正答率の高い問題

本日もよろしくお願いいたします。
先日、正答率の低い問題について考察を行ってきましたが、その逆に正答率の高い問題はどういう考察なのか、について話していきたいと思います。正答率の高い問題にも低い問題と同じように特徴があるのか、を考察したいと思っています。低い問題は考察要素がたくさんありますが、高い問題ほど考察が少ないため、少し踏み込んで考察したいと思っています。この考察は、生徒の出来・不出来を考察するうえで重要な要素になると思います。
無料公開で今回も行います。よろしくお願いいたします。

■正答率の高い問題のアプローチ

では、正答率の高い問題について、どのような問題が正答率が高いでしょうか。

➀採点ミスなどの理由で全員正解
②基本的な語句や内容を答える問題
③一般的な正誤問題・語句選択問題
④語句を埋める空欄補充問題
⑤簡単な資料の読み取り問題

このあたりでしょうか。➀についてはこの話の趣旨と異なるので、残りの②~④については考察をしなければならないと思います。こういう正答率が高い問題が多いと平均点も高くなり、逆に少なければ平均点も低くなる傾向があります

そして、僕が正答率の区分をするときは、以下のような基準をもとに難度設定を行います。

【難易度選定】
➀正答率80%以上:易
②正答率60%以上80%未満:やや易
③正答率50%以上60%未満:標準よりも易
④正答率40%以上50%未満:標準よりも難
⑤正答率20%以上40%未満:やや難
⑥正答率10%以上20%未満:難
⑦正答率10%未満:激難

と、少し難に寄せた基準を作っています。僕の紙面講義・入試解析・全国平均点などでもこれをもとに問題難易度を選定しています。そして、その選定は「全国高校入試問題正解」(旺文社)と合致しているのかどうか、というのも今後は考察していきたいと思います(但し、正答率を公表していないところでは過去の類似問題から判断しないといけません)。

では、これから2020年の公立入試問題をもとに考察していきたいと思います。今回は問題の解答解説が中心ではないことはお知りおきください。どのような知識を活用するか、正答率が高い・低い理由の考察が中心となります(今回は正答率が高いことを中心に話していきます)。

■基本的な語句や内容を答える問題

まずは、正答率が高いものの一つである、基本的な語句や内容を答える問題について考察しましょう。この問題は、基本的に地理や公民で見られることが多いです。ただし、これについては歴史については正答率がなぜか低いので、その比較をしたいと思います。

➀2020年北海道公立入試 大問3 問5
図3(省略)は、一つの事件について、3回まで裁判を受けることができる仕組みを示しています。この仕組みを何といいますか、漢字3字で書きなさい。

この答えは三審制です。解答のポイントは「一つの事件について、3回まで裁判を受けることができる仕組み」とあります。これは用語集でもほぼ同様の意味で三審制をまとめています。

【三審制】
1つの事件について、3回まで裁判を受けることができるしくみ(「中学社会用語・資料集」(旺文社)より)

これは用語集の内容と問題文が完全に合致しているため、正解した人が多かったのでは、と思います。実際の正答率は75.1%ですが、漢字指定のため、漢字が書けなかった人もいたのでは、と思います。その分、正答率が80%いかなかった理由ではないのでしょうか。

②2020年北海道の問題です。
大問1 問3(3)
鎌倉時代に、武士の慣習をもとにつくられ、武士の裁判の基準となり、その後、武家政治の手本となった法を何といいますか、書きなさい。

この答えは御成敗式目(貞永式目)です。これは鎌倉時代の法令として基本的な問題です。では、用語集ではどう書かれているでしょうか。

【御成敗式目】
・1232年、執権北条泰時が定めた鎌倉幕府の51か条の基本法。御家人に対して、頼朝以来の武士の先例や、武士の慣習・道徳にもとづいて、御家人同士や御家人と荘園領主の間の争いを公平に裁くための裁判の基準を示したもので、長く武家法の手本となった。(「中学社会用語・資料集」(旺文社)より)

今回は問題文と用語集の意味が完全に一致しているわけではありませんが、ほぼ一致しています。にもかかわらず正答率は37.8%とふるわなかったです。この原因は、「鎌倉時代」というところに気を付けていなかったら武家諸法度と間違えた人がいた、知っている意味や内容で問題文が聞かれなかった関係で答えを出しきれなかった、ということが分かります。つまり、表面的な言葉だけ丸暗記している恐れがあると思います。その分が正答率の差になっている可能性はあると思います

ここからもわかるように、用語集と問題文が完全に一致した問題は正答率が高く、その逆に少し言葉の言い回しが変わると回答ができなくなるのです。これは、歴史だから、地理だから、という問題ではありません。恐らく学習法に問題があるのでは、と思っています。例えば、一問一答形式の問題を繰り返し解くにしても、同じ問題ばかりやっても意味がない、というのです。だから、同じ形式の言い回しが出たら自信もって答えられるけど、言い回しが変わった途端に同じ答えでも答えられないようになってしまうのです。

詳しい話は上記の記事で載せています。そのため、複数の問題集を行う必要があるのです。自府県の過去問を3回しても作業で行えば意味が全くありません。一つ一つの演習に意味や目標・目的を示しましょう

■一般的な正誤問題・語句選択問題

続いてはこちらです。一般的な正誤問題や語句選択問題です。こちらもどちらかというと正答率は高めの問題です。

➀2020年福島県 大問3(3)
このころ浄土信仰が盛んになり、藤原頼通は、阿弥陀仏の住む極楽浄土をこの世に再現しようとしてXを建てた。Xに当てはまる建物の名称として適当なものを、次のア~エの中から一つ選びなさい。
ア 平等院鳳凰堂 イ 慈照寺銀閣 ウ 姫路城天守 エ 法隆寺金堂

この答えはです。藤原頼通、阿弥陀仏より平等院鳳凰堂を導けるのは言うまでもありません。正答率は89.5%とかなり高いです。書きなさいの問題であっても正答率は70%以上いけたのでは、と思います。
これは、残りの選択肢が平安時代と異なるから、という理由で消去法でも解けるし、藤原頼通と平等院鳳凰堂をつなげて覚えている人が多かったと思います。
同じ福島県の問題で八幡製鉄所を書かせた問題でも正答率は74.7%と高い正答率を出しています。今回はこの八幡製鉄所のイラストもあったことが正答率の高さを表しているのでは、と思います。

■語句を埋める空欄補充問題

もう一つ、このタイプの問題も正答率は高めです。

➀2020年福島県 大問5(2)➀
次の文は、株式会社における株主について説明したものである。Dにあてはまる語句を、あとのア~エの中から一つ選びなさい。また、Eに当てはまる語句を漢字4字で書きなさい。
 株主は、株式を保有している株式会社の利潤の一部を( D )金として受け取ることができる。また、株式会社の最高意思決定機関である( E )とよばれる議決機関に出席し、会社の経営方針や役員を決定することができる。
ア 公債 イ 契約 ウ 配当 エ 資本

Dに入るのは、Eに入るのは株主総会です。なお、この問題は旺文社の「全国高校入試問題正解」では株式のところが株主になっており、少しおかしかったです(注:原本の問題と照合しましたら、株式でした。旺文社の記載がミスとなります)。これも、基本的な問題で言うまでもないと思います。
正答率は、Dが82.8%、Eが75.8%でした。公民分野は学習期間が比較的直近だということもあり、このような基本語句の正答率も高いのでは、と思います。

■これらを見て

正答率の高い問題は、出題頻度が高い問題、語句と内容が合致する(問題集の言い回しと同じケース)問題、単純正誤問題・空欄補充問題など知識系の問題、見たらわかる問題の場合、などが当てはまりますが、裏を言い返せば、このような学習を平気で推奨している指導者が多い、という問題点も浮き彫りになりました

これが偏差値が40くらいしかない人の場合は、上記のやり方をしても問題はありません。なぜなら、確実に点数が取れる問題で正解をしたいからです。出題形式については、他の都道府県で異なりますので、まずは自府県の出題形式をしっかりと知ることです。上記のやり方についてはある程度成績が上がってきたら次のステップに進んでください
今本格的に過去問をしなさい、とは言っていません。どのような感じで出題されているのか、ということを知るだけでいいです。その上で普段の学習と入試に向けた学習を両立させなければなりません。本格的に解くのは秋以降でも十分に間に合います。

これが偏差値55以上を超えている場合は、上記のやり方をしても成績は頭打ちになる可能性が高いです。となると、今度は短文記述問題等に取り組む必要があります。この学習は一問一答形式の学習では対応しにくいです。
語句だけ覚えていても使える知識になっていなければいけないし、内容と整合ができていなければ記述もできません。それらを定着させてから初めて次のステップに進んでください。

一問一答形式の問題集を使っての学習は、「テスト前や確認用」に留めておいてください。間違ってもこれ中心の学習にならないように。但し、偏差値が40くらいの人は最初のうちはこれを中心に行ってもいいと思います。が、その時には答えだけではなく、問題文の言い回しにも注目してほしいです。これができなければ、成績は頭打ちになります(実際はこの形式の学習アドバイスを行っていない方が多い)。これは普段の定期テストでも同じです。定期テスト対策を作業でやってしまいすぎると、応用問題で限界が来てしまいます。定番・出題頻度の高い短文記述問題でも正答率が下がっている理由は、普段の学習からきているのではないのでしょうか

正答率の高い問題と低い問題の違いはそれぞれありますが、正答率の高い問題ほどしっかりと定着させ、低い問題は原因を掴んで対応できる力を身に付けてほしいと思います。

皆様のサポート、よろしくお願いいたします。