関連知識の活用

本日もよろしくお願いいたします。本来なら各都道府県の入試解析を行う予定でしたが、昨日のあるツイートを見て少し気になったことがあったので、そのことについて話したいと思います。
それを踏まえて、僕が日頃から提唱している3つの知識についての活用を話していけたら、と思います。
無料公開です。よろしくお願いいたします。

■問題のツイートとは?

まずは、昨日学校現場の先生だと思われるあるツイートを見ていただきたいと思います。

このツイートについて、共感される方、やや嫌疑を持たれる方と分かれていました。僕はどちらかというと後者になります。
その理由は、僕の引用RTにあります。

そう、この先生は汎用知識や関連知識などを意識せずに、教科書にある内容、公民未習を理由に理解させるのが難しいと思っているのです
ですが、これは関連知識や汎用知識で解決できる話なのです。その話は後述で。

学校現場でも関連知識や汎用知識を使わずに指導している人がいることが明るみになったことで、少し残念に思いました。アクティブラーニングを行うのであれば、基本的な知識は必要であるが、それとは別に周辺知識・関連知識・背景知識の3つの知識や汎用知識を意識して使えるようにしなければなりません
では、ここから、今回の話について紙面講義として解説をしていきたいと思います。公民が未習でも上記の話については解決できます。

■米騒動

米騒動とは、「1918年にシベリア出兵を見越して商人が米を買い占めたことで、米の価格が上昇して米不足が起こった」ことです。これは普通に学習をしていれば分かると思います。
この内容は公民の経済分野で詳しい説明をするのですが、これは言っている意味が分かればそこまで難しい内容ではありません。また、公立入試や定期テストでは記述問題で普通に出てくる用語説明型の問題です。

先ほどのツイートに戻っていきますと、理解させるのが難しい、といっていますが、果たしてそうでしょうか?僕は江戸時代の貨幣の動きを知っているのであればある程度の話はできるといっています。
そして、地理で促成栽培や抑制栽培の話が出てくるのですが、その原理が分かればこの話もそれを置き換えているだけだとわかります(実際、読み返してみたときには、促成栽培の説明の方が関連性が高く、貨幣の話だと少し無理があるところもあったので、促成栽培の説明で行わせていただきます)。

促成栽培とは、「野菜の早づくりで夏の野菜を冬に出荷する」ものです。ここで、重要なのは、「夏の野菜を冬に出荷する」ところです。冬には夏の野菜は市場に出る量は夏に比べると少ないため、ピーマンなどの野菜の価格が上がるのです。
そう、ここです。ある時期に「市場に出る量が少なければ価格は上がる」のです。これは別に教科書内容の理解でも何でもなく、世間一般常識の話なのです。そこから話を膨らませてもいいと思います。
この原理が分かっていたら、先ほどの米騒動でも同様のことが言えるため、説明がしやすくなります。これが僕がよく言う関連知識です。そして、「市場に出る量が少なければ価格は上がる」の部分は汎用知識として活用しなければなりません。

これは学校の先生方は授業研究の際に知っておく必要があります。教科書にある文面だけで指導してもこの発想にはたどりつきにくいです。
また、米価上昇についての話は、享保の改革でも説明はある程度できます。つまり、関連知識の意識ができていれば、原理は同じなのです。それを教科書の文面だけで理解させようとしているので、難しいのではないのでしょうか。

歴史だろうが地理だろうが公民の知識が必要な時があります(もちろんその逆もあります)。それを公民が未習だから、という理由で理解させるのが難しいのならば、失礼な言い方になりますが、先生方の指導・研究に問題がある、と言わざるを得ません。関連知識や汎用知識などを活用していないのです。

■江戸時代の貨幣制度

もう一つ、米騒動の話で江戸時代の貨幣制度の話を出しましたが、大体の話はこちらでも解決はできます。

江戸時代中期に「金銀の産出量が減ったことで、金の含有量を減らした質の悪い貨幣を鋳造しました」とあります。その結果、「貨幣量が増えたが、貨幣価値が下がったことで物価が上昇した」とあります(このことをインフレ、インフレーションといいます)。
根本的な話は先ほどとは少し異なりますが、やろうとしていることは大きく変わりません。そして、この話は後々に出てくるインフレーションやデフレーションにも関わってきます。物価上昇の仕組みはこの段階で指導することになるのです。
つまり、公民を学んでいないから理解させるのが難しい、というのは通用しません

上記記事は周辺知識・関連知識・背景知識の3つの知識を活用するための内容を記事にしたものです。後半には汎用知識についても触れています。今の話でなにそれ、と思われた方は上記の記事を見ていただきたいと思います。

■関連知識を用いた入試問題は既に出題されている

これはいろいろな記事、紙面講義などでも話しているのですが、すでに公立入試では関連知識を活用した問題が出題されているのです
例えば、摂関政治の権力の握り方と平氏の権力の握り方ですが、やっていることは全く同じなのです。しかし、それを一つ一つ別々で指導している関係で関連性を見つけようとしないのです。いや、見つからないのです。

もし、平氏政権の系図を見せる授業をするなら、藤原氏の系図を一緒に出すことで、共通点がないか、を発見させる授業をしてもいいと思います(実際に入試問題ではこの形式の問題が出ている)。今まで使った知識で活用できる知識がないか、を考えさせることで地頭力がつくのでは、と思っています。

もちろん、基本的な知識、語句・内容の知識は必要です。ですが、それを活用する方法を知らなければ意味がないのです。だから勘違いして「社会は暗記科目」と片付けられてしまうのです(個別指導の学生講師ほどこの傾向は強くなりますが、この限りではない人もいるのはお知りおきください)。暗記科目ではあるが、何を、どう覚えるのか、を関連付ける必要があるので、間違えないようにしましょう。

そして、現在は地理と歴史、地理と公民、歴史と公民といった関連づけも必要になっており、いくつかの府県の公立入試で出題されていました。そのため、周辺知識・関連知識・背景知識の3つの知識はこれからの学習ではより必要な知識になります。問題を解くときも何となくで解くのではなく、考えて解くようにしましょう。

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中学社会・日本史講師吉野@予備校講師
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