交換コラムNo.7「桃の食べ頃」

桃を買った。

インスタの広告並みに薄給な私には、ちょっとした贅沢だ。毎朝冷蔵庫を開けがてら、楽しみにしているわりには雑に放置された桃を両手で包み、柔らかさを確認しては今日もまだかと待ちわびている。

幼少の時分は、旬がくれば桃や梨、ぶどうにイチジク、りんごにみかん、その時々に母が美味しいものを買ってきたり、父が職場から持って帰ったりと、半自動的に季節の恵を享受し、好きな時に食べることができた。そういった何気ない"今日のおやつ"が、いつの間にか季節を感じる一つの習慣になっていた。もっともその頃は、そんなこと気づきもしなかったけれど。

一人暮らしになってから、季節の移ろいに疎くなった気がする。敏感な方だと思っていたが、本来の私はこの程度の風情なのであろう。もしくはセンサーが鈍っている状態なのかもしれない。「今、遠くに電車の音が聞こえる狭い部屋で、桃が食べ頃になるのを待っている。」文字に起こすとなんだか寂しいが、桃がなければ、本当に寂しいかもしれない、と、ふと思った。間違いなく10分後には忘れる想いだ。そんなものなんです。

食べ頃まで、もう少し。

日の出

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