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活字になった!呪いのノンケ

こちらの記事は、2023年3月24日に行われた配信(https://twitcasting.tv/a2ytgmr/movie/762678783 )を文章に再構成したものとなっています。
趣旨としては「自分を絶対に恋愛対象として見ていないノンケ男性 / ノンケ女性に思わせぶりな行動 / 言動を取られ、壊れちゃった」というエピソードを募集し、そしてそのエピソードの最後にはBGMとしてNewJeansの「Ditto」が再生される、というものでした。
しかしこちらの催し、同時に「嘘のエピソードでも参加してよい」というルールが設定されており、その場合は「書き手独自のBGMを設定する」という謎のルールも設定されていました。
ここまで読んでもいまいち空気感とルールが掴めないという方は、ぜひ配信のアーカイブをご覧下さい。

それでは、お手元に音楽を再生する手段は整っておりますでしょうか?おしながき順に読んでもよし、自選の名作から読んでもよし。「ほんとにあった!いのノンケ」の恐怖を、活字でも感じていってください。

ジョーマローンの香りがする先輩に…

大学3年、夏のブッ壊れエピソードです!
部活の合宿の飲み会で苦手な男の先輩の絡み酒 から逃げ回っていたところ、「○○ちゃん一緒に飲も〜」と呼ぶ声が。 助かったと思い輪に加わると、密かに憧れていた院生のA先輩もおり、 緊張と嬉しさからついハイペースでお酒を進めてしまいました。 私は普段あまり飲むタイプじゃ無いのでかなり心配され、一番近かったA先輩の部屋で寝かせてくれることに。 2人で敷いた布団に寝転びだらだらと喋っていたところ、どういう訳か例の苦手な先輩が部屋に入ろうとしてきました。 普通に怖かったのと、A先輩に迷惑をかけたらどうしようという気持ちで半分パニックになっていると、いきなり布団を被せられ隠すように抱きしめられました。 苦手な先輩の「○○居る?」の声に私が体をこわばらせると、抱きしめる力が強くなりそのまま頭を撫でられました。 めっちゃジョマロの香水の匂いしました。
苦手な先輩が行った後、A先輩に「○○体熱っつ!酔いすぎ!笑」 と言われ、無事、壊れました。

ギュ揉み : 「大学時代に合宿で酒を飲みすぎた」というシチュエーションは、「夕日の差し込む高校の教室」のようなひたすら瑞々しく眩しい青春感ではないからこそ、特有の湿度がありますよね。この中途半端さとモラトリアムの空気感を引き立てる「ジョマロの香水」「GOING CRAZY / TREASURE」といった要素がコンパクトな中にも散りばめられ、どこかくすぐったい、後ろめたい、なんとなくダサい、封印していたたくさんの呪いのノンケ記憶にタッチしてくる恐ろしさを感じました。

ロ角 : クローズドな空間特有の「壊し」、身に覚えがあります。みんなもそうでしょ?
体温であたためられた香水を至近距離に感じるやつ、結局ほんと滾るんですよね。ただしかしそれ以上でも以下でもない、というのがこの呪いエピソードの肝だと思います。重すぎず軽すぎない、ミチョガネの爽快感ともマッチした開幕にふさわしい「嘘」。配信内でも触れましたが、たぶん何割かはほんとにあったことなんだろうなあ。

留学帰りの同級生が...

当時私は国際系の高校に通っており、クラスメイトには留学帰りの年上が何人かいました。 ひとつ年上のRもそのうちの1人で、彼女とは隣の席になったことをきっかけに意気投合しました。 その後の席替えではあの手この手を使って必ず隣になるように細工をし、普通1席ずつ離して座る机をわざわざくっつけて座るほど仲が良かったです。
私たち以外全員寝ているような5限の物理で、 おじいちゃん先生の授業を2人でクスクス聞いていたのをよく覚えています。 日差しの差し込む2月の真昼、世界に2人しかいないみたいな気分でした。
高三になり、受験シーズンが来てからはお互い登校のスタイルがバラバラになり、一緒に授業を受けることはおろか、顔を見かける機会も無くなりました。

風の噂で、彼女が東京の大学に受かったと聞きました。

卒業式の朝、教室に入ると数ヶ月ぶりに見たRの顔があり、色々な感情が昂って思わず涙がこぼれました。 脈絡もなくいきなり号泣する姿を見たRは、あの時と同じようにクスクス笑い、私を抱きしめ少し顔を覗き込んだ後、 徐に額にキスをしました。 「カナダの癖がまだ抜けてないの?」 と聞くと、「カナダでもこんなことしなかったよ」 と笑いながら言われました。

彼女が東京に行くことで吹っ切れると思ったのですが、 大学入学と同時にコロナが始まり一年次は地元に残っていたため、 なんだかんだで未だに縁が続いています。 余談ですが、 あれ以来私は年上の女しか好きになれなくなりました。ちなみに彼女は今マケドニアに居るそうです。 (どこ?)

ギュ揉み : 狭い教室の中で「世界に2人しかいないみたいな気分」というまでに近づいた2人の心の距離は、高校受験という大きなフィールドの中で離れ、それでもまた狭い教室で物理的な距離として最接近(キス)し、それは遠く離れたカナダの話とは関係ない紛れもなくまた「2人だけ世界のお話」だったわけですね。一番の呪いは、結局のところ向こうは2人きりの世界なんて一度も思っていなそうで、その証がいまマケドニアにいるということなんだと思います。彼女の見ている、見ていたものは結局理解できないという。

ロ角 : 「カナダでもこんなことしないよ」、こんなのピクシブすぎる!!* と絶叫しそうになりましたが、最後に流れたのはまさかのDitto。ヘインさんハミングしないで。
一生をかけても足りないくらいのまぶしさ。目を開けられないほどのひかりにあてられたとき、我々はそれを呪いと錯覚してしまうのかもしれませんね。
*ピクシブすぎる : 「作者にとって都合のいい一次創作すぎる」という意味

センターオブジアースで…

とても可愛い友人とディズニーに行った時のことです。その子は絶叫マシンが好きで私は苦手だったのですが、朝から連れ回されいつの間にか楽しんでいる自分がいました。

最後に日が沈み掛け、 空がオレンジと青に染まったちょうど良い時間帯にセンターオブジアースに乗りました。 慣れたとはいえやはり怖く、私はバーにしがみついていたのですが、 友人がいきなり私の手を握りしめてきました。 振り解くこともできず、 訳もわからぬまま握り返すと、いきなり手を上に引っ張られ、 一番最後の外の景色が見える瞬間バンザイのポーズで急下降することに。 怖かったのですが、 夜景の美しさといきなり手を握られたパニックで恐怖は吹っ飛んでいました。

アトラクションを降りた後、いきなり手を握られてびっくりしたと伝えたら最後くらいバーから手を離して楽しんで欲しかったと返されました。 私がそのままバーを掴んでいたら無理だったね、と照れ隠しに強がってみましたが 「○○は私の手を離さないでしょ?」と言われた瞬間私の中の何か大切なものが壊れました。 今でもあの日のことが忘れられません

ギュ揉み : ディズニー・ブルーアワー・絶叫マシンという完全な非日常、センターオブジアースのあの暗い洞窟内を一気に飛び出す高揚に重ねられる手、どんな演出も適わないシチュエーションですね。呪い度は正直低くてただの爽やか思い出だし最後の漫画くさい台詞も嘘くさいけど、全部が本当じゃなくても最高です。(事実疑い禁止)

ロ角 : これね、大好きなんです。「あなたはわたしの手を離さない」だろうから、最後くらいバーから手を離して楽しんでほしかった。創作の種にしてやろうかと思っちゃうくらい美しい思考回路。
先の見えない道を進むとき、一歩ずつ踏みしめていきたいものだけど、多少強引に手を引いてくれるのがうれしいときもあるよな、と感じます。

彼氏と喧嘩をした友達から…

高校時代の話です。 当時私には素行の悪い、いわゆる不良と呼ばれるような友人(A)がいました。比較的真面目な性格の私とは相反するAでしたが、 小学校からの仲で、Aは私に優しく接してくれていました。
ある日の夜、明らかに酒の入っているA(違法)から電話があり、話を聞くと彼氏と喧嘩をしたとのこと。「会いたい」 と言われたので、仕方なくいつものコンビニで待ち合わせをすることに。私より先に着いていたAの周りにはいくつか空き缶とたばこの吸殻がありました。
「もうやめなよ」 とAが持っている吸いかけのたばこを取り上げようとすると、 私の顔に煙を吹くA。怪訝な顔をしているだけで何も言わない私にAは「○○(私)は優しいねぇ、 ○○が男で彼氏だったら 喧嘩なんて絶対しないのにねぇ」と言い放ち、コンビニのトイレへ行ってしまいました。
真面目すぎた私は副流煙などが気になってしまい、「たばこ 煙 吹きかけられた」と検索すると「夜のお誘いの意味」 という結果が出てきました。 予期せぬ検索結果と、もし私が男だったら(略)という思わせぶりな行動に息が詰まってしまいそうな高校2年生の夏でした。

ギュ揉み : 不良少女とコンビニとタバコというベタな舞台設定もですが、喫煙者としては「そもそもタバコの煙ってそんな正面に向かって吹けないし現実にやってる人も見たことないよ」という客観視などもしてしまいましたが、このベタベタで占ツクで不良漫画あるあるなシチュエーションとSave Me, Save Youのファンタジー感のマッチングへの高揚が、この遊び自体にかかっている呪いに気づかせてくれました。

ロ角 : プッタッケ〜
こちらは完全にピクシブなエピソードですが、それはそれとして、とできる良さがありますよね。誰しもが2ミリくらい胸に秘めている「喫煙」への理想と憧憬が大変美しく文章化された大嘘エピソードです。Save Me, Save Youがかかったときの「そうなんだ」感も含めて様式美。

高校時代に組んでいたガールズバンドの…

短いですが、 忘れられない記憶をここに共有させてください。

高校時代、 4人組のガールズバンドを組んでいました。 幼なじみのKの友人であるTが人を探していたらしく、2人で参加。

そこでOに出会いました。自分はエレキ、 Oはドラムです。Oはどちらかと言えば寡黙な方で、 部活中に騒 ぐ自分たちを眺めながらスティックを回して遊んでいるような、そんな子でした。仲が悪い訳ではありませんでしたが、なんとなく距離感が掴めないまま半年ほど経ったある日、 自分とO以外のメンバーから遅刻すると連絡があり、2人で練習をしていました。

夕暮れで教室が濃いオレンジ色に染まっていたのを今でも鮮明に思い出します。何度か曲を通し、待ちくたびれて携帯を弄っていた時、ふと視線を感じました。

Oが、 自分を見つめていました。

いつもと変わらない表情で、ただ、ぼんやりと。 目が合うことなんていくらでもあるのに、 なぜだかその時は一瞬固まってしまうくらいドキドキしました。

「2人とも遅くない?早く来ないかな」 と、廊下の方に顔を逸らしこの居た堪れない空気を誤魔化そうとしたら、

「私は.........このままでもいいよ」

以上です。ガールズバンドを組んでいたこと以外全て嘘です。黒髪ボブのサブカルダウナー系女、 全員私のものにならないかなー

ギュ揉み : 自身が軽音学部だったこともあり、練習の欠員くらいは当たり前な他の部活よりどこか気だるい雰囲気流れる夕日差し込む視聴覚室を思い出して、書かれていない音や空気まで感じてしまい、決め台詞(?)の曖昧さもあってとても好きでした。脳内では勝手に「ラッキープール/JUDY AND MARY」が爆音で流れていたのですが、指定された曲がオーーゥマーーぃがぁあ〜〜だったので、全然違う風景を勝手に想像していたことがわかり、こちらから浴びに行っても呪いの性質が変わるくらいなら、本当に向こうは呪いなんてかけてさえもいないんだろうな。という恐ろしさを感じさせてくれました。

ロ角 : 今回の催しから、人間は完全な嘘はつけない、というのが感じられます。実際見た景色や抱いた感情なんかはそのままに、学生時代ならではの「心地よい閉塞」がていねいに描かれて読みやすかったです。
それにしても、なんなんでしょうね?やっぱり相手がノンケとわかっていても、自分が相手にとっての特別な存在でいたいものなんでしょうか。

「私のことが好きなんだったら、もっと真剣に話しかけてよ」

20代 フリーター 女性です。

私は口下手で、人にグイグイ話しかけたり出来るタイプでは無いのですが、バイト先の先輩女性(以下Aさん)は何故か話しかけやすくて(純粋にタイプでしたし) いつも私から「先輩おはようございます!」「先輩今日のお洋服かわいいです」 などと話しかけていました。

バイト終わりのある日、Aさんと一緒に真っ暗な道を一緒に歩いていた時です。 急に立ち止まるAさん。 「先輩どうしたんですか。」と聞くと 「○○さんは、私の事どうでもいいと思っているからそうやって適当に話しかけてくるんでしょ。」 と言われ、頭が真っ白になりました。 続けて 「私の事が好きなんだったら、もっと真剣に話しかけてよ」 と言われ、 更に頭が真っ白に。

何を言えばいいか分からなくて、 そのまま無言で駅まで歩きました。 駅に着くと 「これで最後にするから10秒目を合わせて」 と言われ、訳も分からず10秒見つめ合い、バイバイしました。

「これで最後にするから」 の意味は分かりませんでしたが、 もしかしてAさんもレズなのかな...?なんてドキドキしながらその日は就寝。

次バイトに行った時、Aさんは既にバイトをやめていました。 共通の友人から聞きましたが、Aさんは真剣佑に少し似ている男性と付き合い始めたらしく、 あの日のバイトの帰り道で言われた 「私のことが好きなんだったらもっと真剣に話しかけてよ」 の意味も分からず、 逆に私がAさんを壊してしまったのか...Aさんとの関係は終わってしまいました。 誰か、 成仏、 解明、お願い致します。

ギュ揉み : 「結局何が何だか全くわからない」という点で、ノンケの"わからなさ"、気になって頭から離れない"呪い"を最も体現しておりかなり好きな作品です。(実話ですよ。)
これかなり、中学聖日記4話の海辺キス直前のシーンでのらりくらりと訳の分からない挑発的な言葉を繰り出し続ける「呪いの末永聖」と近い呪いですよね。こわー

ロ角 : こちら、大変怖いです。フフーゥフーと言われても、ヘインさん。ちょっと。
前後の繋がりのあいまいさ。そのときどきに感情は移ろうから、一貫したものなんてなかったとしても、「これで最後にするから10秒だけ目を合わせて」のあとに真剣佑と少し似ている男性とつきあうのは、怖いよ。いやでも逆に一貫してはいるのかな?わっかんない(GingaMingaYo)

同じゼミの北村匠海似の男が…

大学2年生の男です。 同じゼミの顔が78%くらい北村匠海の男の話です。 (ファンの人いたらごめんなさい)

普段から、僕がゼミの飲み会に参加したときに 「やったー今日は○○ (僕の名前) がいる!」 とか言ったり、「○○はこのゼミの癒し系だからさ」 と言ったり、とにかく勘違いをさせる発言が多いです。

彼は結構アナログ人間で、 古いバージョンのスマホを使っています。 ある日彼が授業終わりに、「誰かiPhone8のケース持ってる人いない?今使ってるの割れちゃった」 と言っていて、 前にSHEINで買った激安のケースがあることを思い出して「めっちゃ安いのでもよかったら家にあるよ」 と言ったら、「ほんと!今度 持ってきてほしい!」 と言われたので、嬉々として翌日持っていきました。

かわいい柄のケースだったので、やっぱいいと言われるかなと思っていたら、 めっちゃいいじゃん!とノリノリで、しかもネタで3日くらい使うとかではなく普通に完全な私物として使ってくれました。 思わぬところで繋がりを持てた感じがしてとても嬉しかったです。

しかし、そんな幸せも一瞬で、数週間前に彼に彼女ができたことが分かりました。当然僕はショックで、 おまけに彼がスマホのケースを新しいものに変えていて、さらにダメージを受けました。彼女に新しいケース貰ったのかな、やっぱり嫌だったかな、色々考えて、知らぬが仏なのは理解しながら、「ケース変えちゃったのか〜」となるべく明るめに聞いてみました。 すると彼は、「いや〜…俺彼女できたんだけどさ、なんか、○○に貰ったやつ使ってるのバレたらまずいかなと思って」 と、気のせいかいつもより距離近めで、声も小さめで言ってきました。

え?え?なんで知られたらまずいの?彼にとっ て僕は彼女に知られたらまずい存在なの?え?何?君にとって僕は何なの?どういう目で見てるの?

その日以来、彼に対して今まで以上にミチげるようになってしまいました。 深読みしすぎなの でしょうか。 最近サシ飲みに誘われたのですがどうすればいいでしょうか。 行かない方がいいでしょうか。
彼女とは全然別れてません。 週2、3のペースでストーリーが上がってます。 でもこのままだと飲み行っちゃいそうです。 完全に壊されました。

ギュ揉み : SHEINのくだりなどあんまり必要なさそうな謎のディテールの細かさがあって「きっと執筆者の実経験が落とし込まれてるのかな」と想像でき、「結局完全な嘘はつけない」てことだよな。と感じてかわいい〜てなりました(?)バレたらまずいくらいのことは言うだろ。と側から見ると思ってしまいますが、これくらいのことで呪いを感じさせてしまうほどノンケというのはそもそもが呪物なのだと感じました。

ロ角 : 「青さ」と表現しちゃうとすこしニュアンスが変わってしまうかもしれないですが、何か特別デカいことが起きているわけではないのだけれど、ことばのひとつひとつに呪いは宿っていて。大人になると、その呪いにだんだん気づけなくなってくるんですよね。その機微にふれられる青さを、ちゃんとRedVelvetがまとめてくれます。良い!

ボーイッシュな親友から…

高校時代の話です。
私の親友Sはいつもおっとりしていてどこか掴みどころがなく、 本人にも波長が合う人が少ないのかお世辞にも友達が多いとは言えないような子でした。
そんなSと仲良くしている私に、クラスメイトは「Sちゃんって変わってるよね〜」(悪口ではなく単純な感想として)と言ってくる事が多かった気がします。
球技大会のある日、試合がない男女全員でクラス対抗バレーの試合の応援に行きました。バレー経験者だったSは当然試合に出ており、トスを上げたりアタックを打ったりとオールラウンダ一的な役割で大活躍していました。 私はSがバレー経験者だった事を知っていたので上手いな〜、くらいにしか思いませんでしたが、経験者だということを知らないクラスメイト達は大盛り上がり。 「え⁉️Sちゃん上手くね⁉️」 「やばいSちゃんかっこいい。」 などとざわついていました。Sが高身長で髪が短くボーイッシュな見た目だった事もあり、 特に女子からの歓声がすごかったのを覚えています。
Sの活躍でクラスは勝利を収め、2回戦進出が決まりました。 試合終了後、女子がSに「かっこよかった!」 「Sちゃんやばいね!惚れちゃった!」などの声をかける中、 Sは困ったような笑いを返していましたが、私と目が合うとまっすぐこちらに向かってきました。 私が 「おつかれー」と声をかけハイタッチしようと手を出すと、 なんとSはその手を掴み私の体を自分の方に引き寄せたのです。
バレーでたくさん動いたせいで、近くにあるSの顔 は赤く、汗が滲んでいました。いつも眠そうでダラ〜っとしているSからは想像できないような姿に少しドキドキし目を泳がせていると、Sは 「ハァー疲れたー」 と私の肩に両腕を置いて下を向き、 呼吸を整え始めました。 そして、しばらくして呼吸を整えたSが 「どう?かっこよかった?」 などとほざき、 悪戯っぽく微笑んだのです。 私は「ア、アンタにしてはね」 と咄嗟にツンデレのような返事をしてしまいましたが、 内心では(Sってこんな感じだったっけ⁉️私の知らないSがいる❗️)と大焦り。 Sの事はなんでもないただの女友達だと思っていましたが、 その日からしばらくはSの言動にどこかソワソワしてしまう自分がいました。 今まで誰にも言えた事がない話だったので、ぜひここで成仏させてください。

ギュ揉み : これに関しては、「前提としてマロ主が相手を好きだった」「相手は普段から思わせぶりなことをしてくる」といったところがない上で「身体的接触による一時的で強力な呪い」の話なので、7のように蓄積したダメージが最後の一言で崩壊!ではない、最大瞬間風速の呪いだったと思います。

ロ角 : 「ア、アンタにしてはね(早口)」←こちらのツンデレ早口、身に覚え🐜〼
私も「汗だくの好きノンケと接触する」という経験があるため、謎の共感を抱いてしまいました。
本当に相手はわたしをなんとも思っていないのか?もしかしたらほんの少しだけ打算があるんじゃないか?いろいろな不安とちょっとの期待が混ざる、よいエピソードです。

「壊れちゃう…」

20代後半ゲイ社会人です。自分が高2のときの話をさせてください。

当時同じクラスだったバスケ部のS君(身長188cmで筋肉質、デカくてエロい男前)は、とにかく明るい性格とバスケの実力で学年全体でもかなり目立っていたのですが、やたら遅刻が多かったり、一軍男子と仲良くはしているもののあまり群れず、アホっぽくてわかりやすいようで本心が見えないミステリアスなところがあり、特に話したことはなかったのですがかなり気になる存在でした。

あるとき、 席替えで彼と隣の席になりました。自分は当時授業中に文房具を組み合わせて謎の立体アートを作るのにハマっていたのですが、 彼がなぜかそれに興味を持って話しかけてくれたことをきっかけに、徐々に仲良くなっていきました。

仲良くなると、彼はとにかくアホなザ・ノンケで、ミステリアスというより人見知りで気が小さいだけのバスケ意外に興味がない男という感じで、大きい身体と不釣り合いな彼の子供っぽさと無邪気な笑顔にどんどん惹かれ、気づいたら彼のことが好きになっていました。(ゲイであることを隠していたのもあり、悟られないよういい友人を演じ続けていました。)

さて夏の終わりの体育祭前日、 事件が起こりました。体育委員だった自分が部活もとっくに終わって夕暮れるグラウンドの端っこで1人居残り、リストを片手に備品チェックをしていた時です。

立っていた自分の肩に、 誰かの顎が乗っかるのを感じました。S君でした。

「何してんのー?」
といつもの軽い調子で聞かれましたが、 部活後で汗ばんだ彼の身体、肉感、温度、首筋に感じる彼の短くてツンツンした髪の毛の感覚でおかしくなりそうな自分は何も言えず。

「おい何だよ、黙って」

そういうと彼はなんと、 顔を肩に乗せたまま首の後ろから腕を回しバックハグをしてきたのです。しかも、かなりの強い力で。 痛い...

「ちょ…痛い、壊れる!」 と言うと彼は

こんなんで壊れねえよ、人は。」と、笑いながら言い放ちました。

彼は腕を離し自分の正面に回り込んで仁王立ちになり
「馬鹿にすんな。 おれが歩いてきたキャリア。」
と言いながら、自分にキスをしてきました。

それよりあとの彼はlike a lion。 彼のtoe shoesの感覚は今でも忘れられません。

ギュ揉み : (自ら書いたので感想になります)(??)
「なんとなく一軍の中で変わってる奴に単独で気に入られる」「立体アートでいい男と仲良くなる」「バックハグされて首に短い髪の毛があたる」それぞれ別のノンケ男にまつわる実体験からの引用で、S君も実際好きだった男と桜木花道(??????)のハーフ、顎乗せは桜木花道のファンアート(????????????)からの引用、ということで、ただANTIFRAGILEでおふざけしたかっただけの非常に薄いマシュマロでした。呪いとかでもないしもう。ここまで偉そうに喋ってすみませんでした。みんなすごいと思います。

ロ角 : 友達4年目の絆でしょうか、一度読んですぐ「あ、これはギュ揉みさんの作品だな」と気づけました。きちんと最後はほんとにあった!呪いのトゥシューズと化す文章構成的な美しさだけではなくて、途中途中に挟まれる謎のディテールに、蓄積された経験と呪いを感じます。コロバウィオライカライオン。ヌンピチェコデハンデザイア。

30代音楽教師に…

これは私が高校2年生の時、 30代の女性音楽教師に壊された話です。

学校で爪の長さを指摘され、放課後ひとりで切っていたところ、その先生がやってきました。机の真向かいに座り、ジッと手元を見つめてくる先生。

「緊張するので見るのやめてください」と冗談まじりにいうと 「手貸して」と言ってきました。
またチェックされるのか、と少し憂鬱な気分で手を差し出したら、 そのまま私の爪を切り始める先生。

爪ちいさくてかわいいね」 「寒いから指先まで冷たいじゃん」 と言われ、 耳まで真っ赤な私。 切られ終わった後も放心状態でぼーっとしていたら「顔真っ赤だよ」と、出席簿で私の頭を小突きながら言ってきました。

その次の年の春、先生は寿退社で辞めていきました。今でも冬になると夢に出てくるくらい、まだ好きです。

ギュ揉み : やっぱりノンケが繰り出す「本物の呪い」は、ちょっと不気味で行動の意図が掴めない、ヌルッと心にしこりを残す感じが肝だよな。ということがギュッと詰まっており、本当にヌルっととした気持ちになりました。普通に親以外の人に爪を切られたこと、ないなー。

ロ角 : こんなことが、ありますか?
配偶者と親以外に爪を切られること、そりゃないよ。「女性音楽教師」というそもそもありえない属性の存在から「爪を切られ」、あまつさえ「爪ちいさくてかわいいね」とまで言わしめる。なんなの。どんなことばを尽くしてもこの凄まじさを伝えられない。ラッタッタタウルリンシンジャン、という感じです。

同じ布団で…

大学2年の時に、仲良くなったイケメンがいました。彼は人懐っこく、みんなを魅了する、ちょっと天然の子でした。 僕も例に漏れず、その彼に魅了されてしまいました。

イケメンは一人暮らしをしていて、そのアパー トによく遊びに行くようになり、一緒にゲームをしたり、 映画を観たり、時には終電を逃してお泊まりをすることもありました。

だけどそんな彼のことを何も意識せず、ごく普通の大学の男友達として遊んでいました。

ある日、彼の家には客用の布団があり、 そこで並んで布団を敷いて、 寝転がりながら話していた時のことです。
「他に誰か遊びに来たりしないの?」と聞くと、「あんま家に人を呼ばないし、 泊まったりすんのはお前だけだよ」 とはにかみながら言われました。

その一言で僕は、完全に恋に落ち、ぶっ壊れました。
「へーそうなんだ笑」なんて軽い感じで流しましたが、心の中ではお前だけという言葉がこだましていました。

ですが後日、他の友達と恋バナになった時、彼に彼女がいた事を聞きました。 自分が仲良くなった頃から付き合いだしたそうです。 彼と仲が良い人の中で、自分だけが知らなかったみたいです。

まあ、彼女がいた事は別に構わないのです。彼はモテるに決まってるんだから。だけどちょっと嫌だったのは、自分が寝ていた布団が、彼女も使っていた可能性があるということです。

ですが、

それよりももっと嫌なのは、彼のことが忘れられず、あの日からずっと、社会人になった今でも、僕は彼のことを好きでい続けていることです。

ギュ揉み : これも「正直大したことは言ってない/起こってない」けど、蓄積ダメージで場外に吹っ飛ばされるスマブラ系呪い話でしたね。こんなキャスをしておいて言うのもアレですが、ノンケの呪いって本当に「個人的」で、なんなら「勘違い」で、でもその人の中には確実にあって、誰にも発散・分散できず最後まで自分の中だけに残留し続けるからこそ、「呪い」なのかもしれないですよね。

ロ角 : きましたよ、「青さ」マロ。まさにそのときにしか感じられない重みともどかしさがDittoによって昇華されています。ギュ揉みさんの言うとおり、ノンケの呪いは「個人的な勘違い」に過ぎないものの、同じ温度感でその「個人的な勘違い」をシェアすることは金輪際できないんですよね。すごい。呪怨?(呪怨?)

意中の彼とのお泊まりで…

私は物心ついた時から同性に恋愛感情を抱いていました。これは、私が高2の時に仲良くなった彼 (O君)との出来事です。

彼とは高2のクラス替えで同じクラスになり仲良くなりました。 夏休みに、いつも遊んでいる私と彼を含めた6人でお泊まりをした時にそれは起こりました。

その日は私を含め、みんな明け方まで騒ぎ、やがて疲れて倒れるように各々眠り出しました。
私も眠気で意識が朦朧としていた時、既に隣で眠っていた彼が寝返りを打って私の方に顔が向く形になりました。

ご時世柄もあり、マスクをしていない彼の顔を横目でまじまじと見たのはその時が初めてでした。スッと通った鼻筋、キュッと上がった口角に長いまつ毛、 右耳から漏れ聞こえてくる彼の寝息に何故か私は荒くなっていく呼吸を抑えるのに必死でした。 その時、いきなり彼が私の左腕を自分(彼)の方へ引き寄せてお互いのおでこが今にも当たりそうな距離になりました。

私は突然の事で何が起きているのか何もわからず咄嗟に目を瞑ってしまいました。 そしたら彼が、私の顎をくいっと持ち、彼の唇が私の唇に当たる感触がしました。
彼のそれはマシュマロのように柔らかく、さっきまで飲んでいたコーラの香りがほんのり漂ってきました。

数秒後、彼はまた逆の方向に寝返りを打ってそそのままスヤスヤと眠ってしまいました。さっきの彼の行動が、 寝ながら無意識に行っていたものなのか、それとも意識的に行っていたものなのかはわかりません。 真相を聞くチャンスも逃したまま彼とは高3のクラス替えで別々のクラスになり、今となっては私と彼だけのひと夏の思い出になってしまいました。

ギュ揉み : 一番目の大学生の合宿、一個前のお泊まりに続き、布団の中での出来事にまつわるマシュマロですね。寝っ転がっている身体の状態の不安定さ、寝る行為の前後のふわふわした脳みその状況が壊され呪いシチュエーションを助長するのでしょうか。文体やワードチョイスが夢小説すぎるのに爽やかにHype Boyが流れるこのちぐはぐ感、若さを感じて結局Hype Boyだな、と思いました。

ロ角 : 「彼の唇はマロッシュコーラ味(存在しないフレーバー)だったのでは?」というありえない考察が飛び交ったこちらの嘘エピソード。意識的だろうと無意識裡の行動だろうと、彼のやったことがあまりにもハイプすぎるということは揺らぎません。今回のキャス、あまりにもニュジンスに助けられています。

幼馴染が飼っている犬と…

僕にはセブチのウォヌとTHE BOYZキューを足して2で割った様な顔の幼馴染がおり、仮に名前を「和也」とします。

和也はオスの柴犬を飼っており僕も犬好きの為、よく一緒に散歩をします。犬の名前はミケといいます。

ミケは初見の人には人見知りがひどく、 心を打 ち明けた人にはとても人懐っこい性格で僕もミ ケと仲良くなるには時間がかかりました。 ミケの本当の名前は「ミケランジェロ・○○(私の下の名前と漢字が同じ)」で家族間で名前が長すぎて呼びにくいという事になり 「ミケ」 と呼んでいるのだと。

和也はかなりの変わり者でどうしてもこの犬の名前はカタカナ+漢字がいいと駄々をこねたらしいのです。 家族は不思議に思い 「○○君、 何か知ってる?」と尋ねてきました。

はて?和也が好きなアニメのキャラクターにそんな名前居たっけかな。 またネットに影響でも受けたのか?

和也に思い切って聞いてみると彼は、 「あー、 ミケの事? あれねー、ミケランジェロは語呂の良さで決めた。 本命は最後の漢字の部分だけだよ。 ミケを初めて見た時お前と出会った日の事が鮮明に思い出されて、この子じゃなきゃダメなんだ!○○に顔の雰囲気も性格もどこか似てるし俺も大好きだから○○って名前どうしても入れたいなって。だって素敵な名前じゃね?」 その時私は熱弁する彼を見て学校の休み時間に別の友人が彼の話題で盛り上がっていたのをふと思い出しました。

彼はミケに愛情を注ぎ込み過ぎていると。

キスはするし一緒に寝るしいつでもいつも一緒にいるなどなど。 伏せ字が入りそうな愛情表現もある為ここでは言えませんが… ミケがこの話を理解したら複雑な気持ちだけど、僕は僕の事を真っ先に考えてくれる和也がいて幸せだなと思っています。

ギュ揉み : 嘘なのに説明が煩雑になる「ミケランジェロ」要素を頑なに入れてくるところ、仮名「和也」の絶妙さ、選曲に至るまで、ふざけているのか大真面目なのか、大真面目にふざけているのか掴みきれず、呪いも何もないよ。という気持ちになりました。しかし、この文章全体を覆い尽くす「掴めなさ」と、ノンケの最も呪われた部分である「掴めなさ」が、「スパイス」という選曲によって紡がれ、出会い、鮮烈な印象を残すものであったことは、言うまでもないでしょう。

ロ角 : 「これ以上は知らない方がいいのかもね」、本当そう。
ふつうにこちら、読みながら「なにこれ?」になりました。ピクシブというか、もはやマーガレットの質感。Perfumeをかけたかったから書いたのか、それとも本当にわんこに自分の名前を付けた友達がいたのか、真偽は定かではありませんが、とにかく絶妙な味わいがあることだけは確かです。

本当の "呪いのノンケ" は…

中学、高校の同級生の親友Aちゃんとの話です。 公立の中学校に通っていた私ですが、高校受験の際に志望校が同じだったことをきっかけに私とAちゃんは仲良くなりました。

高校では私といえばAちゃん、Aちゃんといえば私というぐらいベッタリに仲良しの私たちでしたが、高二の冬に突然Aちゃんに彼氏(Bくん)が出来ました。 あんなにベッタリだったのに何の相談もなく。嫉妬とそれを上回る虚無感に襲われ、私は『自分がAちゃんに恋愛感情を抱いていた』ことに気づきました。 しかし、Aちゃんには恋人がいる訳で、簡単にそのことを伝えるわけにもいかないので、今まで通り“親友”でいることにしました。

テスト週間のある日、私たちはAちゃんの家で勉強会を開くことにしました。Aちゃんは恋人と付き合っていても、私を優先して予定を立ててくれていることに優越感を感じていました。

勉強会という名のおしゃべり会は長く続き、 ついに恋愛の話になりました。とても仲の良い私たちですが、 私から恋愛の話を持ちかけないのは勿論ですが、Aちゃんも恋愛の話は全くしていませんでした。初めてされるAちゃんの恋バナに色々な感情が入り交じりながらも平然を装って聞いていました。私に初めて話すからか、Aちゃんはかなり緊張した様子で話し始めました。

A 「告白されたから付き合ったんだけど、 実は最初恋愛感情っていうものが分からなかったんだよね」

高校生の恋愛なんてそんなもんだよな、と思いながら聞いていましたが、 この後まさかの言葉がAちゃんの口から出てきたのです。

A「でもBくんと付き合って気づいたんだよね、私が恋愛感情を抱くの男の子じゃないかもしれない・・・」

この時点で私は唖然というか、グチャグチャだった気持ちが更に掻き回されていたところに、Aちゃんは言いました、

A「私ちゃんのこと好きだったんだと思う、ごめんね

本当は両思いだったんです。 AちゃんにBくんという彼氏が出来たことで気づいた私、Bくんと付き合ったことで気づいたAちゃん、本当の呪いのノンケはBくんでした。

ギュ揉み : 「気づく」ことができなければ、いや、自分の中でそうだ、と決めるその瞬間まで、「好き」は存在すらしていないのである、ということ。そして、「気づく」「決める」はノンケの方が絶対に簡単であること。このマシュマロは具体的なエピソードのようで、ごく抽象的で象徴的な「寓話」なのだと思います。MAMAがこんなに映えるのも、この寓話性の成す技なのではないでしょうか。

ロ角 : ケアレス!!ケアレス!!
謎のリアリティと救われない展開、自覚と発芽の境目でゆれる気持ち。でも結局EXOソンベニムが全てを破壊してくれます。
ふしぎと「嘘でよかった」と思ってしまう。大好きなあのひとと絶対に両思いになりたいのに、心のどこかに「それでいいのかな」というやわらかな拒絶があって。その揺らぎが綺麗に嘘エピソードに反映されています。本当に嘘でよかったよ。

バレー部の彼と…

これは僕が高校生のころのエピソードです。

僕は学生時代は 「自分がゲイであること」 をひた隠しにしていて、クラスメイトの男子たちと 「クラスでは誰がいちばん可愛いか」「女優だったら誰が好きか」 のような、ザ男子!な会話にもしれっと参加していました。 それが苦痛だったわけではなかったのですが、その輪に入るわけでもなく、 いつも飄々としているのにみんなからの信頼も厚いバレー部のBくんが、自分にとって憧れでした。

その頃は夏で、僕の高校では1年生のみ体育で水泳の授業がありました。そして、その時期に体育を欠席してしまった生徒は別日に25mのタイムを計測しなければならず、一度熱を出して体育を欠席した僕は夏休み前に補講を受けることとなりました。

参加者は僕含め10人程度。 誰か顔見知りはいないかな・・・と思いながら見渡していると、なんと そこにはBくんが。 向こうも僕の存在に気づいたようで、 「お!」 という顔をして手を振ってきました。出席番号の若い順から行うことになり、僕は2番手。Bくんは4番手で、早めに終わった僕らは駄弁っていました。

不意に、 水泳後の濡れた手で僕の肩に手を置くBくん。 そのまま顔を寄せてきて、 「でも、クラスに○○ (僕の名前です) がいてくれてよかったわー。 クラスのバカたちと違ってさ、楽なんだよねえ、お前のテンポ感!」とBくんははにかみました。

正直そのとき、室内競技に打ち込んでいるBくんの白い肌、筋肉、薄い脇毛にしか目が行かなかったのですが、それ以上に (いつもあっけらかんとしているBくんにも抱えているものはあって、それを僕には打ち明けてくれたのか・・・) ということで頭がいっぱいになりました。もしかしたらBくんも、だとか、実は僕自身Bくんに対して憧れだけじゃなくてそれ以上の感情が、だとか、その日から僕の頭の中はBくんでいっぱいになりました。

しかし夏休み明けに、 Bくんが他校の女バスの2年と付き合い始めたことを、クラスメイトの男子から聞きました。

あなたが羨ましかった。

自分にないものを全て持っているBくんがただただ羨ましくて、その話を聞いてから家で少し泣き、インターネットの掲示板でゲイの大学生と繋がり、全てを済ませました。

以上、 大嘘です。 駄文失礼致しました!

ギュ揉み : こちらロ角さんの作品ですが、「基本は器用な陽キャだけど、他とは違う独特な雰囲気を持つ男」「自分が謎に特別視されて好かれている」という男性像の設定、体の部位やその質感を羅列して生々しく想像させたいという書き口、あざといまでに曲の"歌詞"を拾ったキメ言葉。私の作品(?)との類似点がここまで多いともはや、歌舞伎。私たちは、呪いと正面から向き合うことを、放棄して。しかし、1番「ノンケ男」には正面から向き合ったのかもしれませんね。

ロ角 : ギュ揉みさんの記述の通り、ふたりの文章における類似点が多すぎることも然ることながら、お互いになにか示し合わせるでもなく、「サクラとして自分たちも嘘エピソード送っとく?」と一応確認してみたら、もう既にお互い送っていた、というところからまずシンクロが始まっています。いやなんか、諸々すみませんでした。こちらのノンケ、ぜひ宮沢氷魚で脳内再生してみてください。

定時制高校の生徒と共有している机で…

高校1年の1学期の後半、期末試験の終わった7月の終わりのことだった。自分の通っていた高校には、全日制と定時制があったが、全日制と定時制の生徒間での交流は全くといっていい程なかった。しかしながら、 机は定時制と共有になるので、机の中にはものを残していかないようにと担任のピグレットに風貌の似た英語教師がよく言っていた。朝、いつものように登校してくると、自分の机に落書きしてあるのが目に入った。

こんにちは。俺は定時でこの机をつかっています。今は数学の時間ですがさっぱりわかりません。そっちは高校生活どうですか?

恐らく定時制の生徒が書いたのだろう。筆跡か らすると恐らく男。雑で角張っていて、いかにも男子!といった文字が並んでいた。

それは何とも胸高鳴るシチュエーションだった。何せウブなバイセクシャル、 高校1年生である。こんなイベントが発生してドキドキしないわけがない。 高校1年生当時の自分は、そのメッセージを読んで、 その男子と付き合うところまで想像していた。 相当先走っていた。全力疾走である。 幼かった。今ならもっと先まで想像する。窓からは夏の空がよく見えた日だった。その日の授業時間もとい読書時間は、返事を考える時間となった。 どんな返事を返したのかは全く思い出せない。きっと、とても無難な返信をしたのだろうと思う。

それからしばらくの間、その名前も顔も知らない男子とのやりとりが続いた。どんな話をしてたのかぜんぜん思い出せないのだけど、多分、そんなに大した話はしなかったと思う。 学校が夏休みに入るまで続いたやりとりだったが、夏休み明け直後の席替えによって自分が座っていた席にクラスの女子が座ることになり、文通はあっさりと終わりを告げた。

部活帰りに、自転車に乗りながら教室の窓を見上げたことがあった。 当然、授業を受けているであろうあの人が見えないかな、と思ってのことだ。見上げた窓に見えたのは、 夕暮れに赤く染まる薄いクリーム色のカーテンだった。 当然中は見えなかったけれど、一番後ろから2番目の席の辺りを見る。 カーテンが風に揺れて、ちらちら、と坊主姿の男子が見えた。 きっとあの人だ、そう思いながら帰路につく。

机の上で行われた、他愛もない言葉のやりとり。夏の夕暮れと、カーテンの隙間に見えた坊主姿のあの人。センチメンタルになるには、十分過ぎますよね?

ギュ揉み : 机の落書き、定時制、夕暮れに赤く染まるクリーム色のカーテン、夏、自転車、坊主。全てのセンチメンタルを集めたモチーフ選びと情景描写、これは、紛れもないDittoへの当て書き。ノンケかどうかさえも、結局どんな男なのかもわからない。結局、揺れるカーテンの隙間からしか見えないような、「わからないもの」に惹かれる。そんな、美しい呪いを見事なリズム感で書き上げた傑作ですね。これが今回で1番好きです。

ロ角 : 実際起こったことは「定時制高校の生徒と机を通して文通した」だけなんですが、文章力と構成力、あざといほどアンニュイな風景要素を入れ込むことにより、大変な傑作が誕生しております。何度も読み返すことでより味わいが深くなる作品だと思っているので、はやく活字で発表したかったです。お待たせしてしまってすみません。

双子の兄の友達に…

私には双子の兄がいます。 双子の兄は男子校に 通っておりよく家に友人の和田くんを連れてきます。和田くんは寡黙で無愛想な印象なので何故兄と仲が良いのかよく分かりませんでした。 兄はお調子者で彼の負担になっていないかなと私は心配していました。 兄と和田くんはどうやら音楽の趣味が合う様で音楽を共有したりよく2 人でカラオケに行ったりしているようでした。

卒業式の日、兄はクラスの中心で卒業写真を撮り端っこにいた彼に気づくと 「お前もこっちに来いよ」と半ば強引に彼を兄の横に置きました。 彼はびっくりした様子で兄を見ていました。撮影が終わり和田くんは私が兄を待っている事に気づくと、 「ちょっとお兄さん借りていい?」 と言葉を残して兄と今は使われていない第2校舎に入っていきました。

1時間後兄はいつものお調子者ではなくどこかうわの空で頬に手を当てていました。何があったのか聞いてみると、彼が突然頬にキスをしてきたと。

彼は帰国子女の転校生だったらしく、兄に対して別れの挨拶でしたのだと私は思ったのですが、兄は恋愛には疎くファーストキスだった為恋に落ちてしまったと顔を赤らめながら話してきました。

ギュ揉み : 「WADADAがかけたかっただけ」なことが見え見えな、非常に思い切りがよく気持ちのいいマシュマロでとても好きです。双子、帰国子女、今は使われていない第二校舎、などの何かキーになりそうな設定がほぼ意味をなさず、「和田くん」だけがキーワードだったという、ミスリードの上手さはさながらブルーバースデー。ネクストコナンズヒント「和田」。お見事でした。

ロ角 : 直球のおふざけ!!!!!!!
正直要素が多すぎてとっちらかってる感は否めませんし、何より別にWA DA DAでまとまってもいないですが、謎の説得力がありますよね。そしてなによりこちら、和田くんによって呪われているのが「書き手の兄」という本当に無関係の存在なのも面白いです。なんなんだ

「あんたが一番可愛い、一番好き。あんたのことを一番好きなのはわたしだよ」

高校の時からある女性に「○○が一番可愛い。 一番好き。 ○○のこと一番好きなのはわたしだよ」 と言われ続けわたしは本気にしてしまいましたが、その女性はその間も3人くらい彼氏できてるし、私は好きと言われてからもう6年間彼女のことが好きです。 わたしは恥ずかしがり屋なので一生彼女に思いを伝えることはできないし、彼女はまた彼氏ができてすぐ結婚しちゃうと思います

ギュ揉み : こんなに簡潔でそっけない文章から、こんなに温度が伝わってくることがあるんですね。エピソードを彩るモチーフや綺麗な回想なんてなく、ただ「好きな女が、ノンケである」という事実だけがしっとり横たわっているリアル。そう、ここまでに登場したノンケたちもみんなきっと、「すぐ結婚しちゃうと思います」。

ロ角 : アイドンウォントゥステイインザミドル、ライキューアリトル。ただなかなかそうも行かず、ことばの断片が未だに心に突き刺さっている。一歩踏み出すこともままならず、好きなように生きているあなたを見ながら、自分はまるで後ろ髪を掴まれているかのように立ち止まることしか出来ない。まさしくこれこそが「呪い」。

私を惑わせる親友が…

中学のとき、同じクラスに大好きな親友がいました。 彼女は普段から私に「可愛い」「好き」 などの愛情表現を頻繁にしてくるタイプで距離も近く、慣れていない私はいちいちすごく照れてしまっていたのですが、彼女いわくそういうところがまたかわいいとのことで、褒められいじられのような彼女との充実した毎日を送っていました。

学校が午前授業だったある日、 親友は吹奏楽部に入っていたのでお弁当を教室で食べて部活をするのですが、 私は部活に入っていなかったの で昼食なしでそのまま帰宅します。
でもその日は少し寂しくて準備をいつもより遅くして親友のいる教室に長く残っていました。
帰宅の準備が整った頃、 親友にこっちにおいでと言われ、私が近づくと彼女は膝の上に乗ってくるよう言いました。
言われるがまま椅子に座っている親友の膝に横から座ると 「お腹空いてない?」と彼女が聞くので「ちょっとだけ空いてる」と返すと、彼女はデザートとしてお弁当に入っていたさくらんぼを 「あーん」 と声に出しながら私の口の前に運んできました。 彼女のペースに流されて口に含んだあと、 急に恥ずかしくなり顔を伏せて本気で照れていると 「なんで照れてるの一笑ほんとに可愛い〜…だいすき」と言われ、恥ずかしさと嬉しさで私はもう完全にノックアウトでした。

その後、クラスが別れたりお互い別の高校に入ることにもなったり、今ではこのときほど距離感も近くなくあまり二人で会える機会も多くないのですが、あのときのことをそれとなく聞いてみると、彼女は「そんなことあったっけ?」 とあまり覚えていない様子でした。私は今でもずっと引きずっているのに。無意識のノンケ、怖すぎます。

ギュ揉み : 今回で最もストレートに真正面からあざといノンケが登場するマシュマロですね。「わからなさ」が逆に全くない、清々しいほどの、無意識。呪いをかけた側は、忘れるんですよね、本当に、いつでも、誰でも、いつも何度でも。

ロ角 : ノンケ女性、今一度行動を振り返ってみてもらってもいいですか?(注意喚起)
「好き」ということばの重たさについて改めて考えさせられるエピソードでした。今これを読んでいるあなたは、軽い気持ちで「好き」とか言っちゃってませんか?大丈夫ですか?あなたの「好き」で、誰かが壊れてるかもしれませんよ。

大人しいイケメンと陽キャの関係性…

高校時代の話なんですが、横並びで僕・大人しいイケメン (クソ狭い通路)・陽キャな男、という席順の時がありました。 事件はここ、三号車 (陽キャは二号車)の1番後ろで起こります。
いつも陽キャ (ここからはキム)が、大人しいイケ メン(ここからはイ)をちょっとイジって面白く喋っていたのですがある日 「それはちょっと言いすぎ」 みたいなことをキム君がやらかしてしまいイ君がムスッとしてしまいました。

まあ明日になれば機嫌も治るだろうしキムも悪気があったわけではないのはイ君もわかっているだろう、と思ったので僕はそこまで気にしませんでした。そもそもこの二人、席が隣で話し始めただけだったので他の場所で一緒にいるのは見た事ないから最悪絶交してもお互いの人間関係には響かないし。

さて、放課後、三号車の僕とイ君には掃除がありました。しかし、誰がホウキだの机運びだのを決めている間にイ君がいなくなっていたんです。今までサボってたことなんてないし忘れて帰ったか……? と思ってみんなで掃除していたんですが15分くらいしてからイ君が戻ってきました。遅れたくせになんかドヤ顔だな…と思いつつ掃除を終わらせて教室を出ると二号車で掃除がないはず、しかも帰宅部なはずのキムがドアの前にい ました。 「あれ?帰らないの?」と聞くと 「あ~、 その…」 と濁すので、 彼女か…いいなリア充は、僕は帰ってpretty savageを聞くからいいけどね、べつに。 と思いながらさよならをしました。

その10秒後くらいに後ろからイ君の 「おまたせ」が聞こえました。イ君も彼女か、でもドアの前 に女子なんていたっけ?かわいいだろうし顔見てみたいわ、と思って軽率な気持ちで振り返ったらそこにはキムしかいませんでした。 ちょうど曲がり角だったので急いで曲がり、そこからは声だけを聞いていました。
やけにイ君の機嫌を伺って下手にでているキム、お前、他の友達を怒らせた時はすまん!で済ませてたのは知ってるけど、イ君の機嫌はとるんだ。あとさ、友達待ってるだけなら濁すかな?ねえ、ちょっと待ってイ君、誰に聞いても目撃情報がなかった不 在の15分間なにしてたの?あとさ、2人の最寄駅、反対だよね。それとさ、次の日から明らかにパワーバランスが変わってキムがイジられてたね。気付いてたし、壊れてたよ、僕は。

ギュ揉み : 最後の最後で、ノンケとノンケを見て間接的に、勝手に壊れるという、腐女子というほかなにもコメントのできないマシュマロでした。嘘の話なのに仮名がわかりづらい設定も状況説明もわかりづらい、というところから若い方の執筆であることは明白で、だからこそ「放課後の清掃」というもう私にはクリアに思い出すことさえ難しいシチュエーションをこうやって使ったんだよなと思うと、まあやっぱり、ニュージーンズか。若くて瑞々しい音楽。でも、呪いを思い起こさせる音楽。だってよく考えたら、Ditto蛇口男、あんな状況であの向きで水を飲むのは、完全に呪いのノンケじゃん。そういう、ことか。

Ditto蛇口男

ロ角 : ラスト、至極シンプルなピクシブOMGエピソードでした。まあ確かに当事者になることはなくても、こっちが勝手に壊れてることってありましたよね。
諸々込みでの様式美として最後にふさわしいと感じます、だって私たちは、いつだって不思議なパワーバランスのBLが大好きだから

以上、20作品でした。
ノンケが何気なく残していく「呪い」について、考えるきっかけになればと思います(問題提起?)
というかそもそも、この意味わからない企画にたくさんのエピソードを投稿していただき、本当にありがとうございました。それでは第3回「ほんとにあった!いのノンケ」でお会いしましょう!さようなら!

(スペシャルサンクス : ギュッと揉んでフライさん)

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