2023年広島県公立高校社会 入試解析

本日もよろしくお願いします。全国各地で公立高校入試が本番を迎えています。僕もこの時期はそれぞれの解析を行っているところです。今年はそれに加えて解説作成も行うことになります。
この記事では解析記事を中心としています。一部解説記事も入れています。広島県の問題では自由記述問題がありますが、別解も明記していきます。そのため、別解についてご意見等ございましたら、コメントなどで申してください。なお、問題については、鷗州塾のサイトより問題を入手してください。
最後までお付き合いよろしくお願いいたします。
なお、今回の記事については、広島県教育委員会様より使用許諾を得た上でルールを守って使用しています。また、別解以外の模範解答については広島県教育委員会様より発表されたものを使ってください。もし、広島県教育委員会様より指導が入り、公開などに制限がかかる場合もあります。その場合は改めてアナウンスさせていただきます。


■2023年広島県公立高校社会 入試傾向

今年の広島県の入試問題ですが、今年から入試日程が変わったこと、評定計算が変わったことなどの変更がありましたが、広島県の社会の問題については大きくは変わりませんでした。
1つ変わったことといえば、短文記述問題・論述問題の出題量が減ったこと、思考型の正誤問題が増えたこと、完答問題が減ったことなどはあります。

【2023年広島県社会 問題形式】
1 エネルギーに関する地理総合
2 法制史(歴史総合)
3 人権と日本国憲法
4 地域の伝統的な生活・文化(そろばんをテーマにした三分野総合問題)

今年は短文記述問題及び論述問題が6題ありますが、一時期の問題数からは減少しているので、記号問題での正答率が勝負を分ける可能性が高い気がします。

※今回の解析解説についてですが、広島県教育委員会様より使用許諾をいただいています。教育委員会様からの使用上の注意を順守したうえで使用しておりますので、写真など著作権が関わるところは使用できないことをご容赦ください。
※また、今回の入試解析から入試ランクが活用できるところは掲載させていただきます。全体的な入試ランクが必要な場合は、「中学社会用語集 2022年完成版」の記事を購読ください。

■大問1 解析

大問1はエネルギーに着目した地理総合の問題です。
なお、余談ですが、今回余力があれば、エネルギー関係のテーマ史問題を予想問題で上げようと思っていました。ですが、出張前に少しだけ疲労がたまってしまい、作成することができませんでした。

問1(1) 日本・アメリカ・中国・ノルウェー・ブラジルの総発電量の内訳グラフを見る問題です。
火力発電が中心なのは日本・中国・アメリカです。いは原子力発電が多いため、こちらがアメリカとなります。よって、あは中国と判定します。ブラジルとノルウェーですが、どちらも水力発電が多いところですが、より水力発電に依存しているのはノルウェーです。よって、えがノルウェーでうがブラジルです。

問1(2) 日本の火力発電所の立地場所の中心地は海の沿岸です。理由としては、原材料の輸入、製品の輸出に便利だからです。このタイプの問題は短文記述問題でも出題されます。近年では出題頻度は少し減っていますが……

問2(1) 鉄鉱石の輸出相手国を答える問題です。ポイントは上位国に中国・
日本とあるので、この国はオーストラリアです。

問2(2) プラチナの輸出先上位5か国への輸出を示した地図を選ぶ問題です。レアメタルは中国・アフリカ辺りでの生産が多いです。そこから考えるとエしかありません。アはスペインから輸出しているためオレンジ、イはドイツからの輸出なので自動車、ウはインドからの輸出なので綿糸と判定できます。
入試問題ではすべて判定する系の問題でない限りは判定した時点で次の問題に進んでもいいですが、演習の際はすべての品目を判定できるようにしておきましょう。

問3 バイオマス資源の活用の取り組みについて述べたものを資料を使ってまとめる短文記述問題です。
資料1では「町内の乳牛の排せつ物を回収し、微生物による発酵で発生させたバイオガスを利用して発電する」とあり、酪農を利用してバイオマス資源を活用しています。
資料2では「高松市にあるバイオガス発電設備では、廃棄されるうどんを回収し、バイオガス化して発電を行う」とあり、飲食業でバイオガス資源を活用しています。
問題文は共通する事項をまとめて空欄部の後ろにある「バイオマス資源が地域的に供給されている」につなげられるように記述したらいいでしょう。最低限でも書かないといけないのが、「発達した産業活動」という記述はしなければ点数は出ないと思います(資料を活用できていないため)。

以上、ここの問題は問1(1)と問3が点差がつくと思います。問1(2)、問2(2)については落としてはいけない問題だと思います。

■大問2 解析

大問2は法制史の歴史総合です。今回の形式はひと昔前の広島県の出題形式と同型になっていました。相違点は年代並び替え問題が出題されていないことです。

問1 8世紀初めの日本のできごとを選ぶ正誤問題です。歴史の正誤問題は時期正誤が中心です。
アは葛飾北斎から江戸時代、イは遣唐使から奈良時代、ウは宋・栄西から鎌倉時代、エは紫式部・源氏物語より平安時代です。
8世紀初めは律令政治・奈良時代です。そこから正解はイです。

問2 御成敗式目が制定された背景を答える問題です。
といいたいのですが、実際は歴史名辞をみて時期を判定するだけの正誤問題です。
アは平氏から平安時代、イは守護大名から室町時代、ウは地頭から鎌倉時代、エは国司と郡司とあるので奈良時代と判定できます。鷗州塾の解説では律令期とありましたが、奈良時代の方がいいと思います。
理由としては、国司・郡司・里長の関係で郡は大宝律令が制定される前は「評」となっていたので、僕は律令期よりも奈良時代で判定しました。

問3 一乗谷で判定しましょう。一乗谷は朝倉氏の城下町とわかればここは簡単です。

問4 武家諸法度の一部と関連するできごとに述べた文章を資料を見て短文記述で答える問題です。
資料より、広島藩藩主の福島正則は広島城の修理を幕府の許可なく行ったため広島藩の大名の地位を奪われた、とあります。このように幕府は命令に従わなかった大名を処罰することができる権限がありました。このようなことを書けたら問題ないと思います。
採点基準ですが、部分点はほぼないと思っています(多少の誤字なら減点はされるけど)。

問5 地租改正の税を納める方法を米価の推移を見て答えさせる短文記述問題です。地租改正でこのような出題のされ方は初めてですが、基本的には米納から金納に変わった理由をグラフを見て答えるだけの問題です。
グラフより、米価が毎年変動しているため、不安定であることがわかります。そのため、米納よりも金納のほうが税収入が安定します。ここでは税収の安定まで踏み込んだ方がいいでしょう。
採点基準としては、①グラフより米価が不安定であること、②米納よりも金納する方がいい、③金納にすることで税収が安定する、のポイントを見て採点されると思います。このタイプの問題は短文記述といえども落としてはいけません。もし、この問題で点数が取れなかった人は、今回の形式の問題について慣れていなかったのでは、と思いました。

問6 主君が家臣に土地の支配を認めることで、過信が主君に従う関係ですが、これは幕府が行われていた時と考えればいいと思います。
よって、鎌倉時代・室町時代・江戸時代を選べばいいでしょう。

問題については、標準的な問題が多かった気がしますが、一問一答形式だけで学習していた人にとっては少し苦しかった問題だったかもしれません。

■大問3 解析

大問3は人権と日本国憲法に関する単元別の問題です。近年の広島県の公民分野はこのように一つの単元を掘り下げる形式の問題が中心となっています。

問1 民主主義の資料を見て難について述べているかを答える問題です。ポイントは「『なんじ臣民』から『われら国民』」「国民の代表者」というところです。臣民から国民に変わるということは、大日本帝国憲法から日本国憲法に変わった、ということがわかります。つまり、国民主権を答えるといいでしょう。

問2 人権保障の考え方と日本国憲法の内容について空欄補充の組み合わせ問題です。
「憲法によって国家権力を制限して、人権を保障する考え方」、「(   )である憲法に違反する法律などは無効」という2つの語句をそれぞれ選ぶ問題です。これ、もし選択肢でなかったら前者の語句を入れられましたか?おそらく大半の受験生は入れられないと思います。今回は選択肢があったので、ギリギリ立憲主義を入れることはできたと思います。後半の最高法規は入れられるので、間違えていたとしてもイになると思います。
ただし、ダミーの選択肢が資本主義なので、空欄の前後から資本主義を入れることは不可能とわかれば消去法でも行けると思います。
これは、昨年の山口県(切通)と同様の形式となります。

なお、立憲主義(立憲政治)ですが、入試ランクはCですが、短文記述問題でも出てきます(こちらの入試ランクもCとなっています)。

問3 製品の欠陥、企業は消費者に賠償しなければならないという法律、より製造物責任法(PL法)を選びましょう。
入試頻度も高くランクはAランク、短文記述問題や正誤問題でも聞かれます。こちらのランクはSランクです。確実にここは取りましょう。
ダミーの選択肢で気を付けるのは、消費者契約法です(入試ランクはC)。類語の消費者基本法(入試ランクはB)と混同しないようにしましょう。

問4 資料の説明が新しい人権のどれに該当するか、という選択問題です。自動車騒音等により睡眠、会話、テレビの聴取等に対する妨害から生活環境のことを言っていることがわかります。よって、環境権となります。
環境権のランクはAとなります。

問5 労働契約について述べた資料をみて、団結権が保証されている理由を問う短文記述問題(字数からは論述問題とみていい)です。
攻略ポイントは、労働者と会社との間で「働きます」「雇います」という約束が労働契約、どういう条件で働くか等の契約内容も労働者と会社の合意で決めるのが基本、ということから、①労働契約は労働者と会社との間での合意で決めるのが基本、であること、②労働者は経営者が決めた契約内容をもとに合意するので、弱い立場にあること、③それによって、労働者に不利な契約が行われる可能性があること、④その対応として、労働者が団結して対等な立場で交渉できること、以上4点をもとにまとめるといいでしょう
採点基準も上記の4点をもとにされると思います。最低でも➀・②については資料から読み取ることができるので、ここはまとめられるようにしましょう。あとは、それをもとに③・④の関連をまとめられたか、です。上位校ではこの問題は点差がつく問題です。そして、入試点数からしても総得点の2.4倍の点数配分があることも考えると、部分点は最低でも欲しいところです
なお、団結権については一問一答形式の問題でBランクで出ていますが、短文記述問題は今回が初めてのランクカウントになります。

公民は比較的点数が取れる問題であると同時に、踏み込んだ問題も出てくるので、より考察できる関連知識・背景知識を有していた受験生は有利だったと思います。

■大問4 解析

大問4は、地域の伝統的な生活・文化をテーマにそろばんの歴史をまとめた問題となります。
今回の問題でかなりの点差がつく単元になったかもしれません。

問1 14世紀前半までの世界や日本の交易に関する正誤問題です。アはインドのアヘンより19世紀半ば(江戸時代後期)、イは宋の商人、宋銭から12~13世紀(鎌倉時代)、ウは世界最大の生糸の輸出国は20世紀初め(明治時代後期)、エはポルトガルの商人、火薬や鉄砲より16世紀半ば(戦国時代)とわかります。

問2 この問題は、そろばんが町人に広まった理由を資料を見てまとめたものを見て空欄に入る語句を答える問題です。
おそらくこの話は両替商の話では、と思います。金銀の交換をしていた機関は両替商だったので、ここでは両替を入れるといいです。間違っても両替商としないように。

問3 そろばんに代わって電卓が使われるようになったことを出荷台数・輸出台数・円相場のグラフを用いて空欄に当てはまる語句の組み合わせ問題です。円高・円安については今年は出題頻度が高くなるとみて、紙面講義を出しましたが、予想は当たりました。
ここでは1985年以降から円の値段がドルに対して低くなっていることがわかります。これは、円の価値が高まっているため円高、とわかります。歴史的にはプラザ合意がされた時期であることが分かれば急激な円高になった、ということがわかります。円高になると、輸入産業は有利ですが、輸出産業は儲けが少なくなるため不利になります。
ダラダラとまとめているものの、結局は円高の仕組みが分かっていたかどうかの問題だったことがわかります。

問4(1) 播州そろばんについて調べ、木材を材料としていることをみて、2つの地域の共通点を調べたことをまとめた短文記述問題です。
今回は共通点は上から順番に➀自然条件、②刃物類の生産が盛ん、③歴史的背景となっていることがわかります。そこから➀・②の内容に加えて、そろばん生産の技術を生かせる環境だった、とつなげれば問題なく書けると思います。これは③につなげられたかどうかが点差を分けると思います。

問4(2) 今年も出ました、自由記述問題です。広島県は必ず1題は自由記述問題が出ます。ポイントを外さないで答えられれば問題ないですが、書き方のアプローチを知らなければ当然記述もままならないです。
条件をよく読んで、それに当てはまるように書けば最低限でも点数につながると思います。配点も高いので、最低でも部分点は取るようにしましょう。

アプローチしやすいのはYの方です。4つの工程に分業されている、一人の職人は一つの工程にしか習熟していない、人数が少なくなっている、などの問題点を現在の状況に当てはめて若手が職人として入社した、というところに着目し、それが伝統的技術で作られているというところからまとめるとやりやすいです。

■大問4 問4(2)別解例

そして、この問題は自由記述問題のため、様々な解答例が出ると思います。広島県が発表した解答例は上記のものを使ってました。なお、鷗州塾・ホームテレビ(田中学習会)の解答速報では別解については触れられていませんでした
そこで、僕はもう一つのXについて考察して、解答例を作成したいと思います。

問題点のXは昭和30年代後半から40年代前半、年間約350万丁の播州そろばんを製造していたが、現在は年間約7万丁にとどまっている、とあります。つまり、製造数が減少しているということは、需要が減少している、ということなので、需要を増やせば製造数は増えるのでは、と判断できます(そのために供給量を増やさないといけないのは言うまでもないですが……)。
Xの問題点に対して現在の状況に関係のありそうなものは、「海外でも、そろばん学習で集中力や判断力、持続力が向上する効果が注目」「首都圏でそろばん教室の運営に乗り出す大手学習塾が登場」が該当しそうだとわかります。そのため、認定される条件は「生活に豊かさと潤いを与える工芸品」ということがわかると思います。そこで、豊かさと潤いを与える条件により適しているのは海外のほうではないか、と思い、それをもとに解答例を作りました(学習塾の方についてはそろばん教室を運営に関するものを関連知識でまとめるのはやや難しいかもしれません)。また、普及をさせるためにそろばん体験会を開催し、インターネットや動画サイトを活用して播州そろばんをアピールすることを添えてもいいと思います。

【吉野の解答例】
播州そろばんの生産を継続していく上での問題点:X
取り組み:海外でそろばん学習で集中力や判断力、持続力が向上する効果が注目されているため、生活に豊かさと潤いを与えることができることをアピールするため、播州そろばんを使ったそろばん体験会やインターネットや動画サイトなどを活用して普及活動を行うようにする。

難しい回答にならないように、ノートや条件などにある語句を可能な限り使って解答例を作りました。もし、上記の解答で疑問がありましたら、コメントなどで申してください。

■平均点予想は?

では、広島県の予想平均点ですが、例年と比べて短文記述問題・論述問題の出題数が減り、記号問題の出題が増えたことでやや解きやすかったのでは、と思います。
点差がつく問題としては、記述問題以外では、大問1の問1、大問3の問2、大問4の問3です。そこから考えると確実に点数を取りたい点数は24点分です。そこから考えると、予想平均点は23点~28点くらいだとみています。一時期の難問だったときよりはやりやすかったとは言えども、短文記述問題や論述問題での出来が点差を分けるのは事実です(50点満点中20点は短文記述問題や論述問題)

■次年度以降に向けての対策

広島県の受験に向けてですが、まずは基本土台の知識を身につけてください。そのうえで、3年間のまとめ、総合問題集などを使って復習をしましょう。ここで、学校で使っている3年間のまとめと類似の問題集を使うのは愚の骨頂です。どうしても定着ができていない生徒が行うのであればいいのですが、あまりにもできている人は同じような問題集を行うのはよくありません。もし、行うとしても、テーマ別の問題を中心に行うなら効果はあると思います。
ただし、テーマ別の問題集は現状、市販では出ていません。使う場合は『「解き方」が身につく問題集』(旺文社)を使って学習するのがいいと思います(テーマ別の問題集については別記事でアップしています)。
実戦問題としては「実力判定テスト10」(東京学参)などを使うといいでしょう。英語・数学・国語についてはレベル別に分けているので、最後の仕上げに行うといいでしょう。ただし、「○○県対策」シリーズ(教英出版)はおススメしません。なぜなら、中身はどの府県でもほぼ同じで、名前だけ○○県と使っているからです。どうしてもこの問題集を使いたい人は、定期テストで50点取れない生徒が行うのであれば問題はないと思いますが、早い段階でこの問題集からの脱却をしてください

普段から学習習慣をつけておくことが大事です。もちろん、英語・数学などの主要科目も早い段階で仕上げておくことがいいと思います。
もちろん、塾などで主催している模試もしっかりとやっておくのもいいでしょう。試験後に復習できるようにしましょう。

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