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vol.17【愛の記憶を再生したい】愛のアーティスト・たかすぎるな。さん登場!

◾️ゲスト:たかすぎるな。(アーティスト)
◾️パーソナリティー:梶原拓真(藝大楽理科)、髙田清花(発案・監督、藝大先端芸術表現科)


梶原:
このpodcastは巨匠の揺籃、東京藝大で学ぶ我々が様々な分野で活躍されるゲストの方々と、作家表現者同士として語り合い、今再生したいもの、ことをお届けする番組です。

梶原:
こんばんは。藝大生の再生するラジオ、本日パーソナリティーを務めます、梶原拓真と申します。藝大の楽理科に在学しております。
本日も当podcastの監督である髙田さんと一緒にお届けします。

髙田:
当podcastと藝大校歌再生活動の発案・監督を務めています、髙田清花です。今日も随所でちょこっとお喋りさせていただくので、よろしくお願いします。

梶原:
記念すべき第2期1人目のゲストは、アーティスト・たかすぎるな。さんです。
たかすぎさんは藝大のデザイン科卒ということで、我々の先輩に当たるわけですが… 髙田さん、たかすぎさんと個人的な繋がりがあるとか。

髙田:
はい。でもお会いすること自体は3、4回目です。

たかすぎ:
そうですね!

梶原:
そんなに少ないとは思えないような仲良さげな感じだったんですけれども。(笑)

髙田:
出会ったきっかけを思い出してたら…
なんだろう〜?って思って。

梶原:
思い出せない (笑)

髙田:
色々飛び越えて仲良くさせていただいて。でも(Instagramの)DMを1番最初まで遡ったら、私からいきなりご連絡差しあげていて… (笑)

たかすぎ:
あ、そうですね!そうだったんですよ〜!

髙田:
ストーリーや投稿にいいねをしてくださって、もちろん元々こちらは存じ上げていたので見てくださってるんだ!って思って (笑)
だったらちょっとお話ししてみたいと思って、「るな。さんの作品をいつも拝見して凄く憧れてて」というのを初対面でいきなりDMで送り付けたってところから (笑) 。

たかすぎ:
すごく覚えてます!嬉しくて。
そんなの来ないんですよ (笑) 。来ないじゃないですか普通。
メッセージを送ってくださって、もうすごく嬉しくて実際話したいなぁと思って、それで1回ご飯いこうみたいな話になって… (笑)

髙田:
そうそう、すぐね!(笑)

梶原:
へ〜、すごい打ち解け方ですね。

髙田:
それでるな。さんの個展に伺って「初めまして」の状態で爆語りしてすぐ仲良しになり、今回も私からオファーをさせていただきました。

梶原:
たかすぎさん、3月の奏楽堂の公演を聴きに来てくださってたということで、率直なご感想を伺ってもよろしいですか?
※ 当番組の母体「藝大校歌再生活動」は2024年3月に藝大奏楽堂にて「奏楽堂企画」(公演)を開催

たかすぎ:
まずは、皆さんの大学生の方の熱量がものすごくて。それに1番パワーをいただきました。

梶原:
嬉しいお言葉をありがとうございます。
改めまして本日はどうぞよろしくお願いします!

まずちょっと気になっていたのが、たかすぎるな。さんって最後に丸がついてるじゃないですか、あれって何か意味があったりするんですか?

たかすぎ:
...実はないんですよ (笑)

梶原:
ないんですか (笑)
ないというオチだった (笑)

たかすぎ:
はい、ないんです!(笑)
ただ、名前がつながると「たかすぎるな〜っ」になるという。

梶原:
そうですね。

たかすぎ:
これはたまたま母が気付かないままつけて、生後3ヶ月で友人から言われて気付いたそうなんです。「たかすぎるな〜っ」という文章に見せたいという意味で丸を付けてたんですけど、そこまで深い意味は特になくて。

梶原:
確かに平仮名に丸がついてるとなんかそういう風に読んでしまいますね、自分も最初の印象そうだった気がします。
そういえば俳優の藤岡弘、さんがお名前の最後に点「、」を付けてらっしゃるんですけど、あれは自分は道半ばだみたいな、そんな深い意味があるらしくて。もしかしたらたかすぎさんも?と思ったら (笑)

たかすぎ:
完結しちゃいますね (笑)
完全な人みたいになっちゃった、
やばい、おこがましすぎる (笑)

一同:
(爆笑)

梶原:
ところで、今たかすぎさんは主にどういった活動をされているんですか?

たかすぎ:
今は「愛ってなんだろう」っていうことを研究、というかテーマに作品を作っています。
愛ってなんですかって聞いても多分答えが出ないんですよ。古代から哲学者たちがぶつかってきた問いだと思うんですけど、それに改めて微力ながらも私が、その愛について考えたいなと思って。人生を生きる上でどうしても愛が必要、と切実に思ったところがきっかけでした。そこから愛について考えるということ、愛とはどういう形をしているのか、愛とはどういう質感でどんな意味を持っていて何なのか、っていうところを突き詰めたいと思って制作を始めました。

梶原:
そうだったんですね。

髙田:
るな。さんの作品って、本当に色んなタッチのものがあると思うんですけど、でもやっぱり、なんでしょう。
代表的なシリーズとしてあるのは天使の作品じゃないですか。私は以前沢山伺ったんですけど、愛と天使の関わりや、そもそもなんでそこが関係しているかっていうところをお聞きしたいです。

たかすぎ:
この天使を描き始めたきっかけがありまして...
実は幻覚のようなものが見えるようになってしまった時期があって、そのとき私は凄く苦しかったんです。それが幻覚だったのか未だにちょっと、病院も通ったりもしていく中でなんだかんだ有耶無耶になってしまってきているんですよ、最近。

わかんないんですけど、でも私はなんかこう、脳の裏側に映像が見えたりとか、怖いものや写真みたいなものがこうバババババッって見えるような瞬間が続いてる時期があって。そのときに、夜に1人でお祈りをする習慣を作ってみたんですよ。
そしたら、1回だけ、本当に1回だけ、天使が見えたっていう瞬間があったんです。そこから個人的な希望の象徴として天使を描き始めた、というわけです。

髙田:
私も実在しないけど実在する存在みたいな、ものの顔とか気配とかがパッパッパッて見えるというか...

たかすぎ:
実感があるっていう感じですよね。

髙田:
そうそう!それが私も凄くあるので苦しいお気持ちが分かります。
そんなるな。さんがそこで天使と出会えたっていうのは、何か頑張った甲斐があったっていうか...本当にお辛い中でもお祈りしたから出会えたっていう、大切な存在ですよね。

たかすぎ:
そうですね。

梶原:
そうか〜、自分もお祈りして天使見えるようにしたいなぁ (笑)
ちょっと日々ね、色々ありますのでね。(笑)

一同:
爆笑

梶原:
天使と言っても、本当に色んな描かれ方をされていますよね。

たかすぎ:
そうですね。私が描く天使は「目をつぶっていて口がない」ということが共通していて、それは何も言わないでくれるとか何も見ないでくれる、だけども私の存在を認識してくれるっていうところがすごく大きくて。なんかこう絵画もそうじゃないですか、飾っておいてそばに居てくれるけど、何も喋らないでくれるとか。
自分に寄り添ってくれる存在って実は無口なんじゃないかな、と凄く思っていて。自分の希望であり、自分の安心する存在であるものが天使というモチーフで現れたのかなって思います。

梶原:
素人の個人的な感想なんですけれども、たかすぎさんの描かれる天使の顔は、その描き方を含めて人をはねつけるような感じが全くなくて。心にスっと入ってくる、そして心に彩りをくれるような心惹かれる作品だなと思っていつも拝見しています。

たかすぎ:
ありがとうございます。凄く嬉しいです。

梶原:
たかすぎさんは絵だけに留まらず、立体や音楽も作られているじゃないですか。本当に多岐にわたる活動をされてると思うんですけれども、やっぱりそこにずっとあるのは愛というテーマなんですか?

たかすぎ:
そうですね。1番初めにこのテーマを見つけたのは、学部の4年生の時でした。1番初めは卒業制作で、だから期間もすごく短いんですけどね、愛に忠義っていう武士道の愛について考えた作品を作ったんですよ。
そこの愛の質感と、今やってる愛の質感は結構違うんですけど、ただ、愛っていうのは共通していて。後から振り返ってみると、自然と色んな愛について考えていこうとなっていったんだなぁって思います。

髙田:
デザイン科の学部1年生から、その卒制までにおいては(「愛」というテーマを見つける前は)どういうテーマだったんですか?

たかすぎ:
なんでもやってみようと思っていました。
その中ですごく大事にしていたのは無意識だとか、自分の考えてなかったものが出てくることとか、その発想の奥の方から引っ張り出してくるみたいな事を… まぁ創作の基本ですよね、その基本を鍛えていたっていう感じの時期だったなぁと思います。

髙田:
すみません、質問攻めなんですけど (笑)、
天使との出会いは先ほど教えていただいて、今度は愛との出会いについて伺いたいです。人類生きてれば、まぁ人類以外も生き物もみんな愛は必要なものだと思いますが、そんな愛に "テーマとして" 出会ったきっかけはありましたか?

たかすぎ:
愛を改めて必要だなって認識した時があって。卒業してから1年目?だったか1年後だったか忘れちゃったんですけど、その時に本当にきつい時期があたんですよ。幻覚のようなものが見えて、本当にキツくて起き上がれないし、衝動性と内側に向かっていくその負のエネルギー、この鬱と躁が同時にきちやうみたいな状況になってたんですよ。
そんな状況の中で、訳の分からない行動をとってしまう自分が愛とか考えられないんですよね全く。その時に周りが助けてくれたんですよ。家族だったりとか。
例えば病院に電話をしてくれるとか、そういう1つ1つの小さい積み重ねが本当に大切だなと。例えば、医療にありつくとか治っていく過程の中でどれだけの人に愛されたかなって思って。そこで改めて、あ、愛が本当に必要なんだ人には!、というかまぁ生き物全てにおいてだけど、人間には絶対愛が必要だって思ってそこから改めて愛についてやりたいなと、思いました。

梶原:
そうなんですね。

たかすぎ:
なんかちょっと重い話になっちゃった (笑)

髙田:
いやいや、めっちゃ面白いです。
卒制までの期間は、割となんでも自分のテーマというか作るものとして受け入れてやっていたるな。さんですが、愛や天使は… 運命の出会い (笑) みたいな、ここまで自分が極めたい!と思うテーマは初めてだったんですね。

梶原:
愛は必要ですよね〜

たかすぎ:
愛は必要だと思います!

梶原:
でもそうやって助けられたのって、多分たかすぎさんがそれまで色んな人に愛を配ってたからなんじゃないかなって気もしますね。

たかすぎ:
素晴らしいこと、嬉しいことを言ってくださいますね (笑)

梶原:
武士道の言葉には、義や徳があるじゃないですか。徳を積むとか。
なんかそことリンクするなってちょっと思って聞いていました。

たかすぎ:
なるほど…!

梶原:
それからもう1つ伺いたいことがあります。
たかすぎさん、髪を綺麗に染めてらっしゃるじゃないですか。それには特別なわけや思いがあったと以前伺ったんですけれど、ちょっとそこをお聞かせいただけますか?

たかすぎ:
学部4年ぐらいの時に…
武士道にハマったきっかけも実はこれに繋がってまして。その髪を染めることに (笑)

梶原:
まさかすぎる (笑)

たかすぎ:
武士になりたいって思っていたんですよ。
武士になりたいっていうのはどういうことかって言うと… 女性性を消したいというか、性別や人間といったものから遠ざかって強くなりたい、とにかく強い存在になりたい、って思ったのが武士道に目覚めたきっかけだったんです。一時で終わってるんですけど (笑)。

梶原、髙田:
そうなんですね (笑)

たかすぎ:
そうなんですよ (笑)
武士道にハマった時の気持ちがちょっと転じて、更に、人間の地位とか…
やっぱり学校を卒業して、「藝大生」みたいな肩書きがなくなるじゃないですか。その自分しかない状態であるとき、人間であるっていうことよりも先に何か別のもので守りたいな、みたいな気持ちになって。

髙田:
服みたいな感じですかね。

たかすぎ:
そんな感じです!
なんかこうギャルの人達にとっての「武装する」みたいな感覚にすごく近くて。髪を染めて、洋服も全部同じ色にしてた時期があるんですけど、そうしたら人間であるというよりも先に、ファーストインプレッションが色になるんじゃないかなぁって思って、そう挑戦してた時期がありましたね。

梶原:
色になりたいってことですね。

たかすぎ:
そうですね、色になりたかった。

髙田:
面白いですね。
服で武装するとか、肩書きで武装するとか、それらは結構一般的で皆やるけど… 色で。

たかすぎ:
はい、色になりたかったです (笑)。
肩書きは見えないじゃないですか。だからなんか違うなーって思って。色だったら… 服もゴテゴテの服じゃなくて単色でよかったんですよ。色ってほんっとに情報が多いじゃないですか。なんかこう、アクセサリーをいっぱい付けるとか、そういうことよりもまず色が目に入ると思ったんですよ、感覚的に。それで色になりたいと思いました。

髙田:
香りだと香りを纏うって言うし。私もその香りの構造とかが好きで (笑)。
(香りの構造が)見えるからそれを纏うっていう意識は結構あるんですけど、それの色バージョンってことですよね。

たかすぎ:
そうですね。

髙田:
色を纏うって、なかなか聞かないですよね。

梶原:
ではこの辺で新コーナーに参りましょうか。
では参ります。

あなたが再生したいもの・こと・曲は?

髙田:
記念すべき1回目ですからね!(笑)

たかすぎ:
責任重大ですね (笑)

梶原:
このコーナーではあなたが再生したいもの・こと・曲は?ということで、「再生」という言葉の意味を広く捉えてですね、毎回ゲストの方に伺う共通の1問になっております。
では!たかすぎさん、あなたが再生したいもの・こと・曲を教えてください!

たかすぎ:
やっぱり愛の記憶ですね。

髙田:
愛の記憶。

たかすぎ:
みんな1人1人が、人生に1度だけでもいいから愛を受けたと私は信じたくて。些細なことでもいいんですよ、お弁当屋さんでお弁当買った時にニコってされたとか。そのくらいの小さなことでもいいし、誰かと抱きしめあったとか、そういう大きな愛でもいいんですけど…
人生の中の愛というもの、今までにあったその一辺を、みんなが同時に思い出すとか、なんかそういう記憶装置があったら。一瞬だけ世界が平和になるんじゃないかなぁと思いました。

梶原:
自分は愛を受けてないみたいなことを言う人もいますけど、実は受けてるんじゃないかと

たかすぎ:
難しいですけどね。

梶原:
でも確かに些細なことだったら、今日もこの収録会場に来る間にも色々あった気がしますね。人間の間だけではなくても、綺麗な花を見つけて愛でたとかね。

たかすぎ:
そうですね!大事です。

梶原:
なんか、いいですね。確かに世界が平和になるような気がしますね。

髙田:
良い例えかは分かりませんが、大きな地震が起きた後とか、誰かが亡くなった後とかって、物凄く悲しいと同時に、そのまわりにいる人たちとの愛の交換というか、交流はすごい色濃く感じますよね。
みんなが愛を思い出すとか、愛の記憶を思い出す、振り返るっていう、そういう装置っていうのは、ある意味「自然」そのものかもしれないし。
それを私たちが作ることが出来るのか!?っていうところにるな。さんは挑戦されてるってこと、ですかね? (笑)
私はそう捉えて。

だからるな。さんの天使などの絵を見ていると、それがもうその装置になってるなって今、思い出して感じて。
自然とアーティストの関わり方っていうか、関係性が今見えたかなって思って、面白いです。

たかすぎ:
ありがとうございます。

梶原:
では最後にですね、たかすぎさんの今後の展望をお聞かせください。

たかすぎ:
今後はちょっとつまっていて、大きい個展が3回あるんですよ。
8月には大丸東京さんのイベントスペースでありまして、10月は熊谷守一美術館という池袋にある美術館ですね、私設の美術館なんですけれどもそちらでも個展をやらせていただきます。それから、来年になってしまうんですけれども、来年の1月か2月にも中目黒のMDPギャラリーってところで決まっておりまして、どれも愛とそれから少しの傷と、をテーマにやらせていただく予定になっております。

梶原:
それは絶対に伺いたいですね。

髙田:
ね!楽しみですね。
傷かぁ……

たかすぎ:
はい。最近のテーマになってるんです、実は。

髙田:
最後に、その「傷」に関することも織り交ぜて、どういう方向に向かっていかれそうなのかを伺いたいです。

たかすぎ:
はい、ありがとうございます。
愛っていうところから、私は傷を受けたから愛を感じたんだっていうところに、認識が改まっていたんですよ。漠然とした愛というところから。
心に受けた見えない傷をどうやって癒していったのか、どうやって癒されていったのかとか、またそれを、そのプロセスをあの形にすることで人は癒されることが出来るのか?また追体験することは出来るのか?っていうところに興味が湧いて、それで最近はその方向に向かって、天使の癒しのイメージを持ったまま、そこに傷があったっていう痕を残せるかっていうことに着目して制作しています。

髙田:
この間の個展も、基本的には天使の、希望の光の絵が沢山ある中で、怖かった思い出の風景の作品が数点あって、その予感があったのかなって。ちょっと繋がってますよね。

たかすぎ:
そうですね、ほんとに。

髙田:
みなさん、個展へ絶対行ってください!

梶原:
今日のお話を伺うとより楽しみになってきましたね。

今日はたかすぎさん、本当にありがとうございました。

たかすぎ、髙田:
ありがとうございました!

梶原:
ご感想は「#藝大生の再生するラジオ」をつけて是非投稿してください!

今日のお相手はパーソナリティの梶原拓真と、

髙田:
当podcastと「藝大校歌再生活動」発案・監督の髙田清花と

たかすぎ:
たかすぎるな。でした!

一同:
ありがとうございました!

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