄県は毎年ご当地問題が出ることで知られています。今回は2問ほど出題されていました。

大問1の問8では工業製品の世界生産に占める割合を示したグラフがどこの国のものか、その説明文がどれか、という二段階構成の問題でした。こういう問題は正誤文の判断ではなく、選択肢の文がどこの国かが分かれば十分です。ポイントはパソコンとスマートフォンです。これらの製品のほとんどはMADE IN CHINAと書かれているものが多いと思います。そこから判断するといいでしょう。これも背景知識や関連知識を使った問題となります。

大問2の問5(3)は栃木県と同様にエコツーリズムに関連する短文記述問題で、こちらは自然をどうするか、が観光客の立場でまとめていく問題です。難度はそこまでではないので、書けた人とそうでない人の点差がつきやすい問題です。

大問3の問4は消去法ですが、これがご当地問題です。琉歌と組踊という聞き慣れないものがありますが、琉歌りゅうかについては、東京書籍の教科書P91などに掲載があります。また、組踊くみおどりは山川出版社のP89、東京書籍のP91などに掲載があります。

【琉歌】
・17世紀になると、おもろにかわって、8・8・8・6音の定型詩に節をつけた琉歌が広まりました。
【組踊】
・18世紀には玉城朝薫たまぐすくちょうくんによって、能や狂言、歌舞伎、中国の京劇などの影響を受けた、組踊という歌舞劇かぶげきが成立しました(山川P89では中国皇帝の使者をもてなすと記載がある)。

東京書籍P91より

ということは、これはご当地問題といっても、教科書に掲載がある以上は、他府県でも今後警戒する必要がある、といってもいいでしょう(ただし、沖縄県以外の府県では出題頻度は下がりますが)。なお、どちらも用語チェックはしていたがスルーしていたかもしれません。追って追加しておきます

そして、今回の会心の一撃の一つが、大問4の日本の世界遺産でした。これは以前、予想問題でも掲載していました(ただし問題が的中していなかったので、完全的中とは言いませんが)。
今回の難問のひとつが、問6(1)です。なんと、沖縄が日本に返還された年月日を問う問題です。普通は1972年だけを問わせるのですが、日にちまで聞くのは少し難問になります(東京書籍の教科書には5月までは記載されているが、帝国書院の教科書には5月15日まで記載があります)。(2)も沖縄に関する背景知識がないと解けない問題です。ちなみに、イのドルが使用された、については、山川のP277に郵便切手から読み取れます。

これらからもわかるように、入試問題は教科書を基本にして作られていることがわかります。僕も複数の教科書を解析することで今まで見えてこなかったものが少しずつ見えてきた感じがしました。

また、大問6はSDGsをテーマにした総合問題です。これも僕が出題されるであろう問題と指摘した問題です。
沖縄県の大きな特徴としては、選択肢問題は誤りのものを選ぶ問題が他府県と比べて多いのです。

勘違いする講師は、SDGsをテーマにした問題が出る、といって的中した!というのは多いですが、具体的にどういった形式の問題が出るのか、を解析しないと出題形式の分析をしているとは言いません。そのため、僕はテーマが出題されても、僕が想定した問題が出ていなければ的中とみなしていません。テーマとしては出ても、どういう切り口で来ているのか、を知ることで問題のストックを増やしていくのです。それをカスタマイズして、どういう新たな切り口を見ればいいか、も知らないといけません。

■教科書学習を大切にしよう

今回は4県を中心に解析を行いました(その間に兵庫県も解きましたが、こちらはすでに公式Twitterで解析の雑感を出しています)。どの府県も難易度は全体的にやさしくなっていた感じでした。僕が実際に難しいと思ったのは解いている中では北海道・静岡県くらいです。

これらに共通した話ですが、今回は手元にある教科書にも気を付けながら解析を行いました。つまり、今回の公立高校入試でどれだけ教科書が反映されているのか、を知ることで、土台を固めた後に教科書を使って知識の定着を図ってほしいと思い、検証してみました
昨年の解析・雑感と大きく異なるのは、教科書に文言があるのか、ということを確認しています。その証拠に新語であっても教科書に掲載があるので、最後の最後で教科書の確認をしてほしいと思います。

塾のワークや問題集などを使っても構いませんが、関連知識と背景知識の強化のためにしっかりと教科書の確認も忘れないようにしましょう(特にコラム的な話についてはワークや問題集でも対応できないところもあります)。これは社会に限った話ではありません。他の科目でも教科書学習は基本です。補助的なものを使って知識の強化を行うのは悪くありません。その中でも優先してやらないといけないことを優先順位をしっかりつけて行いましょう。

ぜひ、指導者の方には、自分の地域で使っている教科書の解析をしっかりと行ってほしいと思います。それを知ることで、本当に必要な知識が分かってきます。

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