公立高校入試解析 2023年和歌山県

本日もよろしくお願いします。今回は久々に公立高校入試解析を行いたいと思います。
今回の題材は2023年和歌山県を取り上げたいと思います。和歌山県の公立高校入試は正答率を公表していませんが、入試ランクとしてアップすることで大体のランクと平均点を合致させたいと思います。
平均点については、Web上では公表されていませんが、問い合わせたら平均点は教えていただけました。
それと、この記事については、メンバーシップ限定記事ですが、教育委員会様の了承をいただき、無料公開で提供させていただきます。この記事は公立高校入試解析のマガジン・メンバーシップで公開していますので、この記事を見てメンバーシップ入会等を検討いただけると幸いです。
最後までお付き合いよろしくお願いいたします。


■2023年和歌山県公立高校入試 概要

まずは、2023年和歌山県の概要をまとめましょう。大問は6題、100点満点で制限時間は50分です。2023年の出題は以下の通りです。

【2023年和歌山県の出題】
大問1 世界地理:赤道が通る国
大問2 日本地理:関東地方・九州地方
大問3 前近代歴史:時代の特徴をカードでまとめた問題
大問4 近現代歴史:戦争など転換点の歴史
大問5 公民(政治中心):青年年齢の引き下げ
大問6 公民(経済中心):人口減少・少子化問題

この年の平均点は49.3点です。和歌山県の社会は毎年平均点が低いのです。ただ、2023年は過去7年と比べると一番平均点が高かったのです。つまり、全体的に平均点が低いので、和歌山県の問題は良問でありながらやや難問の問題構成となっています。
では、どういう問題だったか、さっそく解析していきたいと思います。

■大問1 解析

では、大問1をさっそく解析していきましょう。大問1は赤道が通る国についての問題です。
なお、正答率が出ていませんが、入試ランクについては独自の資料があるので、そちらを活用させていただきます。なお、出題都道府県ですが、正答率の公表されている所だけの数値で、非公表のところの数値は含めていません。問題などについては、和歌山県教育委員会のHPサイトなどから入手してください。

【赤道関係の出題例】
1.赤道と本初子午線の関係
2.高山気候の特徴

大きなところはこういったところでしょう。あとは赤道を通っている地域の関連問題が出てきます。
なお、この形式については、下記の問題を見たうえで作ったわけではありません

問1 アメリカ大陸の東、アフリカ大陸の西にある海洋は大西洋です。

入試ランク:(13都道府県のデータより)

問2 
(1)ボゴタとマナオスの気候に関する問題です。雨温図の気温の部分を見たら判断できると思います。マナオスよりもボゴタの気温が低いのはボゴタが標高の高い地域にあるためです。標高が高いとなると気温が下がります。これは理科の知識も入ります。赤道付近にある都市といっても、標高が高い地域は限られます。ボゴタはアンデス山脈付近にある標高の高い都市です。
似たような地域ではアフリカでも問われることがあります。

入試ランク:(4県で出題、短文記述など)

(2)日本と14時間の時差がある経線は西経75度です。これはキトだけでなくニューヨークも14時間の時差です。

入試ランク:(4県)、(14都道府県で出題、時差の計算問題)

問3 東南アジアで色塗られた国が加盟している組織はASEAN(東南アジア諸国連合)です。

入試ランク:(15都道府県で出題)、(1県で出題、内容説明問題)

問4 アジア・ヨーロッパ・アフリカの人口推移のグラフ読み取り問題です。今回は全ての選択肢を吟味しないといけません。
Aは約60%前後で推移しているためアジアとわかります。Bは近年人口割合が増えていることからアフリカ、Cはヨーロッパとわかります。
え、Bがヨーロッパではないのか?という疑問が出る人いますが、それは単なる先入観で、人口爆発の知識が活用できれば、アフリカと判定できるはずです
単純知識で解ける問題ではなく、活用する問題が増えているのは事実です。

問5 特定の鉱産資源や商品作物の輸出にたよって成り立つ経済はモノカルチャー経済です。主にアフリカや東南アジアが中心で行われている経済です。

入試ランク:(11府県で出題)、(22都道府県で出題、記述問題など)

入試ランクとしては標準問題が中心ですが、問2(1)、問4で少し差がつく可能性があると思います。ただ、上位校を狙う生徒はここは満点を狙いたいところです。

■大問2 解析

大問2は日本地理で九州地方・関東地方を中心とした地域史の問題です。

【関東地方の出題形式】
1.地形に関する問題→関東平野、利根川、からっ風など
2.昼夜間人口比率に関する問題
3.工業地帯に関する問題→京浜工業地帯、北関東工業地域など
【九州地方の出題形式】
1.地形に関する問題→筑紫平野、シラス台地、阿蘇山のカルデラなど
2.工業地帯に関する問題→北九州工業地域など
3.農作物の生産に関する問題→畜産・果物など

基本的な出題はこんなところでしょうか。地理の地域史の問題は出題範囲が意外と決まっていることがあるので、取り組みやすいことがあります。

問1 日本でもっとも広い流域面積をもつ河川は利根川です。また、関東地方は越後山脈などをこえて北西の季節風が吹きます。この風をからっ風といいます。この風は山脈をこえると乾燥した風になります。

入試ランク(利根川):(4県で出題)
からっ風についてはランク無し

問2 関東地方の昼夜間人口比率に関する問題です。なお、この問題もすべての選択肢を答えないと点数になりません
まず、昼間人口が110%をこえているのは東京都しかないので、Aが東京都となります。ほぼ100%となると都心付近の郊外とわかるので、Bが埼玉県となります。昼間人口が90%前後なのは残った群馬県となります。
これは、関東地方に限らず、関西地方や中部地方などでも同様の動きとなりますので、それを関連知識として押さえておくといいでしょう。

問3 河口付近の地形、となるなら三角州です。

入試ランク:(5都道府県で出題)

問4 九州地方・関東地方・東北地方・北海道地方の米・野菜・果実・畜産の農業産出額を出したもので、九州地方のものを選ぶ問題です。
九州地方の農業の特徴は、米が少なく、畜産が多いものを選ぶといいでしょう。よって、正解はエとなります。なぜ?といいたいのですが、鹿児島県のシラス台地に関する知識があるなら判定が容易になります。水はけが悪いため米の生産に適さないのです。
なお、アは果実が少なく、畜産が多いところから北海道地方、イは野菜が多いことから関東地方、ウは果実が多く米が多いので東北地方となります。

問5 火山の爆発や噴火による陥没などによってできた大きなくぼ地をカルデラといいます。代表的なところは阿蘇山が有名です。

入試ランク:(8県で出題)、(3件で出題、短文記述など)

問6 石油化学コンビナートの立地の特徴と特徴が見られる理由をそれぞれ短文記述問題で出題してきます。
石油化学コンビナートの立地の特徴とは、臨海部付近に建てられていることが地図から読み取ることができます。その理由としては、原油の輸入量が非常に多いことから、原油の輸入に便利であることがまとめられれば問題ないと思います。
これは、似たような問題として、火力発電の立地特徴と理由でも問われます。こちらは原料の輸出入に便利である、という記述にしないといけません。

入試ランク:(1県で出題、短文記述など)

短文記述問題の2つの記述ができるかどうかが点差を分けると思ってもいいと思います。

■大問3 解析

続いて大問3に行きましょう。問題は前近代の時代の特徴をまとめた問題です。

問1 Bのカードが院政のことをまとめた話なので、白河天皇とわかります。後三条天皇のあとを継いだことを知らなくても問題はありません。

入試ランク:(2県で出題)

問2
(1)聖武天皇が使用していた写真の建築物を答える問題ですが、これは正倉院です。間違った人は東大寺と答える人もいると思いますが、写真でよく出るのは正倉院か唐招提寺くらいです。
2017年鹿児島県では、正倉院に納められたものを写真から選ばせる問題が出ています。

入試ランク:(5県で出題)、(1県で出題、内容選択問題)

(2)奈良時代の仏教に関する正誤問題です。歴史の正誤問題は時期正誤が中心となります。なので、歴史名辞や人物などをみて時期の特定ができるかトレーニングしておきましょう
アは正文。奈良時代のできごとです。イは法隆寺の金堂・釈迦三尊像は飛鳥文化のできごとなので誤文。ウは浄土真宗の一向一揆より室町から戦国時代のできごとなので誤文。エは法然、浄土宗から鎌倉時代のできごとなので誤文です。

問3 フビライ=ハンが行ったこととして正しいものを選ぶ正誤問題です。
アは勘合から明のできごと、イは都を大都としたところなので、元のできごとで正文。ウはインド産のアヘンから清のできごと、エは新羅と結んで高句麗と百済を滅ぼしたのは唐のできごとです。
結局、フビライ=ハンが元を建国したことが分かれば問題ありません。気になる所として、選択肢に中国の王朝を書いていないことに気づくと思います。もし、王朝名を書いた場合、選択しやすくなる、という理由で入れていないのでは、と思います。

問4 鎌倉幕府が御家人の困窮を救うために出した法令は永仁の徳政令です。徳政令だけでもいいと思います。このように法令問題は史料で出題してくるものがあります。

入試ランク:(7府県で出題)、(3県で出題、短文記述など)

なお、短文記述などの出題では2018年の奈良県の正答率は高かったものの、高知県と長崎県では予想以上に低い正答率だったので、記述系のランクがCとなりました。

問5 太閤検地の特徴を「ものさし」「ます」の語句を使った短文記述の出題です。
ものさしやますの基準を統一したこと、と書ければ問題ないと思います。注意点は、この問題は太閤検地の内容を答えるものではないので、そちらを答えると、解答の要求に答えていないという理由で減点される可能性があります

入試ランク:(6県で出題、短文記述など)

2021年の鳥取県、2021年高知県以外は正答率が10%台と異様に低いです。鳥取県が72.3%だったことでランクがCと落ち着きましたが、予想以上に正答率が低いので、内容だけでなく、設問要求にも気を付けておきましょう

問6 松平定信の行った政策を選ぶ問題です。公立高校入試の正誤問題は語句でウソはついていません。歴史名辞などで人物の政策を判定することができます。
アは井伊直弼の政策、イは水野忠邦の政策、ウは徳川吉宗の政策、エは松平定信の政策です。

問7 水野忠邦の株仲間の政策を短文記述問題で答える問題です。水野忠邦は物価の上昇を抑えるために営業を独占していた株仲間の解散を命令しました。田沼意次の株仲間の政策と合わせて整理しておくといいでしょう。

入試ランク:(6県で出題)、(7府県で出題、記述問題など)

問8 カードの追加問題です。実際は年代並び替え問題と同じです。
カードは琉球王国の成立なので、室町時代と判定できます。Aの聖武天皇の政治は奈良時代、Bの院政のはじまりは平安時代後期、Cの元寇後の御家人の不満は鎌倉時代、Dの検地と刀狩は安土桃山時代、Eの田沼意次の政治は江戸時代です。よって、CとDの間に資料のカードを入れればいいです。

前近代の歴史はまだ正答しやすい問題が多いですが、短文記述問題は点差が非常につきやすい問題が多いです。確実に点数を取れるように知識の整理をしておきましょう。

■大問4 解析

大問4は近現代の歴史です。近現代の歴史は正答率が全体的に低いので、ここの定着は高得点を獲得するために重要です。

問1 自由民権運動の中で起きた出来事を年代の古い順に並べる問題です。この問題も正答率が全体的に高くありません。歴史名辞からある程度の時期の動きを判定していきましょう。
ア:国会期成同盟は1880年、イ:大隈重信が政府から追放されたのは1881年、民撰議院設立建白書の提出は1874年のできごとです。

問2 日露戦争の資料をみて、詩を詠んだ人物を答える問題です。日露戦争、詩とくれば与謝野晶子です。

入試ランク:(3県で出題)

問3 ワシントン会議の説明を答える正誤問題です。
アは正文です。イは下関条約の説明、ウはベルサイユ条約の説明、エはロンドン海軍軍縮条約の説明です。

入試ランク:(3県で出題)、(7県で出題、記述問題など)

記述問題では3割から5割の正答率となっていますが、国際協調と関連して出題してきます。内容と影響についても関連して押さえておきましょう。

問4 世界恐慌の影響を受けなかった国とその政策をそれぞれ答える問題です。
世界恐慌の影響を受けなかったのはソビエト連邦です。その政策は五か年計画です。五か年計画の説明はウです。アはアメリカ、イはイギリスやフランス、エは日本の政策をそれぞれ説明しています。

入試ランク(五か年計画):(1県で出題)

問5 農地改革の内容を指定語句を用いて短文記述問題で出題しています。
政府が地主から農地を買い上げ、小作人に安く売り渡した政策です。これは農地改革の用語説明問題といってもいいでしょう。

入試ランク:(3県で出題)、(12都道府県で出題、短文記述など)

近現代の問題では点差がつきやすい問題が多いですが、近現代の学習がしっかりとできているかどうかが点差を分けます。

■大問5 解析

大問5は現代社会を中心とした問題となります。テーマとしては成人年齢の引き下げと生活に関する問題です。

問1 18歳以上の選ばれた国民が裁判官とともに刑事裁判を行う制度は裁判員制度です。

入試ランク:(6県で出題)、(9都道府県で出題、短文記述など)

問2 憲法改正の手続きに関する問題です。
衆議院・参議院とそれぞれ総議員の3分の2以上の賛成があったうえで、国民投票を行います。そこで有効投票の過半数の賛成があって、憲法改正が行われます。太字にしたところはよく空欄補充問題で出題されます。

入試ランク(憲法改正):(1県で出題)、(12府県で出題)

問3 小選挙区の有権者数の図を読み取らせる問題です。
東京13区では48万人、鳥取1区では22万人近くの有権者がいますが、それぞれの選挙区の有権者の差が大きいため、1票の価値が異なる(一票の格差)ことがわかります。

入試ランク(一票の格差):(4県で出題)、(14県で出題、短文記述など)

問4 都道府県知事と市町村長・都道府県・市町村議会議員の被選挙権を答える問題です。
知事は30歳以上、それ以外は25歳以上が被選挙権です。

問5 契約が成立する時点を選択させる問題です。契約は買う意思を店員に伝えたのちに店の人が受け付けた段階で契約が成立するとされています。お金を払う段階ではないのです。

入試ランク:(2県で出題)、(2県で出題、選択問題など)

問6 損害賠償の責任を企業や生産者に負わせることを定めた法律は製造物責任法(PL法)です。

入試ランク:(13府県で出題)、(2道県で出題、短文記述など)

政治分野の入試ランクはAないしはBランクが中心なので、上位校ほど一つのミスで点差が開いてしまいます。

■大問6 解析

大問6は少子高齢化をテーマとした経済を中心とした問題です。

問1 国の借金は国債といいます。

入試ランク:(3道県で出題)、(5道府県で出題、短文記述など)

問2 使用者がに対して労働条件の改善などを交渉するために労働者が結成する組織を労働組合といいます。

入試ランク:(3道県で出題)、(2県で出題、短文記述など)

問3 地方自治の特徴として地域のことを合意で決めていく経験が積めるため、「民主主義の学校」といいます。

入試ランク:(7県で出題)、(1県で出題、短文記述など)

問4 銀行が利益を上げるしくみを短文記述問題で出題しています。
家計などに支払う利子よりも、企業などから受け取る利子を高くすることで利益を上げています。どういうことか、というと、家計などに支払う利子とは、銀行に貯蓄などしたものの利子ですが、現在の利率は0.05くらいとされています。それに対して、企業などから受け取る利子とは融資などで借りているお金のことです。これの返済利率は14%程度とされています。

入試ランク(利子):(2県で出題)、(3府県で出題)

問5
(1) 子どもなど社会的に弱い立場になりやすい人々に対して、生活の保障や支援のサービスを行う制度は社会福祉です。

入試ランク:(6県で出題)

(2) 文を見て、考え方に含まれる領域を選ぶ問題です。縦軸が大きな政府・小さな政府、横軸が税の納付方法です。
政府が社会保障を充実させるために消費税の税率を上げることで税収を増やす、とあるので、消費税はすべての国民が同じ税率で納付することで、税率を上げることは大きな政府の考えです。その領域はとなります。

経済分野は正答率がやや下がりますが、基本的な知識問題だと点差がついてしまいます。

■特に点差がつく問題は

点差がつきやすい問題は、歴史の近現代、公民の経済分野、国際分野です。そこの学習が追い付いていない人は、学校の進度に合わせるのではなく、入試に間に合うように単元を仕上げてください。学校の進度に合わせるのは、テスト期間のときで十分です。

近現代の復習が不十分な場合、1日20分から30分程度でいいので、復習時間をまとめておくといいでしょう。
和歌山県だけの問題ではありません。しっかりと土台を構築していきましょう。

■土台構築の最終チェックとして

土台構築の最終チェックとして、この秋に出る予定の一問一答集で仕上げるといいでしょう(詳細は近日中に発表できます)。ただの一問一答ではありません。辞書としても使えるだけでなく、関連知識・背景知識が充実している解説もあります。つまり、今までに販売されている一問一答集とは大きく異なるものとなっています。特に短文記述問題が不安な人はこれでしっかりと知識をまとめてください。もちろん、これだけで全てが完結するわけではないので、不足分は各自で強化してください
もちろん、最新時事なども取り入れています。
なお、この本の著者は僕ですwもうじき発表されますので、それまでお待ちください。

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